くらすこと いきること ぼくたちのくらしの中から生まれた服とうつわたちvol 1 早川ユミさんのちくちくワークショップによせて

写真 文 田原あゆみ 

 

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3月1日(土)から始まる陶芸家の小野哲平さんと、布作家の早川ユミさんの企画展。
去年の7月末に2人の暮らす高知県の谷相を訪ねた時に感じた光や風が、海を渡ってうりずんの沖縄へやってくる。

 

小野家で過ごした4日間はとても思い出深い。
そこには「くらし」が在った。

 

身体を使った労働も、五感を感じて作るお料理も、生きることの意味を求める哲学も、自然や大地に感じる畏怖の念も、人々とふれあい交流することで生まれる葛藤も、つきない探究心も、湧き出る好奇心に導かれる次の旅へのあこがれも。
なんだか懐かしいほど、人間らしい「くらし」。

 

朝起きたら、おはようと言い合ってみんなでご飯を作る。

 

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料理をして、食べる。ただそれだけのことなのだけれど。

 

世界中の人たちが当たり前の様に繰り返しているその行為と、食事の時間。
その内容は様々だろうけれど、小野家の食事の時間にはとても温かいものが流れているのだ。

 

 

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哲平さんが作ったうつわの上にパンや料理を載せて、やはり哲平さんの作ったカップにコーヒーを注いで頂く食事。
2人の元で働いているスタッフの人や、旅人、家族。
みんなで作って、みんなでいただく。
朝には朝の光が降り注ぎ、昼には蝉が鳴き、夜にはカエルの声が聞こえてくる台所。

 

ユミさんの畑から採れた野菜も並ぶ。

 

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ご飯を食べると元気が出てくる。
当たり前のことのようだけれど、身体は食べるものとその時間で出来てゆくのが体感できる。
そんなご飯は実はそんなにたくさんはない。

 

 

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「気がつくと、ふと手が伸びてしまうようなうつわをつくりたい」
そういっていた小野哲平さんのうつわは、お料理のためのうつわ。
うつわはもちろん料理を載せるためのものなのだけれど、家庭料理を育むような、包み込むような、そんな柔らかい肌をしている。
手料理がとてもおいしく見えるのだ。

 

 

その料理を作る中心にいるのが早川ユミさん。

 

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朝食の後に畑を案内してくれた。
うれしそうに、楽しそうに畑で出来る作物のこと、葛芋の蔦のたくましさとの格闘や、日本ミツバチの神秘的な生態、好奇心に導かれて始まった様々なことを眼を輝かせて話してくれた。

 

ユミさんの野良着は、ちくちく自分で作ったもの。
旅の途中で出会った、胸が躍るような布たちをリュックにいっぱい詰め込んで持って帰ってきては、かたかたとミシンを踏んだり、手でちくちくと縫い上げてゆく。

 

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自分たちが食べるものがどんな風に育つのか?
私たちの暮らしている土地は、どんな土で、どんな作物に適しているんだろう?
私も育てられるのかしら?
どれどれやってみよう。

 

そんな風に始まったのじゃないかしら。
きっと畑仕事は簡単ではないのだろうけれど、なんとなく気楽さを感じるのは、身体を動かす労働もその根底に好奇心がわくわくと流れているからだろう。

 

 

好きな布で好きなように作る日常着を着て、自分の身体で出来ることをする。
それはきっと楽しいだろう。想像しても力がわいてくる。

 

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日本ミツバチの集める蜂蜜は、自然のお薬。
貴重なのでとても大切にされている。

 

日本ミツバチは寒すぎても、暑すぎてもうまく育たない。
ある日こつ然と一つの巣箱に住んでいたミツバチたちが消えてしまうこともあるし、いなくなってしょんぼりしていると、翌年にはどこからかやってきて巣箱がいっぱいになることもある。
日本ミツバチとくらすことで、自然に耳を澄ます機会が増えたとユミさんはいう。

 

