『 シャガールと木の葉 』何度も手にして、言葉に触れる。詩集の楽しみ方、いろいろ。


谷川俊太郎・著 集英社 ¥1,700(税別)/OMAR BOOKS

 

詩集が真新しいのは味気ない。
手を付けずにきれいなまま本棚に納められたものより、何度も手に取られて表紙がよれて角が擦れた詩集の方が好ましい。
長い年月を経て風合いが増す器のように、詩集もそうやって個人に愛される。

 

今回ご紹介するのは、新聞、雑誌などに掲載された、詩人・谷川俊太郎さんの36編の詩を一冊にまとめた詩集。

 

まずこのタイトルの響きに惹かれて手にして以来、今でも度々ページを開く。
この本を好きなのは装丁によるところも大きい。
タイトルの並びや字体、表紙の地と文字に使われた色と、少しざらっとした紙の質感。
いくら眺めていても飽きない。
見るだけじゃなく、ときどき指でなぞったりもする。

 

また「目次」を読むのが好きだ。
「Larghetto」、「恋する男」「スヌーピー・ミレニアム」など、並んだ言葉を見てどんなことが書かれているのか読む前に想像する。
予想が外れるとがっかりするのではなく、意外であればあるほど逆に嬉しい。自分の知っている世界がひとまわり大きくなったような
気がするから。

 

表題作の「シャガールと木の葉」では「シャガール」と「木の葉」のかけ離れたこの二つが詩人の言葉の魔法によって結び付けられる。
そこに新しい世界が出来上がる。
それを目の当りにすることが出来るのも詩の楽しみ方の一つ。

 

それから戸外(庭や海辺などの自然に近い場所)で詩集を読むことは気持ちいいことだと大人になってから知った。
五感を刺激する場所で詩を読むと、不思議と言葉がすいすいと身体の中に入ってくる。
そしてその言葉に満たされた気持ちのままで、紙面から顔を上げると目に入る風景が生き生きとして見えて、頬を撫でていく風がいつもと違って感じられる。
心身のリフレッシュにも詩を読むことはとても効果的。

 

さらにいいのは声に出して読むこと。
そんなの恥ずかしい、なんて言わず、試しにやってみることをおすすめしたい。
詩人によって丁寧に紡がれた言葉であればなおさら気持ちいい。
そうしてみて分かるのは、日々出来るだけきれいな言葉を使ったほうが気持ちよく過ごせるということ。
好きな器を磨いては日常で使うように、何度も手にして、言葉にふれているうちにその人だけの色合いを持った詩集になる。
そんな詩集の楽しみ方もしてほしいと思うのです。

 

OMAR BOOKS 川端明美




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