ESTINATE HOTEL(エスティネートホテル) ゲストルームはミニマルに。ラウンジにたくさんの人が集まる交流型ホテル

エスティネートホテル

 

エスティネートホテル

 

「ただ『交流してくださいね!』と言っても難しいので、私たちで色々仕掛けて、コミュニケーションが生まれやすい場を作っています。このラウンジには黒ひげ危機一髪など、ゲームも置いてるんですけど、先日は台湾からの学生グループに、別の家族連れで来てたお子さんが混じって、それで大盛り上がりされてました。1本1本刀を刺すたびにワーワーって初対面と思えないノリで。こういう光景を、私たちは見たいんですよね」

 

エスティネートホテル アシスタントマネージャーの濱田佳菜さんが言う。ホテル1階のラウンジには多国籍な人々が集まってくる。陽気に盛り上がる欧米からのグループもいれば、スタッフと親密に話しこむアジア系おひとり様もいて、うちなー女子会も開かれており、どこからも楽しげな声があがる。立地や外観から、よくある静謐なビジネスホテルを想像して入るといささか面喰らうほどだ。

 

エスティネートホテル

 

ESTINATE HOTEL

 

エスティネートホテル

 

「ここ那覇市松山は国道58号やゆいレール美栄橋駅、とまりんが近くて、アクセスに恵まれた場所なので、ビジネスホテルは周辺にもたくさんあります。こちらも宿泊料金やシステムはビジネスホテルと変わらない設定ですが、何が違うかといえば、交流型ホテルだということですね。ゲストはもちろん、ローカルの方々やスタッフをも巻き込んだコミュニケーションを楽しめるのが特長です。ただ身体を休めるだけでサヨウナラというホテルでは、後発隊の私たちがわざわざホテルを始める意味はないので」

 

エスティネートホテル

 

エスティネートホテル

 

エスティネートホテル

 

どこか異国を思わせるシックなデザイナーズホテルの空間だが、まるでゲストハウスのように人と人との距離が近い。濱田さんたちが意識したのは、誰にでもオープンで親しみやすい空間であること。

 

「構造的なことからも気を配りました。こちらは以前ビジネスホテルだった建物をリノベーションしてるんですよ。デザイナーさんにはスタイリッシュで、ラウンジにたくさんの人が集まれるようなデザインをとお願いしました。ゲストルームも極力ミニマルに作っています。こちらもなるべくは1階へ降りてきて、ラウンジで過ごしていただけるようにという想いからですね。それに普通のホテルであれば、1階はロビーで、レセプションがあって、朝食を取るレストランが併設して…という造りが多いのですが、こちらではレセプションとバーカウンターとの境目を無くすことで、かしこまり過ぎず、ゲスト以外の方にも気軽に立ち寄っていただけるようにしてあります」

 

エスティネートホテル

 

エスティネートホテル

 

撮影/ESTINATE HOTEL

 

宿泊客だけでなく、地元の人々をも多く吸い寄せるラウンジ。居心地良い空間で提供される沖縄食材を上手く取りこんだフードやドリンクの魅力がそうさせている。

 

「ローカルの方にも、こちら単体でカフェやレストランとして使っていただけるぐらいに、フードやドリンクを幅広く揃えました。沖縄名産の素材をミックスした、意外性のあるメニューも多いですね。軟骨ソーキを使った『沖縄ラグーパスタ』は塩味のスープなので、ちょっと沖縄そばに寄った食感ですし、『スーチカのカルボナーラ』も面白い味ですよ。一見、普通に見える『ボロネーゼ』にも、実は隠し味にあんだんすを使ってるんですが、こちらはローカルの方が、『え、あんだんすー入ってる? 馴染んでて気づかないけど!』って驚かれるぐらい、しっくり仕上がってます。海外からのゲストはもう全てが物珍しいらしく、『これ何? 何が入ってる?』って初めは質問たくさんされるんですが、一度召し上がると『美味しいね! 明日は外で食べようと思ってたけど、明日もここ来る』と喜ばれたり…。でも沖縄名産のものというのが絶対なわけではなくて、流行りのドーム型のパンケーキもランチ、ディナー問わず人気ありますし、ビーガンの方にいいビーガンランチもご用意してます。最近はローカルの方の結婚式二次会や模合のご予約も増えて、食に力を入れてきた成果が見えてきて喜んでいるところです」

 

また、季節や週ごとに催されるイベントも、人々の交流のきっかけに一役買っている。

 

