
木下晋也・著 リトルモア ¥1,260/OMAR BOOKS
― こんな夜、あるよね ―
4月も半ばを過ぎた。
新しいことづくめで知らず知らず気を張って過ごしている人も多いのでは?
そんなとき、ほっと肩の力が抜けるような一冊を今回はご紹介します。
人気漫画家・木下晋也さんの『真夜中百景1』はシンプルな8コママンガ。
真夜中の、私たちの身近によくある風景を切り取ったものが100篇収められている。
こんな夜、こんなこと(人)ある(いる)よね~とぷっと吹き出すことが何度も。
いつでも中断できるように軽い気持ちで読み始めたら、
次はどんなんだろうと気になってあっという間に読み終えてしまった。
例えばこんなシチュエーション(想像してみてください)。
「今夜は一人で、のんびりビールでも飲みながら
DVDでも観て過ごそうとお風呂上りくつろいでいたら、
友達から電話があり今から遊びにうちに来ると言われる。
しょうがないなあ、2人で楽しむかと
友人のビールを用意していたらチャイムが鳴る。
扉を開けると目の前には近所に住む友人たちが勢ぞろい」
(本編にこの場面はないです)
それを木下マンガでは夜空を背景に短いセリフだけが配される。
「いくら近いからって全員でこなくてよくない?」
たったこの一言で苦笑いする主人公のその状況や絵が目に浮かぶ。
他にも真夜中の美術館の警備員の奇行、
タクシー運転手のよくある話、
子供の寝静まった夫婦の会話が笑いを誘う。
その切り取り方の妙は読む人問わず楽しませてくれること間違いなし。
今この時間、みんながそれぞれの夜を過ごしている。
そう考えるとどこか安心してしまうのは私だけだろうか。
変わり映えしない、何千回、何万回を繰り返されるどこにでもあるような毎日。
この本はこのことをさりげなく、そして温かく肯定している。
残業や試験勉強で頭を使い過ぎてクールダウンしたいとき、
あるいは昼間につらいことがあった夜などにこの本を開いてほしい。
日中の疲れも沈んだ心も読みながらくすくす笑っているうちに
すっかり軽くなっていることに気付くと思う。
心の重石を取り除いてくれる真夜中の優しい物語。
もしかしたらあなたの夜もこの中に見つけることが出来るかもしれない。
OMAR BOOKS 川端明美![]()

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