椰月美智子・著 双葉社 ¥630/OMAR BOOKS
つい最近、姪っ子に「ママのお姉さんなんだよね?」と確認された。
今まで長い時間過ごしていながら、それまでは私と妹(ママ)がどういう関係なのかぴんと来ていなかったらしい。私たちは名前で呼び合っているから、確かに小さな姪っ子にとっては分かりにくかったかもしれない。
自分の母親と私が 互いに友達同士のように親しく家を行き来して、いろんなことを話しているけれど友達ではない。でもそれ以上の存在であることは姪っ子にも分かっていた。
それでようやく、お兄ちゃんのいる姪っ子と同じように、母親にも姉がいるということが腑に落ちたようなのだ。頭だけではなく感覚としても。
今回取り上げる『るり姉』という小説を読んでいてそのことを思い出した。
物語は10代の三姉妹とその叔母である「るり姉」をめぐる連作短編集。
季節の移ろいとともに毎章、語り手が変わるこの小説。
油断していたら、途中からもう切な過ぎて胸が詰まって読めなくなってしまい、中断しながらどうにか読み終えた。
元アニオタで今は看護士の母親、生真面目な長女、ヤンキーの皮をかぶる次女、明るく素直な三女。
そしてその女だらけの中心にいつもいるのが、自由奔放なるり姉。
そこにるり姉の再婚相手も加わって、春ならイチゴ狩り、夏なら花火などと家族のささやかなイベントが、著者の優しい目線で描かれる。
読者はその登場人物たちを、こういう人いたな、とつい身近な人に重ねてしまうはず。
大人になってよく分かる。同じ屋根の下でたくさんの夜を過ごした家族でも、知らない一面を持っている。
いつものように夕食を食べていても、その昼間実は友達と大きなケンカをしたことや、初めて一人で遠出をして知らない町に内緒で行ったことも、話さない限り家族は何も知らない。
えっ、あのときそんなことがあったの?と今でも初めて知ることがあってびっくりする。
近いようでいて遠い不思議な共同体。
いいところも悪いところも全てみせて、ときにぶつかることがあっても、窮屈に感じることがあったとしても繋がっている。
嬉しいこと、悲しいことがいくつも訪れては過ぎ去っていく、その家族にしか分からない記憶を共有できることはなんて幸せだろう。
この小説はぜひラストまで必ず読んでほしい。読む、読まないで全く違うものになってしまうので。
読み終えると家族と過ごす何気ない毎日が愛おしくなる。
活字が苦手で普段は本を読まない、という人もきっとさらさらと読めるおすすめの一冊です。
OMAR BOOKS 川端明美
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