クルミ舎 店主の“手”がつくりあげるくつろぎ空間。シンプルナチュラルな別世界カフェ

くるみ舎

 

くるみ舎

 

ここから見る雨はいいな、と思う。

 

シトシトと降り続く雨は、次々と大地に吸い込まれ、雨粒に濡れた緑は、艷やかで初々しい。絵本に出てくるような、空想を掻き立てる庭。ゆったりとしたソファに身を委ね、額縁のような大きな窓越しに庭を眺め、ぼうっとする。日常の煩雑さが、雨と一緒にすぅっと消えてなくなってしまいそう。

 

「ここで皆さん、思い思いに楽しんでくれています。カメラを持ってきて、一生懸命写真を撮ってくれたり、ずっと読書をして1人の時間を満喫したり。子供と来て、庭で一緒に走り回ったり、おばあ様を連れてきて、ずっと庭を眺めてる方もいらっしゃいますよ」

 

くるみ舎

 

くるみ舎

 

くるみ舎

 

みんながくつろげる空間を作りたかったと、クルミ舎店主、知念愛乃さんは言う。どんな過ごし方をしても、優しく受け止めてくれるカフェ。古いミシン、ドライにされた花々、優しい灯り、ゆったりと配置されたソファ… 。懐かしさをも感じさせる空間が、訪れる人に安心感を与える。

 

驚くのは、そのインテリアのほとんどを、愛乃さん自身の手で作りあげているということ。

 

「なんか人にお願いしたくないんです。自分で何でも作りたいんですよね。大きなテーブルは、元々あった自分の机に、杉板を張ってオイルステインを塗りました。カウンターの棚や床も、自分でトンカチ持ってカンカン作って、色も自分で塗りましたね」

 

 

くるみ舎

 

 

 

そのバイタリティーは、お母様の教育の賜物だ。「欲しいものがあれば、何でも自分で作りなさい」と言われて育ったという。

 

「母も、トンカチ持って家具とか作ってました。着せてもらっていた洋服も母の手作りでしたね。庭もレンガを敷き詰めたり、ハーブ植えたりとか。母がお手本だったんです。この間、『あなた、マネしてるでしょう?』って言われちゃうくらい(笑)」

 

愛乃さんも、小学生の頃から針と糸を持ってリカちゃんの洋服作りに勤しんだ。自分の手を使ってものを生み出す楽しさを、その頃からすでに知っていたのだ。

 

「手に職をつけたくて、高校は、首里高の染織デザイン科へ行こうって、小学生の頃から決めていましたね。自分でデザインをしたかったんです。実際に入学して、紅型をやってました。沖縄の古典柄に限らず、動物とか菊の花とか、好きなものを描いていましたね」

 

くるみ舎

チーズのセミフレッド。イタリア語でセミは半分、フレッドは冷たい。ケーキ半分、アイス半分みたいなデザート

 

 

くるみ舎

 

これまで好きなことだけをしてきたという愛乃さん。高校卒業後は、紅型を学びに工芸指導所へ通い、その後は花屋にも勤めた。花屋は、ブーケの作り方を学ぶためだったそうだが、それも手に“職”を付けたことになる。将来カフェを営む時のためにと、やりたいことを仕事を通して学び、できることをコツコツと増やしてきた。

 

「お店にこれだけのスペースがあったら、自分の好きなことを全部できる。ご飯も出したいし、おやつやドリンクも充実させたい。庭いじりもしたいですしね。いずれは、自分の作った紅型を置きたいし、ここで花屋さんもやりたいです。どれかだけじゃなく、全部をまとめたのがいいんです」

 

愛乃さんは、少々欲張り屋さんなのだ。

 

自家製スパイスジンジャーエール

 

苺と蜂蜜のラッシー

 

結婚して主婦業をするようになってからは、カレーを作ることにハマった。レシピ本を片手に、ひたすら作り続ける日々。店で評判のカレーも、ルウに頼ることなく、愛乃さんの手でスパイスから作られる。

 

「スパイスは10種類くらい使っているかな。でもスパイスだけだと、どうしてもコクが足りないんですよね。ルウとか粉を入れたくなっちゃうんですけど、代わりに牛乳や生クリームを入れています。あまり煮込みすぎるとスパイスの香りが飛んでしまうので、ぱっと1時間で作っちゃいますね」

 

くるみ舎

 

スパイスチキンカレーのセット

 

バターチキンカレーのセット

 

 

鶏肉は柔らかく、ほろほろと口の中でほどける。聞けば、作って寝かせた後に1晩は冷凍させる。そうすることで、肉の繊維が崩れ、長時間煮込んだようなほろほろの肉になる。スパイスの複雑な香り高さと、肉の柔らかさが、しっかりと両立しているのだ。

 

ただ、カレー専門店のカレーとは一味違うと感じる。スパイスの効いた本格的な味だが、お母さんのカレーのような優しい味もする。それは、愛乃さんが愛情を込めて手作りをしているから。手を通して料理に愛情を込める。そんな心得も、愛乃さんはお母様から受け継いでいるのかもしれない。

 

くるみ舎

 

くるみ舎

 

「手作りのものって、やっぱり心がこもっているから」

 

愛乃さんが、手作りのものを好む理由だ。彼女の手で作られたものに溢れるクルミ舎は、ほっと安心できる温かみがある。店内でも庭でも、そこにただ佇んでいる一つひとつのものに、優しさが宿っているような気がする。初めて訪れる人でも、しっくりとくつろげるのは、愛乃さんの心のこもった空間だからだ。

 

文/田中えり(編集部)

写真/金城夕奈(編集部)

 

 

クルミ舎
北中城村渡口1871-1
098-935-5400
11:00〜16:00
close 日・祝
http://kurumisha.ti-da.net