『 MADELINE マドレーヌ 』いつかその列を離れ。12人の女の子たちが街を冒険する旅の絵本。


ルドウィッヒ・ベーベルマンス作 VIKING ¥1,112 (税別)/OMAR BOOKS

 

シスターのような女性に連れられて、12人の女の子が列を作って歩いていく後ろ姿。どこに向かっているのだろう、と気になって手に取ったこの絵本。ページを捲っていくと、いつのまにか、読者も女の子たちの列の後尾について歩いている気になってくる。

 

70年近くロングセラーを続けているこの『MADELINEマドレーヌ』シリーズ。今回ご紹介するのは、その一作目にあたる。タイトルの”マドレーヌ”はその列の中でも一番小さな女の子の名前。日本では『げんきなマドレーヌ(邦題)』と訳され広く知られている。

 

ストーリーは、蔦のからまるパリの寄宿舎に住むアメリカ生まれの女の子マドレーヌが、他の11人の女の子たちと寄宿舎の先生とともにヨーロッパ各地や他の地を冒険する物語。

 

この第一作目は、小さくても一番元気のあるマドレーヌが、盲腸になって皆と別れて入院してしまう、というもの。話はシンプルで、旅の絵本としても人気の高いシリーズ。他にも彼女たちが、ロンドンやローマ、アメリカなどを旅する作品がある。寄宿舎の中とパリの街の風景が対比するように描かれていて大人が読んでも目に楽しい。

 

作者はオーストリア生まれのルドウィッヒ・ベーメルマンス。彼はこの作品で「コールデット賞」という、アメリカでその年に出版された優れた絵本に贈られる賞を受賞している。

 

時折車に乗っていると、道沿いを先生に引率されて、小さな園児たちが手をつないで歩いているのを見かける。信号待ちで止まっているとその様子をついつい目で追ってしまう。何かに気をとられ列からはぐれそうになる子、大きく口を開けて隣に話かけている子、じっと前を見据えて黙って歩く子、前の子にちょっかいを出そうとして先生に止められる子。見ていて飽きない。いつからかその列を離れ、私たちは皆大人になっていく。そのことに一抹の寂しさを感じながら、またこの絵本を開けば、あの列を歩いていた小さな自分に束の間でも戻ることが出来る。あの幸福とも呼べる時間に。
洋書でもシンプルな文章で、大人も子どももきっと楽しめる絵本。
おすすめです。

OMAR BOOKS 川端明美




OMAR BOOKS(オマーブックス)
北中城村島袋309 1F tel.098-933-2585
open:14:00~20:00/close:月
駐車場有り
blog:http://omar.exblog.jp