待ち合わせ場所は公設市場前。
食材の買い出しから同行してくれるコースのある料理教室、
「yonner food(よんなーフード)」。
まずは市場内のベンチに座り、
買物リストの確認と、
効率よく買物を終わらせるための作戦会議。
「お肉は重いから買うのは一番最後。
まずは乾物からね。」
料理教室のコースから「たっぷりよんなーコース」を選択すれば、
メニューは生徒の相談に応じてくれる。
本土から沖縄の長男に嫁いだ生徒さんの希望で、
今回のメニューは「重箱料理」。
「子どもの時から通ってるからね。」
と、市場の常連である先生お勧めの店を教えてくれる。
「重箱料理に使うなら、昆布はこの量で十分。」
レシピだけではわからない、買い方のポイントも伝授。
「昔から味噌はここで買ってるの。こんにゃくも一緒に買いましょう」
「種類もこんなにたくさんあるんですね〜。
お味噌、今度買ってみます!」
野菜類を購入し、公設市場へ戻る。
「最近は内地から習いにいらっしゃる方がすごく多いのよ。
沖縄の料理が長寿食と言われるのはなぜか、
その理由を知りたいという人が多くて。
沖縄の人にとってはあまりに当たり前すぎるのかもしれないわね。
でも、うちなんちゅで家族みんな順番に習いに来たこともあったわよ。
まず奥さん、次が娘さん、最後にご主人!
『今年の重箱は僕が作るから』
って、ある年はご主人が作られたみたい。素敵よね。」
家族の食の歴史にまで、深くコミットしている教室だ。
「天ぷらに使う白身魚を買いましょう。」
「女性の四本指分の幅が、重箱のひと区切りと同じ約7cmなの。」
「あらかじめ切って頂いたらすごくラクですね。
それに綺麗!」
と、生徒さん。
迷路のような市場内を、慣れた足取りでスタスタと進むかずみ先生。
「次はお豆腐とかまぼこね。」
「あら、先生いらっしゃい。」
「かまぼこに色を塗っているところ初めて見ました!
食紅ですか?すごい、感動!写真撮ろ~。」
「できたてのお豆腐、アチコーコーよ~。」
島豆腐は本土の豆腐よりも含水率が低く、どっしり重厚感がある。
「重箱用の厚揚げにするんです。」
「じゃあ、これくらいで十分だね。」
必要な量だけ購入できるのもありがたい。
「あなた長男嫁なの?
伝統料理を覚えられて上等さぁ~。
私も長男嫁。大変という人もいるけど楽しいのよ。
頑張ってね!」
お金を収受して終わりではなく、
会話も生まれるのが市場の醍醐味。
「最後にお肉屋さんね。」
「こちらのお肉、本当においしいですよね。
先生に教えて頂いて以来、よく買いに来てるんです。」
こちらでもやはり重箱料理に適した部位を、
調理しやすい幅に切ってくれる。
「内地から嫁いできたの?
重箱料理を習うなんて偉いね〜。」
食材や店の選び方、買い方、適量を学びながら、
買物と会話をたっぷり楽しんだ生徒さん、
「あっという間に時間が経った感じ。
すごい充実、次回はちゃんと一人で買えそう。」
と、満面の笑み。
かごいっぱいの食材を手に、教室へ移動する。
広々とした教室に入ると、
部屋の一角に置かれた岡持ちのような箱に視線が釘付けに。
「これが噂の嘉陽家の重箱ですか?
歴史を感じますね、立派~!」
リビングで一服しながら料理の手順を確認し、
「じゃあ、早速作りましょう!」
先生と生徒、たった2名で重箱料理。
その手際の良さと手間を惜しまない丁寧な調理法に感動。
そんな調理の様子は前編でご覧頂けます。
一昔前まで、うちなんちゅの買物シーンとして欠かせなかった市場。
今では、その真の魅力を知らないまま過ごしているうちなんちゅも多いのでは。
観光スポットとしてではなく、普段の生活の中で市場を活用している「市場マスター」でもある先生にかかると、
市場だからこそ得られるメリットの多さに驚き、
そして、
その魅力にすっかり取り憑かれてしまうのだ。
写真・文 中井 雅代
yonner food(よんなーフード)嘉陽かずみ料理教室303
*市場での買物を含むレッスンだけでなく、
教室での毎月の定期レッスンもあり、
重箱料理に限らず様々な琉球料理を教えています。
詳しくはホームページ(http://www.yonnerfood.jp)をご覧下さい。
ブログ:http://www.yonnerfood.jp/blog.html