「愛を知る誰もが経験のある、
しかし誰も観たことのないラブストーリー」
観賞直後の私がこの副題を解釈するとこうなる。
「誰もが経験済みなんだから
それを映画でわざわざ観なくても…。
観なくてもいいようなもんだから
誰も観たことがないんじゃないの? 」
シンディとディーンの愛の始まりと終わり。
主人公の名前を「あなた」と「あなたの彼」に入れ替えれば
それはまさしく「あなた」の映画になる。
それくらい経験済みのことだらけ。
ストーリーだけなら観る価値はそうない。
ではなぜ「観るべし!」とタイトルで押したのか。
試写後の女子会がなければ、
そう思うまでにはきっと至らなかった。
企画してくださった桜坂劇場の下地さんに感謝。
女子会に集まったのは、
もしかしたら明日の、もしくは昨日の「シンディ」たち十数人。
感動した!泣いた! と言う人あれば、
退屈な日常を延々見せられただけだった… と思う私あり。
ひっかかったシーンもそれぞれに違う。
「あんな手作り曲、なんてもらったら興ざめ」
「一度嫌になったら、ちょっと触られるのだって死ぬほど嫌! 」
とのシンディへの強い共感の表情を見た直後、
「あれは別れてないの、あの続きがあるの」
「私もこういう時期があったけど、この悪い状態でもまた愛し合うようになるものよ」
と、冷静に未来を語る声を聞く。
面白いことに、誰の感想にも、誰もが完全なる同意はしない。
そう、この映画の神髄はここにある。
観る側の育ちや恋愛遍歴、人生の今いるステージの違いによって、
「ブルーバレンタイン」はオレンジにもブラックにも、もしかしたらピンクにすらその色を変える。
そしてその見えた色が、言えば自分自身を映す色なわけで、
そこから例えば、
自分が「王子様を待つ小娘」か、「愛とは何たるかを知る大人の女」か、
どちらの段階にいるか分かったりする。
得てして映画を作る側の人間は、世に伝えたい、世に問いたいという熱い想いを持っている。
だからその想いを映画の中に盛り込む、それも鬱陶しいほどに。
そういう映画の感想は「是」か「非」かにきっぱり別れがち。
決して自分の無意識下にある考えを意識下に引き上げたりしない。
全てを観る側に委ね、
何も押し付けないし、何も教えないし、まして諭したりなんてしない。
そのメッセージ性の弱さゆえに、この映画は玉虫のように色を変え輝くのだ。
昨日から上映が始まっているが、
惜しいことにチケットに女子会のオプションはついてない。
なので、友人や同僚、姉妹、母子で集い観てほしい。
皆の見た色数が多ければ多いほど、この映画の良さがわかる。
裏を返せば、一人で観るとこの映画の醍醐味を味わい損ねかねないということ。
そう、女子会前の私みたいに。
<沖縄での上映劇場>
「桜坂劇場」
上映期間:7/16~
住所:那覇市牧志3-6-10(旧桜坂シネコン琉映)
電話:098-860-9555(劇場窓口)
HP:http://www.sakura-zaka.com