「今の仕事は、本当に私がやりたいことじゃない」
「いつか叶えたい夢はあるけど、いつ始めたらいいの? どうやって?」
自分が就いている職業に満足していなかったり、やりたいことができていないと感じている女性は多いのではないだろうか。
でも、具体的にどのように一歩を踏み出せばいいのかタイミングや方法がわからない、夢を叶えるために必要な初期費用を貯めることができない、失敗が怖い…。
新たなことを始めるには様々なリスクがともなうので、つい二の足を踏んでしまう。
「そういうリスクを最小限に押さえ、女性が夢を叶えるための場所として活用していただけたらと思っています」
沖縄ガールズスクエアのマネージャー・上里エリカさんはそう語る。
「沖縄は女性が元気な地域です。起業する人のうち女性が占める割合は全国平均の約2倍もありますが、廃業率も全国トップなんです。
私たちは女性のチャレンジを応援し、継続させていける仕組みを作りたいと思っています」
起業したい女性が小さな実績を積む場所として、沖縄ガールズスクエアは機能している。
「コミュニティースペースとプライベートブースをそれぞれ6部屋ずつご用意しています。
コミュニティースペースには、ヨガ教室やベビーマッサージ教室、親子英会話教室などを行えるセミナールーム、メイクアップ講座などを行えるパウダールーム、ワークデスクを備えたフリースペース、カフェのような空間でゆったりと寛げるカフェスペースがあります。
自分の持っている知識やスキルを生かしてセミナーを開くこともできますし、女性同士の仕事を通じた懇親会やプロジェクト会議などにもご利用いただけます。
プライベートブースはお申し込み者専用の個室です。事務所やアトリエ、ショップとしてのご利用だけでなく、集中して勉強や仕事を行いたい方にもおすすめです」
プライベートブースの使用料は1ヶ月15000円。事務所や店舗として使うこともできるため、起業時の初期費用を大幅に押さえることができる。
「現在は4部屋が埋まっており、それぞれ絵本販売のテストショップ、デザイナーのアトリエ、建築士の事務所、木工作家の工房として使われています」
沖縄ガールズスクエアの支援は、場所の提供に留まらない。
サポーターとして登録している会員が、起業希望者を全面的にバックアップする。
「サポーターは5ヶ月の研修を受け、起業に必要な知識やノウハウなどを学び、インキュベーションマネージャーの資格を取得、起業希望者を多方面からサポートします。
第三者的な立場で支援するというよりは、『一緒にやっていく』という感じですね。
私も資格を取得し、起業者のサポートを行っていますが、その方がやりたいことを明確にしていく作業からはじまり、イベントを企画したり、イベント当日は受付を手伝ったりと、常に寄り添う姿勢で支援しています」
そうすることで起業者本人だけでなく、サポーターも沖縄ガールズスクエア自体も成長していくことができる。
上里さんはそう考えていると言う。
プライベートブースを借りて絵本屋「ほっこり家」を出店準備中の夢蔵(ゆめぞう)さんは、絵本屋を開きたいという夢だけを抱いて沖縄ガールズスクエアを尋ねたと言う。
「その時はまだ、頭の中がぐっちゃぐちゃ。商工会議所のセミナーなどを受けて勉強はしたけれど、何から手をつければいいのかわからなくて。
サポーターの方に相談し、アドバイスを受けることで、一歩ずつ進むことができました」と、夢蔵さん。
リサーチすると、新刊書を仕入れるには店舗を持っていることが必要条件であることがわかった。
最初から店舗を賃貸すれば、改装費などを含めて多額の初期費用が必要になる。
「それを知って、まずは古書から仕入れることにしました。そしてお客さんの反応を見つつ、県内のマルシェや市などにも出店するようになって。
今は店舗物件を探し中です。ついにお店を開くという夢が実現しそうなんです」
沖縄ガールズスクエアで、夢に向かって大きな一歩を踏み出した一人だ。
フリースペース
パウダールーム
共同で使用できるプリンター等も設置している。
沖縄ガールズスクエアは、2012年6月にオープンした。
「会員さんの会費による運営を目指しています。
起業者支援という活動自体がまだまだ沖縄では認知されていませんが、徐々に輪は広がりつつあると感じています」
起業支援の場としてだけでなく、コワーキング(= Coworking )スペースとしての活用も目指している。
「会議室や事務所としてスペースを共有しつつ、使用者はそれぞれ独立して仕事を行うというオープンスペースオフィスです。本土の都市部ではどんどん増えていますが、沖縄にはまだまだ少ないのが現状ですね。
会員登録すれば、3時間500円でコミュニティースペースを利用できます。
コワーキングスペースは、ただ仕事をしたり学んだりするだけの場に留まらず、使用者同士が情報を交換し合ったり、刺激を与え合ったりすることもでき、新たなオフィスのスタイルとして世界的にも注目されています」
「誰かの役に立つことでやりたいことを実現させるために頑張っている女性を応援したいと思っています。
そして絵本屋の夢蔵さんのように、ここを出発点としてさらに広い世界へと羽ばたいて行く女性がどんどん出てきたら嬉しいですね」
そう言う上里さん自身も実は、夢を模索する女性のひとりだ。
「牛乳パックを使って再生紙を作っていたのですが、『どうやって作るの?教えて』という会員さんがいらしたので、先日ワークショップを開催しました」
沖縄ガールズスクエアの運営と平行して、手芸関連のワークショップを行うという「Kuroberika(クロベリカ)工房」の活動を始めたのだ。
失敗を恐れては何もできない。
それは真実だ。
しかし、失敗することで現実的に失うものがあまりに大きければ、再チャレンジも難しい。
知識を有するサポーターが親身に寄り添い、ともに夢への道を歩んでくれる新しい起業のシステムが、沖縄に確立しつつある。
写真・文 中井 雅代
沖縄ガールズスクエア
那覇市松山1-3-18 フォレシティ松山3F
098-988-0670
HP http://www.girls-okinawa.jp
ブログ http://ogscal.exblog.jp