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お昼ご飯の時間。

 

その後はオーガニックマーケットへのお買い物。

 

 

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ユミさんのお出かけセット。
持ち物のどこをとっても、すべてがユミさんのスタイル。

 

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ご飯を作って、畑仕事、山を下りて買い物へ、そして大好きな布を触る仕事がこのくらしの中に共存している。

 

 

 

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ユミさんに初めて会ったとき、ふんわりとしていて柔らかい控えめな印象がしたのは、きっと隣にいた哲平さんという旦那様が熱い人だったからだ。
初めて会ったその夜に、一緒に晩ご飯を食べていて、「一体何がやりたいの?ここで」と、ズバリと本質的な質問を投げかけてくる哲平さん。その横で、ほんわりと微笑んでいた早川ユミさん。

 

谷相を訪問した4日間を通して、私はユミさんという人のこんこんと元気よく湧き出る好奇心の泉に触れたのでした。

 

 

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無心にちくちくと針で糸を運ぶユミさん。
この仕事がユミさんのライフワーク。
ユミさんの存在意義の大きな柱。

 

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旅で集めてきた布を、切って、合わせて、ちくちくちくちく。

 

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やりかけの景色も、やっぱりユミさんらしい。

 

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ミシンでかたかた縫ったり、陶土で作った焼き物のボタンを縫い付けたり。

 

 

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そんな風にして出来上がってゆく、日常着たち。

 

食べて、仕事をして、休む。

 

それが私たちのくらしの単純な姿。

 

その全部を自分らしく、自分の感覚も、頭脳も解放して体験したい。
そんなユミさんの暮らしに触れて、私の娘の夕央も気がついたら無心にちくちく。

 

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ユミさんに分けてもらった、ちくちくワークショップのバッグセットを手に、集中してちくちく。
その日一日でかわいいリネンのバッグが出来上がったのでした。

 

シンプルなのに、その人が出るのが運針の糸の模様。
その人の息づかいが、糸の模様になって布の上を走る。

 

日常のくらしの中にある様々な仕事。
身体や頭を使う仕事と、無心になる仕事。
その両方があってこそ、人の心のバランスは健やかになるのかもしれない。
ユミさんと哲平さんのくらしに触れて、私はそう感じたのでした。

 

 

さて、私たち日本人の多くの若い世代のくらしは、今はもうアスファルトが敷き詰められた街の中。
むき出しの土を見たり、草を踏んで歩いたり、そんなことももしかしたらわざわざすることの一つになっているのかもしれない。
現代人の多くは、露で濡れた土で靴底を汚すことも少なくなってしまった。

 

けれど私たちは、心のどこかで知っている。
手塩にかけて育てた野菜はおいしいことを。
好きな布を自分で縫うのは楽しいことを。
本気で向き合う仕事がどんなに人生を豊かにするのかを。

 

3月1日から始まる、哲平さんとユミさんのこの企画展で、2人のくらしの中から生まれる服やうつわを通して、感じてもらえたらうれしいこと。
それは、私たちは公も私も一つだということ。
衣食住にまつわる日常の雑務も、公に自分の才能を捧げる仕事も、旅も、遊びも、個人の哲学も、どれも切り離せない一つの景色。

 

人の数だけ、様々な景色があるけれど、私はこの2人に出会って、とてもうれしくなったのです。
自分の中から溢れてくる好奇心に素直に生きると、こんな風に感情が生き生きとするということ。
いくつになっても、笑顔がぱっと花開く、そんな大人が増えたら、子供たちも早く社会に出たくてたまらなくなるのじゃないかしら?
魅力的な人に会うよろこびは、もしかしたら人間にとって最も大きなよろこびなのではなかろうか。
そんな風に私は最近思うのです。

 

そうそう、それから今回の企画展はチャハット那覇と同時進行で開催します。
Shoka:ではくらしの中の服とうつわを、チャハット那覇では旅のうつわと布を。

 

