「私のレシピで作ったサモサは絶品よ。
インド料理店からも『自分で作るよりあなたが作ったのがおいしいから、納品してちょうだい』と言われたくらい」
インド出身のプーナム先生の本職は英語講師。
手料理のおいしさが評判となり、まわりから請われて料理教室を開くようになったと言う。
教室で教えるレシピは、生徒からのリクエストに応じて決めている。
どれくらいレシピがあるんですか?と尋ねると、両手を広げて「数千よ!数えきれないわ」とにっこり。
「試しにウェブ上にアップしてみたら、1年間で600レシピにもなったの。でも、まだまだあるのよ」
今日は数あるおすすめレシピの中から、「パラク・パニール(ほうれん草のカレー)」と「サモサ(インド風コロッケ)」を。
まずはサモサの皮を作る。
小麦粉に水、油、塩などを加えて生地を作る。
「水は少しずつ加えて。
多く入れすぎちゃうと、具を包むときに破れやすくなるのよ」
「生地がまとまってきたらボウルの周りについた粉も綺麗にとってね。
私の母はすごく厳しくて、これを取り残すとひどく叱られたものよ」
生地に布巾をかぶせ、冷蔵庫でしばらく寝かせておく。
インドで食べられるチーズ、「パニール」を作る。
熱した牛乳に塩などのスパイスを入れ、混ぜたらビネガーを入れる。
「見ていてね、おもしろいことが起きるわよ」
みるみるうちに分離し、ゆし豆腐状に。
「ガーゼなどで包み、水分をしっかりきります」
水道の蛇口につるすのがプーナム先生流。
重しをしてさらに水気をきり、20分ほど置いたらひし形にカットする。
「あとは、食べる直前に揚げるだけ。
さあ、次はサモサの具を作りましょう」
「インド料理の基礎となるのは沢山のスパイス。
サモサには全部で10種類のスパイスが入るので、しっかり数えてね」
ターメリックパウダー、ガラムマサラ、コリアンダーパウダー…
種類を指折り数えつつ、分量を量る。
「先生、コリアンダーシードが足りません」
と生徒が言うと、さっさとキッチンを出て行く先生。
戻って来たその手には、コリアンダーシードの入った袋が。
「玄関横に置いてある冷蔵庫に取りにいっていたのよ。
我が家には冷蔵庫が4つもあるの! 中はどれも香辛料でいっぱいよ」
日本では入手しづらいスパイスやハーブをインドなどから取り寄せ、何種類も冷凍保存している。
プーナム先生はただの料理好きではない。
故郷のインドでは、調理を専門に学ぶ大学を卒業した。
「でも、1977年に沖縄に来るまでは、料理を仕事にしたことはなかったの。
自宅で英語講師をしているんだけれど、食べ盛りの息子に出した夕飯を見て、生徒さんたちが『おいしそう!』と。
『どうぞ、味見してみて』と言ってみなさんにも出したらすごく喜んで。『作り方を教えて!』と言われたのがきっかけで料理教室を始めたの。
それからは色んなところで教えたわね、県内の市町村に呼ばれて教室を開いたこともありますよ」
冷凍したほうれん草を鍋に入れて火にかけ、カレーを作る。
「パラク・パニールの『パラク』は、ほうれん草のこと。
生のほうれん草は、きれいに洗って水気をしっかりきったら冷凍保存できるのよ。
ここでポイントなのが、ほうれん草に火が通ったら、すぐに氷水に入れて冷やすこと」
「ほうれん草は加熱してしばらくすると茶色く変色してしまうんだけど、氷水にとるとそれを防いで綺麗な緑色をキープできるの。
だから、私が作るほうれん草カレーはすごく綺麗な緑色なのよ」
氷水にさらしたら、ミキサーで撹拌する。
サモサに使うじゃがいも。「フォークに刺せば、皮をむきやすい茹でたてのうちに処理できるわよ」
サモサの具に味をつける。
「まずは、シード(種子)状のスパイスから炒めてね」
「レーズンがぷっくり膨れたら、パウダー状のスパイスを加える合図」
「スパイスがじゃがいもをコーティングするように、しっかり混ぜて」
同時進行でカレーを仕上げる。
ここでも数種類のスパイスを入れるため、見落とさないようレシピをチェックしながらしっかり量る。
ターメリックパウダー、ガラムマサラ、生姜などに加え、グリーンチリ(青唐辛子)も。
「グリーンチリは少し入れるだけでも相当辛いよ、みんな大丈夫?」
と先生。
「大好き! いっぱい入れよう」
と生徒たち。
「インド人の私より、みんなの方が辛いもの好きね(笑)」
サイコロ状に切ったトマトを炒め、ミキサーにかけた玉ねぎとほうれん草も加えると…。
美しい緑色に。
