靴という存在。
うっかりお財布をお家に忘れることはあっても、靴を履くことは忘れないくらい日常でかかせないものだ。
まさに生活に根ざした「道具」
6月15日からformeの靴展が始まり、右を見ても左を見ても素敵な靴だらけでとにかく楽しい光景が広がっている。
高校生の頃、初めてきちんと革靴を履いた。
母が高校生になったお祝いにと買ってくれたローファーだった。
その頃は学校でスニーカーを履くことが流行っていた時だったし、なんとなくスタンダードなものって居心地が悪いと思っていた年齢だったように思う。
けれど、いつまでたっても新品のままのローファーをみてがっかりしている母の姿に、履いてみようという気になったのを覚えている。
履き始めると、ローファーという存在のおかげで制服がかっこよくみえたし、するっと履くことができてとても歩きやすかったのだ。
気づけば一番のお気に入り。スニーカーで学校に行くなんてもったいない、と思うほど。
伝統的に愛されているもの、そして革靴の良さをかみしめるように知ることができた大切な時間だ。
formeの靴を初めて履いた時、その感覚を思い出すような懐かしい気持ちになった。
クラシカルな形、シンプルながらこだわりのある素材、何度も試行錯誤して完成されたデザイン、それは毎日の暮らしにしっくりと馴染んでくれるような靴だと思った。
そして、いいものをみたときに共通して思うことがある。
信念を持って作られたものの美しさは心に響く、ということ。
Belted blucher、これはわたしの私物。
艶のあるカーフとマッケイ製法でつくられたソールのおかげで、軽くてしなやかでスマートな印象。
それが、どことなくおじさんっぽくて気に入っている。
そして、そのおじさん感が、女性らしいドレスとのバランスをちょうどよくしてくれるところもにくい。
formeの靴には2種類のソールがあって、長く履けるようにと製法も一工夫されている。
mckay(マッケイ)製法:甲革・中底・表底が一緒に通し縫いするという方法でつくられている。スマートでエレガントなフォルム、柔らかな足入れ、そして軽いことが特徴。
goodyear welted(グッドイヤー)製法:中底と甲革、裏革とウエルトをすくい縫いで縫い合わせたあと、隙間をコルクで埋めてウエルトと本底を縫い合わせる。二度の縫い合わせと複雑な工程を持つ技術力の高い製法。
履き始めはすこし堅いけれど、履いていくうちに足の形になぞるようにフィットしていって馴染んでいく。そして、修理もしやすいのでソール交換もできて、長く愛用することができる。
それぞれのよさがあるので、好きな雰囲気で選ぶのもいいですね。
お互いの足元が気のなる様子の二人。
さてさて、どんな靴を履いているのでしょうか。
こちらはヌバック(革の表面をやすりで細かく起毛したもの)とカーフの組み合わせのBalmon Ankle boots。
この滑らかでずっと撫でていたくなるような肌触り、そして色の味わいも心をくすぐる。
内羽根になっていて、クラシカルですっきりと品のあるフォルム。
ソールがグッドイヤー製法でつくられており、よりクラシカルな印象。
異素材のコントラストも、そして後ろ姿もとても美しい一足。
この高さの靴の悩みは、くるぶしがあたっていたくなってしまうということ。
実はこのブーツ、靴の内側のサイド部分が帆布素材でつくられている。
これまでに痛くなるといった声が多くあったのでとつくられた、心遣いがとても嬉しい靴。
こちらはButtons strap shoes、オーナー田原も愛用している一足だ。
カウリバース 裏革をあえて表として使っており、より表情が豊かな印象。
履いていくと、艶がでてまたいい色に育ってゆく。
まるでヨーロッパの少年のよう。
ヴィンテージの木ボタンが愛らしく、するっとローファーのように履けるのも嬉しい。
こちらはSaddle shoes。
清楚で品のあるフォルム、紳士的な印象のなかにスマートな女性らしさもあってとても贅沢な一足だ。
ひも靴のいいところは、すこし手間のかかるところだと思っている。
ひもを結ぶ間、靴と話しているような感覚になるから。
かかとを合わせて、ぎゅっと紐を結ぶ。
今日もいい一日になるといいね、よろしく。
そう、声をかけてみる。
耳をすますと、軽快な足音が聞こえてきそう。
こちらはMiddle open strap。
ヴィンテージ感のある革が使われていて、もうすでに味わい深いのも魅力のひとつ。
ナッツのようなフォルムが愛らしく、夏にもサンダル感覚で季節を選ばず履くことができるのも嬉しい。
Blucher plain toe 、シンプルなものが持つ潔さに惚れ込んでしまう。
いろんな雰囲気のお洋服も受け止めてくれるような包容力もあって、これが一足あれば、と思えるような靴だ。
こちらはアンカルホースでつくられている。
ベジタブルタンニンによって鞣された馬革にロウをしっかり浸透させているもの。