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小野哲平・早川ユミ 二人展旅するうつわと旅するかみさま

 

旅の神様をユミさんの作った布に包んで、お守りのように持ち歩けるようにしたもの。
なんだかすごく楽しそう!
哲平さんの旅のうつわも気になりますね。
チャハットでの展示は3月2日から始まります。両企画展供に16日までの開催です。
→Shoka: は9日(日)まで。チャハット那覇は16日までの開催です。
是非日常と非日常をのぞきに、Shoka:とチャハットを行ったり来たりして、2人の仕事に触れてみて下さいね。

 

 

 

ちくちくワークショップとトークイベントのお知らせ

 

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早川ユミのちくちくワークショップ
好奇心旺盛で、くらしにまつわる様々な事に興味津々の早川ユミさん。ミツバチの巣箱を置いて、日本ミツバチの生態に触れる事で土地のリズムを感じたり、高知県谷相の山間の村で畑を耕し植物の成長に自然のささやきを聴いたり、大好きなアジアを旅したり。そのユミさんがライフワークにしているのが、ちくちくと愛着を感じる布を縫って、服を作るという事。その服は日常や旅で活躍する生活の服。 見た目よりずっとパワフルでたくましい女性ユミさんと一緒に、ちくちくと普段使いのバッグを縫うワークショップです。 みんなでわいわいがやがや楽しくバッグを作って、好奇心が形になるよろこびをバッグに入れて持ち帰り!そんな楽しい会になるでしょう。 先着順に受け付けていきますので、皆様早めにお申し込み下さいね。
開催日時 2014年 2月 28日(金)
第1回 10:00~12:30 (定員20名)
第2回 15:00~17:30 (定員20名)
参加費 一人4500円 ちくちくバッグセットの材料費込み(飲み物とお菓子つき)
持ち物 糸切りはさみのみ(バッグの材料や、糸と針などは開場に準備してあります)
場所 Shoka: 沖縄市比屋根6-13-6  tel 098-932-0791

 

小野哲平さん、早川ユミさん トークイベント

 

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「くらすこと 生きること ぼくたちのくらしの中から生まれる 服とうつわ」
日時   3月1日(土)
開場   18:00
開演   18:30 ~ 20:00
高知県谷相の山の上の小さな村に住んでいる哲平さんとユミさん。手仕事が好きで、服をちくちくと作ったり、畑をしたり、暮らしに関わることならなんでも興味津々のユミさん。「おれは土さえ触っていたらいいんだ。この仕事が大好きなんだよ」と言い切る陶芸家の哲平さん。住んでいる大地にしっかりと足をつけてくらすことと、旅に出てそこから有形無形を持ち帰ってくることの循環が彼らの暮らしに何をもたらして、どんなことが生まれているのか。田原はそこにとても興味があります。とても感受性豊かで、生き生きとしている二人からいろんなお話を聴くのが楽しみでたまりません。そんな2人の話を聞きたい!という仲間を募集します。

 

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○お申し込み方法

 

1.参加者名(全員のお名前を書いてください)
2.連絡先(ご住所・携帯電話番号・メールアドレス・車の台数)
3.メールのタイトルに「ワークショップ参加希望」もしくは「トークイベント参加希望」と必ず書いてください。 申し込み先 Shoka:スタッフ 金城&佐野  info@shoka-wind.com までメールにてお申し込みくださいませ。
お申し込みはこちら
以下の点にご注意ください
◯必ずメールにてお申し込みください。
◯Shoka:の展示期間中はお子様連れも大歓迎ですが、お話しやワークショップに集中していただきたいことから大人のみの参加とさせていただきます。ご理解のほどよろしくお願い申し上げます。
◯駐車スペースが限られていますため、車でいらっしゃる方はできるだけ乗り合せのご協力をお願いします。

 

 

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暮らしを楽しむものとこと

 

   Shoka:
http://shoka-wind.com

 

 

火曜定休(企画展開催中は除く)
沖縄市比屋根6-13-6