台所の中の、道具ものがたり

文/写真 関根麻子

 
shoka:
 
 
 
 
8月から始まる赤木智子さんの道具店を前にふと思う。
 
私が思う、道具って?
 
 
 
色々考えていたら幼少時代を思い出し、私の道具の原点は台所にあると思った。
 
時は高度成長期、イーグルスの「ホテル カルフォルニア」の曲がラジオから流れる中、
台所で母はみそ汁よりもシチュー、焼き魚よりもソースが乗った肉料理を作ることが多かった。
欧米化の加速が著しい時代、母の感覚にもそれが反映していたのであろう。
今思い起こせば、おやつもクレープもどき?みたいなものをよく作っていたような気がする。
 
ピカピカのボウルにホイッパーをぐるぐる回すところを、じっと見るのが好きだった。
そんな原風景。
 
衣食住の観点から道具を思えば、おしゃれ、ましては住まいのことなんぞ全く興味のなかった小さなころ、
私は母の使う台所の道具たちが、魔法のステッキのように見えていたのだった。
 
 
 
 
 
 
 
 
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身の周りの、台所道具。
 
 
台所には道具があふれている。
食材以外は、全てが道具といってもいいだろう。
そんな中、身近で誰の家にも必ずある、便利で頼もしいと思う道具に瓶がある。
瓶好きな人って多いのではなかろうか?
 
毎年のようにいただいていた手作りの杏ジャムの瓶、粒マスタードの瓶、海苔の佃煮の瓶、などなど、などと。
空き瓶も、積極的にとっておく。
わざわざ買うことは、最近皆無。
少しずつ貯まった瓶たちは、サイズもまちまちである。
 
何をいれても一目瞭然、密封機能もお手の物。
我が家の乾物、スパイスなどは、この使い回しの瓶に所狭しと、きっちりかっきり収まっている。
そう、何をかくそう、私も無類の瓶好きなのだ。
 
 
 
 
前回の原稿の際、家を大片付けして身軽になったと書いたが、実は台所の道具たちに関してはいっさい手をつけてはいない。
 
食べ物の匂いがとれず焦げついて色の変わってる木杓子や、20年近くの付き合いになる火に溶けた取っ手がトホホな直火用エスプレッソメーカーなど、数えたらきりがない。
いろんな時間が染み付いた道具たち。
 
食事をすること、料理をすることは、私の中の本能から来る作業。
そんな本能的な作業に道具たちは日々つきあい、愛おしい時間とものがたりを共有している。
そう、私の友なのだ。
 
 
 
 
 
shoka:
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一人暮らしの頃、火を使う料理は全て中華鍋ひとつでまかなっていた。
煮る、焼く、揚げる、蒸す、全てに活躍してくれた。
今では取っ手のまわりに油かすがガチガチとへばり付き、写真として載せるのは絵にはならない、それでも現役。
揚げ物専用となり、あつあつの油を抱えながら美味しい天ぷらやフライを産んでくれている。
 
 
 
中華鍋や木杓子、その他たくさんの私が持つ使い込んだ道具たちは、はたから見れば「新調した方がいいんではないの」と、思われるものたちなのかも知れない。
しかしながら、口笛を吹きながら炒め物をした時も、泣きながらスープを作った時も、その時の私の気持ちを支えてくれた友なのである。
そんなささやかながらも大切な時間を共有した道具たちを「これを手放すなんて!」なぞと大げさにひとりごち、今に至っている。
 
 
 
 
shoka:
 
野菜や梅を干したり、水切りしたり、根野菜の保管をしたりと、大活躍の大かご。
 
 
 
 
 
shoka:
 
 
 
料理する過程に使用する鍋やまな板、そんな道具たちと、フィニッシュを飾る器とは、なぜか向き合う意識が違う気がする。
前述の道具たちは、タフネスな親友。一緒に目標に向かって頑張る同級生みたいな感じ。
ごくごく身近な存在。
 
