リン・ティルマン・著 晶文社 ¥2,500(税別)/OMAR BOOKS
― 小さな書店で生まれるもの ―
本屋って実際やってみてどうですか?と、仕事柄聞かれることが多い。
大抵、楽しいけれど大変ですよ、とありきたりな事しか答えられないけれど、もっと具体的に知りたい方にはこの本を読むことをお薦めします。
今回ご紹介する本はその名も『ブックストア』。
「ブックス・アンド・カンパニー」というニューヨークに実在した独立系書店の軌跡を追った物語。
女性店主のジャネット・ワトソンと店員、常連客、作家や著名人たちの言葉をもとに構成されたノンフィクションだ。
友人のリビングルームのような家庭的な雰囲気と文学作品と詩に重点を置いた品揃えで地元民はもちろん作家たちにも愛されたこの本屋。
冒頭には作家ポール・オースター、序文にはウディ・アレンがこの本屋に言葉を寄せている(映画「世界中からアイ・ラブ・ユー」にこの本屋が出てくるそう)ことからも、ブックス・アンド・カンパニーがその街の人々にとって大切な場所だったことが分かる。
店の誕生から店の裏側まで20年の歴史を余すことなく綴った本書。
時代錯誤と言われながらもジャネットと店員の長年に渡る奮闘と個性的な客たちとの温かな交流が胸を打つ。
トルーマン・カポーティやマイケル・ジャクソン、スーザン・ソンタグなどの有名人のエピソードも面白いけれど、アメリカの書店業や出版業に関することがよく分かるのもこの本の魅力。
本が日本と違うシステムで作られていることやリーディング(本を出した作家は営業で自作を朗読して各地の書店をまわる)の様子も垣間見れる。
小さな書店の抱える問題や苦労がどこも同じなのだと共感するところも多くとても励まされた。
本に関わる仕事をする人たちに対する、大変な想いをしてなぜそこまでするのか、という問いへこの本が全て答えてくれる。
また一人の女性の人生記として読むことが出来るのもおすすめ。
この本を読んで、本屋というのは特別な空間だとつくづく思う。
特に本を愛する人にとって本屋は聖域のような場所なのは万国共通。
たくさんの本に囲まれた中に身を置くと何故か神聖な気持ちになる。
また一度お互いの好きな本について話をしたら秘密を共有した気持ちになるから不思議。
ブックス・アンド・カンパニーが愛されていたその大きな理由の一つは本を通して生まれていたその親密感だったに違いない。
それはその場所で出会う人々の過去も現在も、そして未来も含んでいるから。
ある一書店の物語。読み終わると今までとは本屋の見方がきっと変わるはずです。
OMAR BOOKS 川端明美
*OMAR BOOKSでは6月5日より「Oyaji展」を開催
眞榮田文子、高安イクミ、宜壽次美智による「おやじ」をテーマにしたグループ展。
立体、平面作品、グッズ販売。
sobelabo、フクロク亭によるおやじをテーマにしたお菓子の販売もあり。
期間:6月5日(火)〜6月17日(日・父の日)
場所:OMAR BOOKS
OPEN 14:00~20:00
http://www.facebook.com/events/390577954322061/
OMAR BOOKS(オマーブックス)
北中城村島袋309 1F tel.098-933-2585
open:14:00~20:00/close:月
駐車場有り
blog:http://omar.exblog.jp