写真 文 田原あゆみ
たおさんが着ているのは、ミナ ペルホネンの「kemuri」というテキスタイル名のついたワンピース。
じっと見ていると、小さな頃に見た白黒のアニメーションの中の蒸気機関車が吐き出す煙りに見えてきた。
しゅしゅぽっぽ
しゅしゅぽっぽ
白い煙りが次々に出て、もくもくとつながっている。
一つのまあるい煙りに次の煙りが重なって、次から次へ。
機関車も元気良く走ってゆく。
ものごとには始まりがあるように終わりがある。
連続する日常の中では、終わりの隣には始まりが待っている。
冬の隣に春が待っているように。
沖縄の一番寒い時に春の訪れを真っ先に伝えてくれる花、ピンクボール。
甘い蜜のような香りが、様々な生き物を誘う。
メジロたちは大喜びで一日中この木の枝で遊んでは、花の中にくちばしを差し込んでうっとりと囀る。
実家から小さな枝を一本もらって差し木したのがついこの間のようだけれど、すくすくと茂って、
沖縄の景色が灰色の空におおわれるこの季節に、庭を桃色に染めてくれる。
ワンピースのchoucho達が飛び出せたなら、きっと花から花へ楽しく飛び回ることだろう。
8年前に引っ越してきた頃は、南側の隅に黒木の木が一本植えられていただけのこの庭。
いまでは、ピンクボール・リュウキュウバライチゴ・パンの木・ダチュラ・シマトネリコ・クチナシ・コブミカン・メイフラワー・ジョウゼツランと、たくさんの植物が共生している。
庭の木たちもいつの間にか成長した。
たくさんの花を咲かせている。
苗木は育ち、毛虫はちょうちょに、はいはいしていた子はいつかは歩き出して家を出る。
外の世界はどんなだろう?
手前の可憐な白い花達はリュウキュウバライチゴ。
こちらも実家から小さな一苗を移植したら、刺だらけの枝をもりもりと庭中に広げてゆくので管理するのに一汗二汗。
あまりに刺が痛いので、全部抜いてしまおうかと考えたことがある。
けれどこの時期、満開の白い花々の可憐さと、花から花へミツバチたちがブンブンと飛び回っている羽音を耳にして、花粉だらけの彼らの姿を見ていたらそんな気は全く失せてしまった。
「dear」という名前のワンピース。
花びらと花弁を表したような刺繍と、コットンコーデュロイの黄色い生地からその時のミツバチたちを思い出す。
産毛にかかった黄色い花粉と、両足に作った花粉団子の愛らしさ。
ブンブンと飛び回る生命力。
春の喜びのようなワンピース。
ミナ ペルホネンの「always」というデニムのシリーズの一型。
着古したような素材感は柔らかくて、ウエストとヒップ部分にはマーメイドの鱗のような刺繍が浮き上がってくる。
ブーツを履いたらすぐにでも、わくわくとときめく胸に耳を傾けてちょっとした冒険に出かけられそうだ。
世の中にたくさんデニムはあるけれど、こんなにうきうきさせるようなユニークなデニムのシリーズはミナ ペルホネンだからこそ。
こちらは薄い方の色の同型デニム。
ポケットの位置がユニークで楽しい。
腰の当たりに浮き出ている模様が、デニム裏面に施されている人魚の鱗のような刺繍です。
着るほどに個性が育つ作りは、楽しみも育つかも。
軽やかな気持ちで、日常の冒険に踏み出したくなるそんなデニムを履いたたおさん。
インナーの色を変えて、髪を下ろすと全く違うニュアンスが生まれる。
彼女の季節も変化の時。
自分の意思で選んだ世界に繰り出す春はすぐそこまで来ています。
実家や家族のいる空間は居心地がいい。
さなぎを守る繭のようだ。
あまりにそこに居るのが当たり前で、外に飛び立ちたいという声は叫びになるまで流されてしまうこともしばしば。
けれど、もしかしたら、
繭の中の日溜まり色も居心地がいいけれど、外での経験はもっと多様な色に満ち溢れているのかもしれない。
飛び立てちょうちょたち
外の世界の花園へ。
今回はミナ ペルホネンのランドリーのシリーズのお洋服が入ってきたので、その写真を使って文を書きました。
私たち人間はいくつになっても何かしらの変化を求める生き物ではないだろうか。
わくわくにアンテナを張り出した好奇心と、心の奥の方から聴こえてくる声を道しるべにしていると日々は変化してゆく。
ある時は少しずつ。
けれどある日、長いスパンで振り返ってみると、その変化の大きさに驚くことがあるものだ。
時には思いもしなかったことが起こって大きく日常が変化することだってある。
星を読む人達がいうには、今年の春3月頃に大きな変化の兆しがあるそうだ。
私は星読みは出来ないけれど、私の日常はこの春にとても大きく変化するということを確信している。
小さかった女の子は育って、自分の道に踏み出そうとしている。
私は、家族の中での役割を脱ぎ捨てて、もう一度「わたし」という原点に戻りシンプルな目線で世界と関わろう。
寂しいな、という声も聴こえるし、うれしいな、わくわくするな、という声もする。
そんな冬の終わりの暮らしの中から、暮らしの中の旅日記「終わりは、はじまりの始まり」でした。
いくつになっても、年を重ねても季節が変わるようにごく自然に、私たちも変化の時を迎えるます。
まだいまは冬の終わりに、Shoka:で暖をとりながら互いの変化や四方山話に花を咲かせつつ、
訪れる方と一緒にお茶をいただきたいと思います。
暮らしを楽しむものとこと
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