『 間取りの手帖 remix 』間取りでこんなに笑えるなんて!

佐藤和歌子・著 ちくま文庫 525円/OMAR BOOKS 
 
― 想像力を刺激する一冊 ―
  
友人で、小さい頃新聞の折り込み広告が好きで、
特に住宅の間取り図が載っているチラシを何時間も飽きずに眺めていた、
という人がいた。
その話を聞いた時はへえ、変わってるね、だけで終わったのが
この本を読んだ今となってはその友人の気持ちが理解出来る。
 
今回紹介するのは『 間取りの手帖remix 』。
先に出た新書版が新しく文庫になって生まれ変わった本書。
  
本の中身はいたってシンプル。
1ページの中央に物件の間取りが配され、
その下にその間取りに対する著者のコメント(つぶやきだったり、部屋のネーミングだったり)が添えられている。
もう、こんなに笑える本だとは思いもしなかった!
 
著者の、その間取りを見たときの鋭いコメントが的確にその部屋を言い表す。
うまい!としかいいいようのないはまり具合。
例としてあげると、
「バラバラな生活」
「すれ違う生活」
「広っ。」
「長っ。」
「そんなところに窓はいらない」
「そんなところに仕切りはいらない」
など、どれもそれぞれの部屋の間取りを指して言っている言葉で、
本当にその図を見るとそうとしか言いようのないものばかり
(ここにその図を示せないのがもどかしい!)。
ひとりツッコミのような世界が繰り広げられる。
あまりの面白さにどんどんつられてページを捲ること間違いなし。
 
驚くのは明らかに変な間取りの多いこと。
部屋が20帖もないのにバルコニーが100帖もあるとか、
部屋の周囲が収納だらけとか、
キッチン、お風呂、トイレがまとまって部屋のちょうど真ん中にある、だとか。
 
この本にも書いてあるけれど、
生理的に身体にあまり良くなさそうな間取りもたくさんあって、
ふざけてますか?と聞きたくなるほど。
 
何より重要なのはこの本に登場する間取りは全て実在するということ。
こういう変な間取りに実際に住んでいる人がいるんだな、
と思いながら読んでいくとストーリーが浮かんで来てそれがまた面白い。
想像力をかなり刺激させられる。
 
環境が人を作ると言うけれど、
私たちが多くの時間を過ごす部屋の間取りも、
きっと少なからず私たちに影響を与えているということに気付かされた。
 
また合わせてコラムや対談(くるりの岸田繁さんなど)も収録されていてこちらもしっかりスパイスがきいている。
新書版よりコラムが増え、
構成もだいぶ変えられてパワーアップした感のある本書。
比べて読むのもぜひおすすめします!

OMAR BOOKS 川端明美




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