本格炭火炙り沖縄そば 島豚家 どんぶりをまたぐ炙り島豚。特別な日に食べたい、ごちそう沖縄そば。

島豚家

 

「沖縄そばの原形に戻りたいんです。沖縄そばって昔に遡ると宮廷料理だったんですよね。沖縄の食材を使った沖縄そばは、首里城の偉い人とか中国から来た人をもてなす、超高級料理だったんですよ」

 

沖縄そばのイメージといえば、早くて安くて美味しい、そんなファストフード的なものを抱いてる人が大半ではないだろうか。でも本部町にある沖縄そばの店 島豚家オーナーの、金子亮さんの話は、そのイメージを覆す。

 

「俺は沖縄そばってごちそうだと思ってるんです。島にある食材を使った最高の料理。言ってみたら、特別の記念日とか、自分へのご褒美に食べに行くもの。お客さんに言われたんですけど、一杯のそばだけど、日本料理のフルコースを食べてる感じだって。実際僕も、島豚料理だと思ってます。汁物があって、前菜の味玉とかかまぼこがあって、メインのお肉、シメの麺がある、みたいなね」

 

特別な日の食べ物、ごちそうだから、妥協することなくとことん味を追求する。

 

「1000円で食べられる最高のものを出したい。お金持ちでも普通の人でも、1000円だったら出せる金額じゃないですか。1000円でここに来たら満足できる、そういうものを作りたいなって。東京でも1000円以上するラーメンって普通ですけど、東京だと家賃とか経費がかさむでしょ。一杯にかけられる値段が違うんですよ。東京だとできない、沖縄だからできた味だと思ってます」

 

島豚家

炙り本ソーキそば

 

金子さんの思いが最も強く現れているのは、看板メニュー、特製炙り島豚そばのどんぶりからはみ出ている三枚肉ではないだろうか。

 

「僕、ずっと和食の料理人をやってきたんです。中華料理とか洋食は足し算なんですよ。香辛料とかを足して臭みを消すんです。けど日本料理は引き算。臭いのあるものは手間暇かけて徹底的に引いて、いいものだけを残すんです」

 

炙り島豚も、日本料理の手法で臭いを徹底的に抜き、仕込みだけに3日をかける。

 

「この三枚肉、130グラムですけど、生肉の状態だと200グラム使ってるんです。70グラム分の脂を抜いてるんですよ。だから脂身なんですけど、脂っぽくないでしょ。カロリーももちろん減ってます」

 

島豚家

 

手間暇かけて丁寧に臭みと脂を抜いたあと、味付けのために煮るが、調理はそこで終わらない。最後は、炭火で炙るのだ。タレを刷毛で塗りながら。

 

「炭火で焼くのはやっぱり香りですよね。遠赤外線なので、ガスとか電気とは違う。バーナーで焼く方法もあるんですけど、それでは焦げ目、焼き目をつけるだけ。炭火だと肉の脂が炭に落ちて、その煙でまた肉を炙る。最後の脂をまた肉に戻す。スモークされてる状態ですよね。そこが炭火の最大の特徴ですね」

 

その三枚肉の柔らかさは、箸でいとも簡単に切れてしまうほど。

 

「ボリュームや見た目のインパクトだけでなく、食べても『えっ』って驚いてほしいんです。『すげえすげえ』って楽しんでもらいたいですね。普通三枚肉って、切ったものが2,3枚入ってるでしょ。あれを切らずに繋げて出して、あえて箸で切らせたい(笑)。歯もいらない、唇で切れるくらいでしょ」

 

金子さんのこだわりは、もちろん麺にも。店の入り口近くに製麺室があり、金子さん自ら麺を打つ。

 

「一晩寝かせた方がいいので、麺は前日に打つんです。日本そばは打ちたてがいいんですけどね。沖縄そばは、小麦粉100パーセントで、あとは塩と、昔は木灰ですけど、かんすい。言ってみたらラーメンと同じ材料なんですよ。沖縄そばって、たどっていくと100年くらい前の明治時代に、中国人のコックを沖縄に連れてきて始まったものなんです。おそらく沖縄の食材を使った、ラーメンに近いものだったはず。昔は生麺だし、こういう形が原形じゃないかと思うんです。うちも生麺なんで、ラーメンっぽいって言われるんですけど、それでいいと思ってるんです。原形に近くしたかったんです」

 

