» 「ジュネチック in 伊計島  滞在制作現代アート展」

 

文・モデル/富田杏理  写真/藤原パウラ

 
ジュネチック
 
「ふわふわ柔らかくて気持ちが良さそうだなー」
まず目に飛び込んできたのは、児玉桂さんの作品だ。
正面に立って見ると、窓の外の風景と一体化している。
 

 
シフォンを通して眺める畑の緑や土の色、空と海の青さは不思議と浮遊感があって、なんだかとても心地よい。
 
 
そんな柔らかさに迎えられる「ジュネチックin伊計島 滞在制作現代アート展」では、沖縄を拠点に活動する6名のアーティストの作品が、旧伊計小中学校の2階に展示されている。
アーティストはみな、会場に1か月滞在して作品を制作した。
「ジュネチック」は、先祖供養を目的に芸能や祭りで集落の路地を練り歩く「道ジュネー」の「ジュネ(沖縄の古語で「巡る・連なる」の意)」に由来し、時間や記憶をジュネ(巡回)するというテーマに基づき、展示が構成されている。
 

 
 
児玉さんのもう一つの作品「filter-透過する風景」。
コンクリートの小部屋が波打ち際のように表現されているもので、こちらもまさにアートを「体感」できる空間。
 
 
その隣の「blue hour」は児玉美咲さん。
 
ジュネチック
 
「伊計には 時計の真ん中の意味がある」
そんな詩と共に、メトロノームなどが棚の中に展示されている。
床の一部は剥がされ、その代わりに砂が敷き詰められている。
 
ジュネチック
 
ジュネチック
 
棚の向かいの壁には、校庭で遊ぶ子どもたちの写真が連ねて飾られている。
焼けたような加工がされた写真からは、だんだん子どもたちがいなくなる。
写真を追っていくうちに音が吸い込まれたような感覚に陥る。
時間の流れが徐々に不規則になっていくような…。
 
沖縄本島と橋で陸続きになってはいるものの、せわしない現実とは別世界のような、不思議な伊計島の雰囲気を肌で感じた。
 
そうか、時計の真ん中だから動かないのか。
 
堅苦しい美術館とかじゃなく伊計島という舞台だからこそ、こういう作品が生まれるのだろう。
作品と見る人と島とが一体化し、今回の企画の醍醐味を味わえる。
 
 
廊下沿いには、平良亜弥さんの作品「選ぶ 残す 変える」。
 
ジュネチック
 
ジュネチック
 
空調のダクトルームだったのか、奥行きのないクローゼットのようなコンクリート打ちっぱなしの壁の一部に、キラキラ光る銀色のテープが四角に張り付けられている。
 
ジュネチック
 
その空間の隣には、空調の吹き出し口がある。
中を覗き込むとずっと奥まで空間が続いており、そこにライトが照らされている。
その空間に身を置いていると、まるで宇宙船の中にいるような気分になる。
 
うーん、「選ぶ 残す 変える」。
子どもたちが毎日過ごしていた平凡な学校に、こんな小宇宙が出来るとは。
 
ジュネチック
 
教室に様々な漂流物が展示されている「呼吸」は西真理さん。
 
大きな水タンクの存在に不意をつかれる。浜比嘉島から拾ってきたという。
 
ジュネチック
 
どんな経緯でこの物たちがここにたどり着いたのかと考えると「???」で頭がいっぱいになる。
 
ジュネチック
 
教室に入った時には正直「これはいったい…」と言葉を失ったけれど、しばらく部屋にいると、持ち主を失った漂流物から、無情な時の流れを訴える声が聞こえてくる気がした。
 
ジュネチック
 
ジュネチック
 
小学生が使用していた、フルオープン型の大きな教室エリアには、石垣克子さんの「黒板と道草」が。
 
ジュネチック
 
ジュネチック
 
滞在制作期間、伊計島まで通う途中に道草をしながら描いたという風景画。
 
ジュネチック
 
ジュネチック
 
伊計島の形に切り取った小さな黒板は、来場者が書き込んでいく参加型の作品だ。
 
ジュネチック
 
黒板に必ずついていたチョーク入れの写真もある。
その画像をよく見ると、チョークに紛れて乾電池が入っていて、思わず笑い声が出る。
そうそう、チョークの引き出しって、なんか訳の分からないものが入っていたりしたんだよね。と、一気に学生時代に戻ったような懐かしさで胸がいっぱいになる。
 
仲原遺跡の写真をマグネットにしたパズルなどもあり、気軽に手を触れて体感できるスペースとなっている。
 
 
そして、中学生が使用していた教室エリアには、佐藤大地さんの「君の知っている人はみんな いつか 死ぬ」。
 
ジュネチック
 
タイトルだけ聞くととても重たくて悲しい印象ではあるが、展示されている作品にそんな暗さはない。
 
ジュネチック
 
伊計島の同じ場所から日を変えて描いた風景が何枚も飾られている。
 
ジュネチック
 
あまり大きくないかわいらしいサイズの作品たちから、晴れの日・曇りの日・雨の日と、天気は変わりつつも淡々と流れる時間を感じる。
 
ジュネチック
 
さらに黒板には、“ Do you realize ”から始まるロックバンド「フレイミング・リップス」の詩の引用が。
確かに日々を生きることに精いっぱいで、大切なことって改めてこう問いかけられないとおざなりにしてしまうよね、と自戒の念に駆られる。
“ ha-piness ”という風に、大切な単語はあえて一字伏せられていたのがとても印象的。
 
ジュネチック
 
現代アート展と聞いて少し身構えて会場を訪れたのだが、実際に様々な形の作品を眺めていくうちに、「時間や記憶をジュネする」という今回のテーマをひしひしと感じることが出来た。
テーマを意識して鑑賞する、という初めての体験で分かったこと。現代アートって意外と面白いさー!
皆さまもぜひ足を運んでみてはいかがでしょうか?
 
ジュネチック
『ジュネチック in 伊計島 滞在制作現代アート展』
■会期
2013年2月1日(金)〜2月11日(月・祝)
10:00〜18:00
■会場
旧伊計小中学校 2F
沖縄県うるま市与那城伊計224(駐車場:校舎前グラウンド)
■入場料 無料
■出展作家
石垣克子、児玉桂、児玉美咲、佐藤大地、平良亜弥、西真理
主催:NPO法人 琉・動・体(アーケイド、office BULAT)
助成:(公財)沖縄県文化振興会
後援:うるま市、株式会社 沖縄タイムス社、株式会社琉球新報社(五十音順)
■アクセス
那覇空港から車で
沖縄北ICから約40分
那覇IC→沖縄北IC経由で約1時間10分
■問い合わせ
ARCADE(アーケイド アートスペース&スタジオ)
098-989-7176
http://www.art-arcade.com/
 
文・モデル/富田杏理  1980年沖縄県生まれ。既婚、一児の母。慶応義塾大学総合政策部卒。大学在学中CanCamのモデルとして活動。大手広告代理店など勤務の後、三年前に故郷沖縄へ戻る。