「毎週木曜はピザパーティがあるんです。ゲストの方だけでなく、どなた様も無料でピザを召し上がっていただけます。スクリーンに映像も流して、皆さんで眺めてワイワイする、美味しくて楽しいイベントですね。こちらは2015年8月にオープンしたばかりで、まだ季節が一巡していないので季節のイベントは計画中のものも多いですが、お正月のお餅付きパーティは海外からのゲストに大好評でした。ローカルの方から『イベントがあると初めてでも来やすいよ』という声もよく頂くので、今後もどんどん増やしていくつもりです」

 

ESTINATE HOTEL

 

ESTINATE HOTEL

 

濱田さんたちの願い通り、ラウンジでは、日々さまざまな交流が生まれている。

 

「こちらでゲスト同士が意気投合して、『花火してくるねー』とか『北部まで一緒に観光行くことになって』ってお出かけされたりとか、ロングステイのゲストとスタッフが親しくなって、砂辺のビーチをご案内したこともありました。『出張で来たんですが、外国の人と英語で話せて面白かったです』とアンケートに書いてくださった方もいらっしゃいましたね。ローカルの方も、松山で飲む時の2軒目、3軒目として利用してくださったりするのですが、ローカルの方がゲストに、沖縄グルメ情報をアドバイスしていることもあって…。そういえば、私たちも予想してなかった交流もあります。沖縄は空手が有名ですよね。それでこちらにも世界各地の空手家の方たちが割とコンスタントにいらっしゃるんですが、やっぱり相通じるものがあるのか、そういう方々は一瞬で打ち解けていらっしゃいます(笑)」

 

エスティネートホテル

 

エスティネートホテル

 

人と人をつなげること、それは濱田さんたちが得意とすること。実は濱田さんたちの会社は、以前から出会いの場づくりを積極的に行なってきた。

 

「私たちはソーシャルアパートメント事業をメインに据えて動いてきた会社で、今年で12年目になります。ソーシャルアパートメントというのは、シェアハウスよりももっと個室のプライバシーをしっかり確保した上で、ラウンジやワーキングスペースだったりの共用スペースを設けて、コミュニティを作る居住空間のことですね。こういう形式のアパートメントが今35棟ほどあります。それを通じて、人と人との距離感やきっかけづくりなどが、ある程度掴めてきたので今回はアパートメントでなく、ホテルでの交流体験を…と考えてみたわけです。ただ住む、ただ泊まるだけでなく、拡げるといったことに重きを置いているのですが、ホテルでは交流するうちに、『話聞いたら面白そうだし、そこも足伸ばそう』とか『一緒に離島めぐりしようかな』とか、予想外の面白さが出てくるといいなと思うんですよ。私たちのサイトの”旅は不完全なほど面白い”という言葉はそういう意図からきてます」

 

エスティネートホテル

 

エスティネートホテル

 

ラウンジ スタッフの森田美保さんも言葉を足す。

 

「アパートにしろホテルにしろ、普通に生活していたら出会えない人と話せるのがいいですよね。聞けない話が聞けたりとか、自分と違う生き方をしてる人がいるって分かるだけでも大きいと思うんです。それがこの先ヒントになったり、ヒントまでいかなくても励まされたり、元気出ることもあるじゃないですか。私たちはどう動けばお客様が楽しんでくださるかを常に考える立場ですけど、私たちもお客さんとの交流がすごく楽しいんですよ」

 

ゲスト、ローカル、スタッフの交流が大きな化学反応を引き起こす。ホテルという枠を超えて、あらゆるひとを引き寄せる磁場として、エスティネートホテルはある。この磁力はこの先もっともっと強くなる。濱田さんが言う。

 

「旅慣れたバックパッカーの方やロングステイの方は別ですが、日本人のゲストはやっぱりシャイな部分があるのは否めませんね。でもラウンジでは、あるゲストは韓国語でずーっと通してるけど、それに返ってきてるのは全て英語だってこともよくある光景なんですよ。お互い『なんとなく分かるよね?』『多分こういうことでしょ?』みたいな。何か喋らなくちゃ!と気負う必要は全然なくて、ただ、この外国に来たみたいな空気感に浸るだけでも面白いと思います。これからも楽しいイベントを企画したり、美味しいメニューを増やしたり、いろんな仕掛けを考えていきます」

 

写真/金城夕奈

 

ESTINATE HOTEL
ESTINATE HOTEL(エスティネートホテル)
7:00~11:00 MORNING
11:30~15:00 LUNCH
15:00~18:00 CAFE
18:00~23:00 DINNER
23:00~26:00 BAR
那覇市松山2-3-11
098-943-4900
http://www.estinate.com