器ももちろん道具なのだが、その後の食卓の時間をより楽しくしてくれるし、自然に会話を生み出してくれる。
そんな想像力をともに膨らましてくれる夢先案内人ならぬ、すてきな食卓案内人だと思う。
 
作家の背景を表情に含んだ器が、料理を受けとめる懐の広さに、私は尊敬の念を抱く。
盛りつけ、テーブルに運び「ああすばらしい」と、自画自賛。
味はさておき、器に賞賛。
 
ちなみに我が家の器たちは、料理以上の賞賛を受ける事も多く、私を嫉妬させることもしばしばある。
 
 
 
shoka:
 
 
 
 
私はどうも「もの」を、擬人化するクセがある。
それは、もの、つまり道具に愛情があるからだと思う。
 
そして信頼もある。
 
静かに自分の暮らしに寄り添ってくれ、いざという時は本領発揮。
長い時間寄り添って来たからこその信頼関係。
 
時にはそんな道具たちに「はーい、これよろしく」と、頼りきってしまう場面もある。
昨日までは美味しく炊けてた玄米が「あれ、今日はちょっと違う、何だかぱさぱさしてる!」なんて、圧力釜をギロリと見たりもするのだが、ここは私のミス、反省。
何がいけなかったのかと、鍋に歩み寄る。
答えを発見し、関係修復。
 
歩み寄るということは、道具を長く愛せる要素のひとつではないのだろうか。
修繕し、工夫をほどこす。
そして同じ時間を道具たちと共有してゆく。
 
人との関係と同じだな、と思う。
 
 
 
 
shoka:
 
古道具の椀かごは、器の欠けを気にせず、優しくうけとめる。
後ろは父が作ったイチョウのまな板。
長年使っていてけばだってきたものに、近所のおじさんがやすりをかけてくれた。
 
 
 
 
 
 
8月3日から始まる展示会「赤木智子の生活道具店」がとても楽しみだ。
 
 
智子さんとは電話でしか話したことは無く、顔合わせはしていない。
けれども、ご本人への想像がぐんぐんと広がってゆく、そんな方だ。おおらかで、話していると楽しい。
電話の「はじめまして」の一声から、私の緊張の垣根をとっぱらってくれた。
 
もちろん仕事の話をしているのだが、ころころと電話口で笑い「あ、それでね、これはねー」と、今回の道具たちを楽しく説明してくれる。
その説明からは、作家さんの背景を熟知する深いおつきあいがあり、そしてその道具たちと、長い時間愛情を注いで接してこられたのがよく分かる。
 
 
以前智子さんの執筆された本を読んだ時、自分の身の周りの関係を常に自然に正直に表現していること、そして生活をより気持ちのよい方向に持ってゆく姿勢に感激したことを思い出した。
 
 
 
素直な目線を持った智子さんが、実際の生活の中で使ってみて、納得したお気に入りの道具たちが沖縄にやってくる。
会場に足を運んだ人はきっと、智子さんのゆたかな暮らし、楽しい暮らしが感じられるだろう。
 
 
 
そして私はといえば、新しい道具との出会いがこれから先の自分の暮らしに、どんな時間、どんなものがたりを紡いでくれるのかと、
今から気持ちはわくわくと弾んでいる。
 
 
 
 
 
 
 
 
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Shoka:の改装工事も始まり、8月24日から新たに常設としてスタートする空間も、着々と形になっています。
ブログは、楽しく更新していますので、ぜひのぞいて見てくださいね。 http://shoka-wind.com
ひとまずは8月3日から始まる企画展「赤木智子の生活道具店」でみなさまと再会出来るのを楽しみにしています。
 
