『 星の歳時記 』ちょっと視線を上げて、遠い星の時間に思いを馳せる


石田五郎・著 筑摩書房  ¥650/OMAR BOOKS                  

 

七夕が終わったばかり。
例年悪天候で、天の川が見えないことが多い中で、今年はきれいな夜空が広がっていた。

 

以前に紹介した「立体で見る[星の本]」に続いて今回は、毎夜頭上に上がっている星々を短い文章で綴った石田五郎さんの著書をご紹介。

 

「天文台日記」が今だ根強い日記の著者によるこの「星の歳時記」。
昭和30年代に始まった朝日新聞での連載や科学雑誌「ニュートン」に連載されたものがコンパクトにまとめられている。

 

何ですか。まず時間の流れが違う。
この本の中に流れている時間には余裕のようなものがある。
あまりにも忙しい毎日を送っていると、いつしか自分の尺度で時間も計るようになる。でも時々こういう本に触れると、現実とはまた別の、それも比べようのないスケールの時間が流れているのを思い出す。

 

季節ごとに顔を変える星図を眺めながら、著者はギリシャ神話を始めとして、天体観測の自身の経験、天文の歴史など様々な角度から「星」について語る。
専門的な説明も多少出ては来るけれど、その語り口は平易で優しい。
挿しこまれるイラストも、手描き風のシンプルで少し懐かしい匂いがする。

 

アルビレオ、ケフェウス、スピカ、フォーマルハウト。
美しい響きを持つ星の名前が、次々と登場するその話に身を委ねているのがとても心地良い。

 

また星の話をしているところに、さりげなく歌や俳句、あるいは「智恵子抄」や鴎外が出てきたり、ギリシャ神話に歌舞伎の話をなぞらえたりするのが著者の文章の魅力。
関心が天文の分野に限らないところに親しみが持てる。
この本を読み終わるころにはちょっとした星博士に。

 

ちょっと視線を上げて、現実を離れもう一つの時間に思いを馳せる。
遠くで瞬く星を数えながら、暑い夏の夜をのんびりと過ごしてみるのもいいかもしれません。

 

先に紹介した『天文台日記』もおすすめです。

 

OMAR BOOKS 川端明美

 


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