ブラックの色に染められており履きはじめはネイビーのように映るけれど、履き込んでいくうちに染み込んだロウが馴染んで色の深みと艶が増していく特徴がある。
時間をかけて育てる、経年変化がとても楽しみな素材だ。
この秋冬で展開される、こちらのBlucher plain toe。
1930年代の女性的でエレガントな印象。
時間をかけて調整して、やっとできあがったものだそうだ。
木型に合わせてヒール部分も一枚ずつ革をつんで高さをつくっており、ここでも細やかに手がかけられていることがわかる。
靴の横顔がとても綺麗。
ノーブルな艶が、より女性らしさをひきあげてくれる。
やっぱり後ろ姿も美しく、男性のデザインする女性らしさの質にはいつも関心する。
同じ形でも素材が違えば、ぐっと雰囲気も変わってくる。
それぞれの素材の楽しみ方があって、知れば知るほど奥深くて面白い。
革靴は、長くじっくりと付き合っていく相棒のようなものだ。
手入れをしながら付き合っていけば、何十年とともに過ごすことができる。
とっておきの靴を手にした時、革が育っていく様子や靴が自分の足に馴染む過程、それはきっとみなさまのとっての愛おしい時間になる。
時々悲しいことがあって下をむく日があっても、いつでも眺めのいいあしもとがみえる。
すると幸せな気持ちになって、前を向いて歩くことも楽しくなるにちがいない。
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初めての革靴という方や履きなれていない方も、きっとお手入れの仕方などの不安なこともあると思います。
そんな時にはぜひ、わたしたちにお気軽にご相談くださいね。
メンズの靴もたくさん届いて、たくさんの方に楽しんでいただけるような空間になっております。
6月24日までの企画展、ぜひ足をお運びください。
みなさんにとって、信頼の置ける相棒が見つかりますように。
オーナー田原が寄稿したformeの記事はこちらです。
「forme デザインの引き算」
(http://calend-okinawa.com/life/aessay/forme201806-2.html)
ぜひご覧になってくださいね。
写真・文 桑田さやか
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6月15日(金)~6月24日(日)会期中火曜日定休 12:30~18:00
デザイナー小島明洋・formeスタッフ在廊日 6月16日(土)
Buttoned up shoes は私が20代の頃から憧れていてずっと履いてみたかった形。ヨーロッパの木型が合わないので諦めていたけれどformeでこの形をみつけて履けたときには、心の中でガッツポーズと小躍。ロマンを感じる素敵なデザインですよね。ボタンに手間はかかりますが手間がかかるほど可愛いものなんですよ。
店主のひとり言
「いい靴を履くということ」
いい靴ってなんだろう?私たちの生活の中に革靴は当たり前のように溶け込んでいる。けれど私たちはあまり革靴のことを知らない。お手入れのこと、フォーマルとワークシーンとデザインの関係。渡したいの大事な足を支えてくれる靴の構造が、どれだけ私の健康や骨格に影響を与えているのか。
formeの靴たちは、forme=「形」の名前の通り、美しい形と履き心地が追求されている。トゥースプリングというかかとを少し高めに、つま先を少しだけあげる手法を用いて仕上げられた柔らかくしなる革製の靴底は足の運びが軽く、馴染むほど愛着がわく履き心地。デザイナーの小島明洋氏が日本人の足に合う木型の設計から起こした型を元に、靴職人が手仕事で作り上げる靴たちは、ファッション性も耐久性も追求されているのだ。靴底の交換などの修理も安価で済むような仕組みで作られていることにも職人気質な精神が感じられて嬉しい。履いていて同じ日本人としてとても誇らしい気持ちになるのだ。胸を張って背筋を伸ばして歩ける靴。そんな誰かの素晴らしい仕事やものに触れることが生活の豊かさにつながるのだと、わたしは思う。
Shoka: 田原あゆみ
6月16日(土)にformeのデザイナー小島明洋氏とスタッフが在廊します。その機会にじっくりと靴と自分の足との相性を探求してみるのもいいと思います。また沖縄では梅雨は革製品とカビとの激戦時期。革製品を濡らしたら大変だと思っている方も大勢いらっしゃることでしょう。そんな時期だからこそ、お手入れやメンテナンス法をお伝えするのにちょうどいいと思っています。早めに対処すれば大丈夫。この機会にShoka:チームにどうぞご相談ください、
〈企画展期間中メンズとレディースの靴がほぼ同じ型数並びます。価格差もほとんどありません。男性の方には嬉しいですね。この機会に男性のご友人・知人にもお知らせしてあげてください。formeの美しい形と手仕事の技に一人でも多くの方が触れてくださいますように。〉
暮らしを楽しむものとこと
Shoka:
沖縄市比屋根6-13-6
098-932-0791(火曜定休)
営業時間 12:30~18:00