リュドミラ・ウリツカヤ・著 新潮社 ¥1,680/OMAR BOOKS
2014年、年明け最初にご紹介したいのは、現代ロシアの人気女性作家による、ソーネチカという女性を中心としたある家族の物語。
良質な世界中の文学を紹介する新潮クレストブックスのシリーズの中の一冊です。
ストーリーは、本の虫で夢見がちだったソーネチカが芸術家ロベルトと知り合って結婚し、そのあとに起こる家族の歴史を綴ったもの。
娘も生まれ、慎ましいながらも自分はなんて幸福なんだろう、とソーネチカ毎日を愛惜しむように暮らしている。
そんな中、夫の秘密を知った彼女は・・・・・・。
彼女は家族の中に起きたある出来事をごく普通のこととして素直に受け入れる。これもまた一つの「幸福」のかたちとして。
こういう女性はいるんだろうか。読む人の中に静かな驚きの波が広がるだろう。心の澄んだ、という形容はこのソーネチカのような人のためにあるようだ。
ソーネチカのような人がいると思いたい。
希望を込めてそう思う。
この小説はまた「生活」というものについて書いているともいえる。ソヴィエト政権下のロシアという、遠い国のある家族の話に共感できるのは、人の営みは根本のところでは皆同じだから。
何が私たちに「幸福」をもたらすか。
きっと読む人は自然とそのことについて考えることになる。
雪深い国での、大切な人たちとの暖かな心の交流を描いた良質な小説。年の初め、味わい深い翻訳中篇をおすすめします。
OMAR BOOKS 川端明美
OMAR BOOKS(オマーブックス)
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