 
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赤木智子さんと語る会 「暮らしの中の道具たち」
 
「赤木智子の生活道具店」に合わせて、座談会を開催します。
輪島の暮らしの中で、道具たちに支えられて工房の女将をこなす、智子さんのお話を聴きたい方へ朗報です。もの選びの視点、それを使う楽しさや工夫、使い続ける事によって美しく変化していく道具のお話や、作り手と使い手のお話など、加賀棒茶をお供にゆったりとした雰囲気の中で聞いてみたいと思います。
智子さんの暮らしをのぞいてみたい!と、私たちも今からわくわくしている座談会のご案内です。
 
 
日時:  8月3日(金)
開場:  18:30
座談会: 19:00~20:30
<完全予約制> 定員に達し次第閉め切らせていただきます
 
*当日Shoka:は18:00にてクローズいたします*
 
会場:  Shoka:  沖縄市比屋根6-13-6 098-932-0791
参加費:加賀棒茶、軽食付き1000円
*当日は智子さんが応援している米麹を使ったおにぎりと、加賀のお菓子などをRoguiiのミカちゃんが用意してくれます。お腹がグーグーいっていてはお話に集中出来ないかもと、準備しました。一緒にいただきながら、わいわいと座談会をいたしましょう。*
 
予約方法(必ず8/3座談会の予約と明記ください) 
1 全員のお名前
2 人数
3 メールアドレス
4 携帯番号
5 車の台数(駐車場スペースに限りがございますので、乗り合わせのご協力をお願いいたします)
6 住所(Shoka:からイベントの案内が欲しい方のみ記入をどうぞ)
 
shoka.asako@gmail.com  関根までメールでご予約ください。
 
 
 
◯Shoka:の展示期間中はお子様連れも大歓迎ですが、お話に集中していただきたいことから大人のみのご参加とさせていただきます。ご理解のほどお願い申し上げます。
◯当日は立ち見の可能性もございます。予めご了承ください。 
◯先着順で定員に達ししだい、締め切りとさせていただきます。
◯ご予約のメールをいただきましたら、こちらから返信をもちまして予約完了といたします。
 2日たっても返信がない場合は080-3221-8135までご連絡ください。
 
 
 
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「赤木智子の生活道具店」
 
2012年 8月3日(金)~12日(日)
 
 
「日日是好日」をモットーとしているという、赤木智子さんは、
エッセイストで、塗師 赤木明登さんの伴侶。
 
家族とお弟子さんたち、次々と訪れる来客を迎える輪島での暮らし。
新潮社から出版されている「赤木智子の生活道具店」を読んでいると、
 
食べること、着ること、住まうこと、
そのすべてを支えてくれている生活道具たちと、
まるで友人のように共に暮らしている
赤木家の様子が生き生きと伝わってきます。
 
大好きなものと暮らしていると、一日一日が特別に感じられる。
 
智子さんが選んだとっておきの生活道具たちを迎えて、活気ある夏到来!
 
全国で人気の「赤木智子の生活道具店」沖縄で初めての開催です。
 
 
 
入荷するラインナップは以下のものです。
みていてわくわくしませんか?
 
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及源の南部鉄フライパン
早川ゆみのスカート
白木屋伝兵衛のちりとり・ほうき・たわし
上泉秀人の大きな湯飲み
小野哲平の小皿
花月総本店の原稿用紙とカード
mon SakataのTシャツと小物
大村剛の小さな片口
安藤明子のよだれかけとガーゼもの
晴耕社ガラス工房のコップ
リー・ヨンツェの角皿
野田琺瑯の洗い桶
ギャラリーONOのガベ
井畑勝江の湯呑み
佃眞吾の我谷盆
ヤオイタカスミの子供服・ワンピース
輪島・谷川醸造の「塩麹くん」「米麹みるくちゃん」
秋野ちひろの金属のかけら
広川絵麻の湯呑みと蓋物
岩谷雪子のほうき
村山亜矢子の塗り箸
而今禾のパンツ・スカート・ワンピース
壺田亜矢のカップと片口
新宮州三の刳りもの
丸八製茶場の加賀棒茶
高知谷相の和紙
輪島のほうき
赤木明登のぬりもの
輪島のお菓子
 
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