小さな喜びが紡ぐ時間

 

みなさま、2019年が始まりいかがお過ごしでしょうか?
沖縄は年越し、年明けと暖かい日々が続いていましたが、中旬からぐっと冷え込んできましたね。
風邪などひかれてないですか?

 

 

 

今月25日からShoka: にて始まるGABBEH展。
中東の遊牧民による草木染め手織りの絨毯GABBEH(ギャベ)が一堂にご覧頂けます。
手仕事から生まれるものは、なんだか手に馴染んで正直に気持ちが良くなりませんか。

 

うまく表現できませんが着るものやものに触れた時、なんだか…うん、そうだこれこれ。いい感じだ。と思う時ってありませんか?

 

この絨毯、使われている素材は天然100%のウール。ひつじから頂いたもこもこを人々が手紡ぎし、草木で染め、織っていきます。
クレヨンで描いたような不揃いな線がうっすら見え、グラデーションになっています。

 

 

元気が湧き出てくるような赤!なんて美しいんでしょう!
深い紅の色、茜色、オレンジがかったスカーレットのような色、やさしい桃色のような赤、「赤」といってもいろんな赤が混在しています。

 

 

じっくり見ないと模様であることがわからないほど、細かい規則性のあるデザインで、デザインが誇張しすぎず遠目で見ると全体の馴染んだ中に奥行きある表情を感じさせてくれる。

 

ひとつのギャベを見ているだけでもいろんな発見が出てきます。
ごろんと転がって撫でると気持ちがええ。。

 

一枚のギャベに使われる分量の、糸を紡ぐことだけでも膨大な作業量です。
植物を使い、その道の職人の技で染められます。
さあ、そこから村の娘さんやお母さんが織っていきます。
大きなものは2Mを越す幅のものもあるので、2人、または4人で横並びにして織っていきます。
「人」が作るものなので、やはりギャベの右と左で見比べると織り加減が違うものも、中にはあるのです。
それに対して感じ方は様々ですが、それでよし、とされたところこそがわたしはギャベの世界観らしくてとても大好きです。

 

織り上げたら終わりではありません。
その後、仕上げを整える人たちがいます。
毛足を揃えるための刈り込みをする人、ガベの4辺の端の始末をする人、歪みの調整をする人、洗う人…などなど。

 

そうしてやっと日本に渡ってくるのです。
ギャベはその土地のたくさんの人の手をとおって生み出されたもの。

 

想いを馳せると、もしかしたら、自分と同じような境遇の人が織っているのかもしれない、自分の子供のような性格の子が試行錯誤しながら染めているのかもしれない、自分の親のような人が最後の調整をしているのかもしれない。
少し優しい気持ちになれるのは、ギャベのおおらかさのおかげでしょうか。
天然素材のもの、人のつくるものは温もりがいっぱいで心を耕してくれますね。

 

 

今でこそ市場に出まわっているのですが、もとは遊牧民各家庭で織られ、家族の財産として、代々受け継いでいくものであるギャベ。
はるか昔遊牧民の歴史の古くから受け継がれた絨毯と、その技の伝承。

 

現代は、沖縄にいる私たちもそんな素敵なギャベに触れる機会が出来ました。

 

ギャベの上でごろごろ、キャーキャー、楽しみ始めた少女。

 

 

 

とってもかわいいですね!
終始楽しそうにくつろいでくれました。そんな姿を見ているとこっちまで緩んでしまいますね。

 

動物を撫でているような、一緒に寝そべっているような気持ちになるギャベ。

 

原毛の色のまま使われているものもあります。

 

 

ギャベを使ったある方は、ソファーの下に置いたら、ソファーよりギャベの上に直に座ることの方が増えてしまったというほど…。
なんだか、豊かな気分になりますね。

 

たくさんの人の手によって大切に生み出されたギャベはやはり、そこそこのお値段がするものですが、一生使えて、子の代、孫の代へと受け継ぐことが出来る財産だと思うと、高すぎるわけではないのだと感じます。

 

手仕事のものは、作り手もだけれど使い手だって手間がかかる、とお考えの方も多いのではないでしょうか?
どんなにいいものだと理解っていても、毎日の生活を共にするのは自分ですもの。お手入れはしやすいものがいいですよね。

 

天然のウールは、天然の油分があるためゴミ汚れをはじいてくれますので、むしろお手入れは楽チンなのです。
普段通り掃除機やほうきでお掃除してもらって大丈夫です。はじめは少し抜けた感じがしますが次第に安定してきます。
飲み物や液体の汚れは、こぼしてもすぐに拭き取ってもらえればだいたい取れます。
もしくはかたく絞ったタオルで拭き取るといいようです。

 

ギャベの寿命は100年以上と言われ耐久性に優れています。長く、時間を共に過ごし使い込むほどに味わい深く変化していくのがとても楽しみですね。
ぜひ、25日からはじまる展示会へ足をお運び下さいませ。全身で楽しんでみてほしいです。