「氷水で色止めをしたから、こんなに綺麗な色に仕上がるのよ。
さあ、サモサの具ができたから、皮で包みましょう」
ここからが、プーナム先生の真骨頂。
生地を棒状に伸ばし…。
適当な大きさに切ったら、麺棒で薄く薄く、円形になるよう伸ばしていく。
「先生がやると簡単そうなのに、やってみるとすごく難しいんですよね。
私なんて、何度やってもひし形になっちゃう(笑)」
と、サモサを作ったことのある生徒が苦笑い。
「ポイントは、あまり麺棒を転がしすぎないこと。そして、厚みが均一になるようにすること。
厚みのある部分を見極め、そこから外側に向けて伸ばすように転がすのよ。
生地がまな板にくっつかないよう、途中で小麦粉をつけながらね」
「丸く成形したら中央に切り目を入れ、上下に具を乗せます。
あまり沢山乗せちゃうと皮が破けちゃうから気をつけて。
包み方は、円の中心点を基点にして折り、弧を描くふち同士を合わせるように」
「水をつけてふちを閉じ、フォークを押しあてたらできあがり」
日本ではこれがオーソドックスな作り方として紹介されることが多いが、本場インドでは違うと言う。
「最初に円錐型に成形し、手のひらで包み込むようにして持ったら、その中に具を詰め込んでいくの。
私がサモサ作りを教えている様子を見た妹から、『お姉さん、こちらのやり方も教えなきゃ!』ってダメ出しされちゃって(笑)
初心者の方にはちょっと難しいかもしれないけれど、慣れたらぜひこっちもチャレンジしてほしいですね」
生地がべたついたり、薄く伸ばしすぎたりすると、うまく包めないことも。
「何度もやっているうちに上手になるのよ、どんどん練習して!」
「揚げるときは弱火でじっくりね。
二度揚げするので、一度目は軽くで大丈夫よ」
「皮から具が出て来ちゃったら、こまめにすくって。
油を綺麗に保っておくのが、サモサを綺麗に揚げるコツよ」
「そうだ、余ったサモサの皮でチップスも作りましょう。
これがすごくおいしくてね、食べ出したら止まらないわよ〜」
「サモサの皮と同じように薄く伸ばしたら、ひし形にカットして、あとは揚げるだけ」
「スパイスで味をつけてあるから、これだけでおいしく食べられるのよ」
ほうれん草カレーに入れる「パニール」を仕上げる。
「フライパンに油を多めに敷いて、揚げ焼きにします」
「両面が黄金色になるまでじっくりね。
パニールは色んな料理に使うけれど、ほうれん草のカレーには欠かせないわね」
揚げ焼きにしたパニールをカレーに入れ、揚げ焼きにする前のパニールを表面に散らしたらできあがり。
「みんなお疲れさま!
さあ、お待ちかねの試食タイムよ」
「グリーンペッパーを沢山いれたから、辛さが心配だけど、どお?」
と先生。
「おいしいです〜!!」
と、みんな笑顔に。
次回の教室で作るレシピについても、話が盛り上がる。
「チキンカレー、もう一度習いたいな…。すごくおいしかったんだもん」
「ラッシーはいつやるんでしたっけ? 私が来れるときにぜひお願いします!」
教室は2~5名の少人数制。
生徒の要望で開催日も決められる。
たっぷり作ったサモサとカレーを、持参したタッパーに詰める生徒たちに、プーナム先生がスパイスの入った袋を手渡していく。
「今日の料理に使ったスパイスが全部入っているの。
せっかく習っても、家で復習しないと忘れちゃうでしょう?
インド料理は沢山のスパイスを使うから、必要なものが家にそろってないとすぐには作れない。
だからこうして、その日に使ったスパイスを一人ずつ用意してあげているのよ。
教室で料理を楽しんでもらえるのも嬉しいけれど、家に帰って家族にも作ってあげてほしいから」
教室である自宅には、先生の息子や孫たちの写真が至る所に飾られている。
家族の話をするとき、先生の顔はとても幸せそうにほころぶ。
教室を開くきっかけになったのも、家族のために作ったインド料理だった。
おうちで家族と食べたいインド料理。
本場の味を、自宅で再現しちゃいましょう。
プーナム先生のインド料理教室
1回2500円(食材費込み)
沖縄市(詳しい住所はお電話にてご確認ください)
090-3796-3097
☆英語教室も行っています☆
『ミス・マイキの英会話教室』
幼・小・中・高・一般・TOEIC・TOEFLクラス
日時:月曜日〜日曜日(毎日)AM9時〜PM10時
(希望の曜日・時間は相談下さい)
料金:1クラス1時間30分・週1回/月謝1万円(入会金5千円)