金子さんが原形の沖縄そばに近づけたかったのには理由がある。最近の沖縄そばの多くは進化でなく退化していると感じるからだ。

 

「昔は宮廷料理で、沖縄にある材料で手間暇かけて最高のものを作っていたと思うんですよね。でも最近の沖縄そば屋は、だしをちゃんと取らなかったり、外国産の豚肉を使ってるところが多いでしょ。どんどん安いものの寄せ集めになって、手抜きをしていく。悪い方へいってしまった。それに最近、若い人はあんまり沖縄そばを食べなくなったって言うじゃないですか。ラーメンのほうが美味しいって。本当の美味しい沖縄そばを食べてないからだと思うんですよね。だからこそ沖縄の食材を使った、本物の沖縄そばを出したかったんです」

 

島豚家

 

島豚家

炙りあぐーつけ麺。麺にはとろとろ軟骨、つけダレには骨付きソーキが入り、ボリューム満点

 

昔ながらの製法にこだわって、生麺は、オーダーが入ってから茹で始める。茹でたてを提供するのだ。あらかじめ茹でておいて油をコーティングさせるやり方はしない。

 

「油をコーティングするのは、酸化しないように、くっつかないようにって意味でやってるんです。あれは冷蔵庫がない時代の知恵で、常温で流通させるためにそういう風に変わってきちゃったんですよね。戦後生まれの人は、茹でておいて油をコーティングさせるのが昔からの味って思うんでしょうけど、もっと昔は違ったんですよ。うちは油をコーティングさせない分ヘルシーでもありますね」

 

島豚家

大きめにカットされた具がたっぷり入った、こだわりあぐーじゅーしー

 

メニューには、「ご注文いただいてから茹でますので、少々時間がかかります」との注意書きが。

 

「生麺は5分茹でます。前は7分かかってたんですけど、軟水に変えたんで茹で時間が短くなったんです。沖縄の硬水のままよりも、軟水にしたほうがスープも美味しくなるから。だから業務用の軟水器、高いのを入れたんですよ〜(笑)」

 

島豚家

 

心血注いだスープは、美しく澄んでいて、カツオの香り高さが際立つ。

 

「本部はカツオの町なんで、カツオをたっぷり使ってます。でもカツオだけだと単調な味になってしまうんで、オーケストラじゃないですけど、色んな味を重ねますね。あぐーや、やんばる地鶏、島野菜など、15種類くらい使ってます。あぐーとやんばる地鶏の動物系のだしは前日にとるんですよ。一晩寝かすと脂が固まるので、それを丁寧に取り除いて。魚介系は香りが命なので、当日に取りますね。味付けには醤油は一切使わず、本部のあっちゃんの塩を使います。食材はほとんど地元のものですね。地元のものを使って最高の味を作りたかったんで」

 

島豚家

 

金子さんは16歳から料理一筋。これまで東京、北海道、オーストラリアやハワイの一流店で、寿司やフグ、はも、すっぽん、手打ちうどんに十割そば、地鶏地魚の炭火炙り焼など、あらゆる技術を身につけ腕を磨いてきた。もう調理の仕方がわからないものはないと言うほどだ。だからこそ金子さんの話は、プロの料理人としての誇りや自信をそこかしこに感じさせる。

 

「今、この島に王様みたいな人がいたとしたら、その人に出しても恥ずかしくないものを作ってるって自負してます。『今、この島のものを使って、とにかくうまいものを作れる者はいないか』って王様が言ったら、俺は手を挙げられる自信がありますね。『はいっ! 私がやります』って(笑)」

 

世が世なら、王様が食べたかもしれない沖縄そば。そんな贅沢なそばの炙り島豚は、肉自体の旨味と炭火の香ばしさがたまらなく、麺は食べたことがないほどにツルツルでシコシコだ。香り高く深みのあるスープには、炙り島豚の旨味や香ばしさがどんどん滲みでて味が変化していく。食べ進めるごとに、折り重なった深みを感じさせるのだ。

 

地元の最高の材料で作る、最高の沖縄そば。

 

このそばを食した王は、スープを一滴残らず飲み干して、満足そうな笑みを浮かべるに違いない。

 

文/田中 えり(編集部)

写真/青木 舞子(編集部)

 


本格炭火炙り沖縄そば 島豚家
本部町字東500-4
0980-47-7222
11:00~17:00(売り切れ次第終了)
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