 

実際に届くギャベの詳しいお知らせは、これからHPや次回の記事で追い追い紹介していきますのでお楽しみにお待ちください。

 

 

晴れると初夏のような暑さに、雨が降ると一気に冷え込む沖縄の冬。
何年かShoka: で冬を迎えている私は、つくづく職場の環境がいいのだなぁと感じます。

 

 

Shoka:の手前、出勤途中で目にする景色ですが、今朝も東側の海は凪で、まばゆく光っていました。
海から元気をもらって一日が始まります。

 

ありがたいことに、年末までがむしゃらに走るように毎年多忙のShoka:。
年を越すとやっと一息ゆっくりと向き合うゆとりが出てきます。

 

春目前に、お店に届いたのは藍染の濃淡の違いのある2枚のブラウス。
藍染にどうしてこんなに惹かれるのだろう。

 

 

藍には特有の陰影があって心を穏やかに和ませてくれたり、生地の感触は少し硬さがあり、袖を通すときにかさかさと聞こえる音に気づいたり、着るとハリがでるその質感を感じたり。
きっと、普段なんとなく服を見ていたらここまでは気づいてすらいないだろうことを、Shoka: にいると感じることが多いのです。
五感を使って、服やものと向き合っている感覚です。

 

作品となったお洋服やそのブランド、作家さんの意図を紹介するのがお仕事なので、どうやったら伝わるのだろう?・・・日々、鍛錬中です。
まず観察をします。鑑賞教育みたい…。
そこでお洋服や作品の写真を撮るわけですが手を動かしていると、物との対話が始まります。
実際には空気なのですが服の中に、ある人がいるような感覚をもっています。
誰かに着せてボタンをしめてあげているような感覚です。

 

 

袖の膨らみがかわいいもの、シルエットがかわいいもの。
ただ撮るとしわしわの布の塊になってしまってなんとも残念なことに…。
出来ればこのかわいさが伝わる写真を撮りたいのでちょこっとだけ工夫しています。

 

重力を利用して素材の重さの特徴によって綺麗な落ち感やドレープが出ることを実感したり
布のハリを利用して腕(袖)がピョーンと伸びたものを、内側や外側へ少しずつ移動し手を加え人間の自然なしぐさに近づけていきます。

 

意識しすぎると、変な体勢になったり違和感が出るのもまた常。
違和感から微調整を繰り返す。偶然辿り着くこともあります。

 

 

バッグを握った女性のもとに風が吹いているような、後ろから呼ばれて振り返るところのような。
妄想が広がって行くタイプですみません。

 

物だけではありません。
人には個性がそれぞれあって、スタッフに似合うものを着てもらい綺麗なラインを探りながら撮り続ける、これもとても楽しい作業のひとつです。

 

スタイルの良い彼女は一見体のラインが出て難しそう…と思うパンツもヘルシーにさらっと履いてくれます。
シルクのブラウスとカシミアのニットパンツのコーディネート。
上質な素材でカジュアルなラインを日常に取り入れる
ーこんなゆとりのある暮らしに目を向けて、そこに向かっていけたら、どんなに豊かで楽しい人生なのでしょう。

 

 

 

そして、うちなーんちゅの彼女も、外国の血が入ったようないろんな仕草を持ち合わせています。
デコルテが綺麗で、髪をあげた姿がよく似合う。
ほどよく開いた襟元のワンピース、ヘッドアクセサリー、バロックパールピアスがとても似合っています。
muska のジュエリーは天然石の自然の形とゆらぎを生かしたものが多く、太陽の光を浴びたパールはさらに光輝きます。

 

 

 

こういうなんて事のない仕事の一場面なのですが、小さな喜びを積み重ねて、時間は紡がれていきます。
例えば写真を撮る事、紹介すること、誰もが出来るかもしれないけれど、誰かと自分を比べて一喜一憂するのではなく
前は出来なかった事が少しずつ出来て行く喜び(まるで、いつまで経っても逆上がりに挑戦する小学生のようですね)を
きちんと自分と向き合って、感じながら仕事をしていくと、小さかったものが大きな喜びに変わっていくので、とても不思議ですね。

 

 

 

お庭のピンクボールのお花がどんどん蕾をつけて、太陽を見上げています。

 

静かな時間が流れているShoka: には、みなさまにとっても、ちいさな喜びが落ちているかもしれません。
ぜひぜひ、お時間のあるときに拾いにいらしてくださいね。
お待ちしています。

 

 

 

写真・文 金城 由桂

 

 

 

暮らしを楽しむものとこと
Shoka:
http://shoka-wind.com/
沖縄市比屋根6-13-6
098-932-0791(火曜定休)
営業時間 12:30~18:00