「使うことで育てる感覚」

LEQUIOデザイナー 嘉数 義成

 
 
使うということは消耗すること、
すり減っていくという事だと思う。
すり減って来たら新しいものに交換しまた消耗して行く…。
 
 
でも使う事で消耗というマイナスではなく、育てるだったり
自分の物になって行くというプラスの感覚が有ると思う。
新しいスーツなどは吊り(お店にハンガーで吊るしてある状態)で真っ新な状態よりも、少し着慣れて生地の表面が毛羽だって来て、少しクタッとした感じになってくると、着ている人にいい感じにハマッて来ると思う。
革等は分かりやすい。
 
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使うに連れて経年変化を起こし色が変わってきて…
 
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段々使う人の仕草のクセが道具に写し出されていく。
いわゆる「味」。
真っ新な状態から自分の生活や自分の為の道具になる感覚は、
消耗というより育てて行く感覚だと思う。
買ったばかりの時は赤ちゃんで、使うに連れて大人になり年をとるごとに年期というか、いい味がでてきて何とも言えない魅力を感じる。
どういう生き方をしたか、しわや残った傷跡がしみ込んで魅力になって人生が顔ににじみ出てくる。
 
人間と一緒だと思うんです。
 
 
「完成されているけど赤ちゃん」
「消耗する事で完成に近づく」
矛盾していると思いますが、
その感覚は物を所有するという事に1つ楽しみというか
そう感じることで別の見方で価値を感じる事が出来る。
消耗して行くことで持ち物としての価値が高まる。
 
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使って消耗して行くとそろそろかな?と寂しい気持ちよりも
「いい感じに汚れてきた」
「いい感じにすり減ってきた」
「やっと自分のものになってきた」
「この傷がカッコいい」
「これはあのときに付いた傷だ」
そう思うと、使い込む楽しみが出来る。
 
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未だ履いてるの?と言われますが中学の時に初めて買ったGパンをずっと履いている。
当時どうにかこうにかお金を貯めて買った2万円くらいの自分が好きな真っ新なGパンを買って。
その当時はサイズが大きくてぶかぶかに着ていたが、今はピッタリ。
 
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すり切れたり色あせや
生地が履き込む事で表面がすり切れて起毛する事で出来る「ヒゲ」や、
履き込んで自分の膝の位置で出来上がる「クセ」。
 
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最近は直したり使い続けるよりも
本当にコレ必要かな?と思うものが自分自身の身の回りに増えて来た感じがする。
本当に必要なものに絞り込むと
身の回りがシンプルになっていく。
自分以外の他人との共有物なら抵抗が有るが
自分のための物であれば気兼ねなく長年使い込むことで「持ち物」としての価値が高まると思う。
 
大事に使われて来たものは少し古びていたり壊れていても魅力的なもの。
 
どういう用途で使用していたものなのか?
どんな人が使って来た物なのか?
コレからどんな人が使うものでどんな風に成長するのか?
大切に使ってくれる人に出逢ってほしいと思う…。

 


 
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