モーリス・センダック さく じんぐうてるお やく 冨山房
¥1,300/OMAR BOOKS
好きなものに囲まれた平穏な生活。多くの人がそんな生活に憧れる。
でも本当にそれが求めているもの? とちょっと考えてしまう絵本を今回はご紹介します。
絵本作家として絶大な人気を誇る、モーリス・センダックの淡い色合いをした表紙の小ぶりの絵本。
「はじめ、ジェニーには なにもかも そろっていました」という一文から始まる。
2かいにはまるいまくらや、ブラシがひとつに、あかいけいとのセーター1枚など、ジェニーに必要なものは全部あるのに、安全で快適な場所を離れて、何があるか分からない外へ出て行こうとする彼女。
持っていくのは「きんのとめがねがついた黒いかばん」だけ。
マザー・グースのうたをベースにしているこのお話。
文章もことばあそびのようで面白い。原著だと音の響きもきっといいのだろう。
禅問答のような、登場人物たちの会話がどこか滑稽で笑えるのに、モノクロの繊細な絵は独特で、出てくる赤ちゃんの顔も決して可愛いとはいえない。
むしろちょっと怖い(笑)。このアンバランスな組み合わせがまたこの絵本の魅力。
どうして出て行くのか聞かれたジェニーが返した言葉は、「たいくつだから。ここには ない ものが ほしいから。なにもかもそろっているよりも もっと いいこと きっと ある!」というもの。
そういうことって、大人になってしまった私たちにもきっと心当たりがある。
他人からみると、このままで十分じゃない、と言われそうな環境に身を置いていても、なんだか何かが足りない。その「何か」は分からないけれど。
ジェニーにとってのその「何か」とは「けいけん」。
経験を得るために足を一歩踏み出し、ブタのサンドウィッチマンやねこのぎゅうにゅうやさんなど、そのまま家に居たら出会わなかったものたちといろんな体験をしていく。
経験の中身がまた大事、と気付かせてくれるジェニーが最後に得たものとは?
大人が読むと子供と違う部分で、きっと心に響くところがあるはず。
表紙カバーを外すとまた素敵な一冊。しばらく絵本を読んだことがないという方にもぜひおすすめします。
OMAR BOOKS 川端明美
OMAR BOOKS(オマーブックス)
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