おきなわ共育(ともいく)ファンド/Egg Deli(エッグ デリ)お母さんの自立は、結果として子供にもプラスになる。


 
自分自身が産後働くことを考えたとき、
実際採用されるのは難しいだろうなと感じました。
それまで人事担当や面接官の仕事に携わった事もあったので、採用する側の気持ちもわかるんです。
 
だったら、子育て中の女性をサポートできて、
なおかつ自分が働ける場所を作ろうと思ってNPOを立ちあげました。
さらに、
産後のお母さんたちの就職先がない、それなら雇用の場を作ろう
ということでお弁当屋を作ることにしたんです。
 
弁当屋「Egg Deli(エッグデリ)」はジョブトレーニングの場なので、
長くても半年サイクルでスタッフが入れ替わります。
本格的に就職する前の「ならし就労」の職場です。
 

 

 
– – – 家に籠って家事と育児だけの日々、重度の鬱病に
 
私自身が苦労した経験が、今の仕事に繋がっています。
 
結婚を機に沖縄から神奈川に移住しました。
産後すぐにでも働きたかったけれど、それが許されない状況で。
沖縄には認可外保育園も沢山あるけれど、関東はそんなにないし金額も高かったんです。
ハローワークに相談に行くと「保育園を決めてからじゃないと就職できません」。
それで認可外保育園を探して行くと「就職先を決めてからじゃないと申し込みできないんですよ」と。
 
最初からフルタイムで働くのは厳しいから、
「パートで働いて認可外保育園に預けよう」
と考えていたのですが、
パートで頂くお給料より保育園代の方が高くなってしまう、
じゃあ一体何のために働くの?って。
 
そういうわけで神奈川にいる間は働けませんでした。
もともと働くことが大好きだったので、ストレスがたまってしまって。
家に籠って育児だけしていると、
人に求められていないというか、社会から孤立している感覚がすごくあって
漠然とした不安感に常時おそわれていて。
 
人との接触もない、結婚してから引っ越したので友達もいない、
毎日、公園と家とスーパーしか行く所がない。
公園デビューも苦労しましたし、話せる友達もいなくて、会話の相手は子供だけ。
主人も毎日帰宅が遅く、土日もいなかったり。
あとはネットの掲示板に書き込むしかない、という感じで、
結局、重度の鬱病を煩ってしまったんです。
 
自分の精神的な問題は、社会に出ることで解決できると私はわかっていたけれど、
私が外で働くことについての理解も得られなかったし、
実際、働かなくても経済的には問題なかったので「家にいたら良いじゃないか」と言われ。
それに加えて保育園の問題や他にも諸事情があり、離婚を決意しました。
二人の子供を連れて沖縄に帰り、仕事につくことにしたんです。
 

 
– – – 仕事が面白くてワーク・ライフバランスがめちゃくちゃに
 
専業主婦になる前は働いていたんですが、
ブランクが長かったので最初はすごく不安でした。
離婚当時、子供は3歳と5歳。
でも、働いていくうちに昔の感覚を取り戻してきて、
どんどん楽しくなってきたんですね。
そうやって働き続け、転職を重ね、管理職につくことができたんです。
 
役職をもらい、責任ある仕事をさせてもらうようになって、
ますます男性みたいに働き始めました。
 
当時のワーク・ライフバランスはめちゃくちゃ。
朝7時には家を出て、帰宅は日付を越えてから。
子ども達は前夫の両親に保育園へ迎えに行ってもらって、
寝てるところを私が迎えに行って。
 

 
– – – 難病にかかったことが働き方を見直すきっかけに
 
管理職になって3ヶ月経った頃、
働きすぎがたたって病気になり、入院してしまったんです。
 
これが「人食いバクテリア症」というすごく珍しい難病で、
筋肉を短時間で壊死させてしまう病気。
その病に左脚を冒されてしまったのですが、
短時間で病気が進行するものだから
気づいたら2回手術が終わってた、という感じでした。
 
1ヶ月間ICUにいたんですけど、病気のことでは一切悩みませんでした。
「どうしてこんな病気になっちゃったんだろう」とか
「自分が可哀想」とかは全く思わなかったんですけど、
とにかく、これまでのことを後悔しました。
 
仕事に没頭しすぎて何ヶ月も子供と遊んであげてなくて。
ぎゅっと抱きしめてあげることもなく、ただただ仕事だけをやっていた。
もう、後悔だらけで死ぬに死にきれないという気持ちでした。
鬱病になった時は自殺願望があって、毎日「死にたい、死にたい」と思ってたけど、
いざ病気になって死にかけたら、「絶対死にたくない!」って思いましたね。
また、仕事も途中で投げ出していたので、それも心配の種の1つでした。
 
珍しい病気だし、死に至るケースも多いのですが、
運良くこうして今も普通に生活できています。
脚を切断する話も出たし、「命は助からないだろう」とも言われていたのですが、
傷だらけですけど脚も残っています。
 
この入院が、働き方を見直すきっかけになりました。
 

 
– – – NPO法人で働き、自分も立ち上げることに
 
当時は介護関係の仕事に就いていて、
スタッフにケア方法を指導する立場だったのに、私がケアされる側になってしまって。
退院して二日後には職場復帰したんですけど、
車椅子とか松葉杖がないと歩けない状況だったんです。
すごく稀な病気で、病院の先生方にとっても初めてのケースなので予後もわからない。
そういうわけで介護関係の仕事を退職し、「難病支援センター」というNPO法人で働き始めました。
 
難病者の方の就職をサポートする仕事で、
仕事がなかなか見つからない、見つかっても継続できない、という状況が多かったのですが、
それまで携わった人事の仕事の経験も活かせるし、
自分も難病を患ったので支援される側の視点もわかる、
どうサポートしたら就職まで導けるかなという就労支援の醍醐味や面白さも体験しました。
就職につなげたときの達成感は本当に素晴らしいものでした。
 
でも、支援の結果いくらうまく履歴書がかけたり面接のコツをつかんでも、
採用するところがないと就職に繋げられないという課題が見えた時点で、その仕事の任期が終了しました。

その後、再婚して末っ子を妊娠、出産を経て再就職しようとしたときに私も同じ壁にぶつかったので、
私のような子育て中の女性をサポートする場所、
また、雇用する事業所も必要だなと思ったんです。
それを当時は見つけることができなかったので、自分で立ち上げることにしました。
 

 

 
– – – 働きたいのに働けない…そんな負のスパイラルを断ち切りたい
 
積極的に働かなくても旦那さんの給料だけで生活できる家庭も多いと思うんですが、
保育園に預けた方がこどもも集団生活に慣れるし、
いずれ子供が手を離れ、自分が一人の女性としてまた働くということを考えたら、子供が小さいうちから働きたいという女性も多い。
でも、みんな「働く場所がない」と悩んでいるんですね。
 
また、ブランクが長くて再就職する勇気が出ない方も多いです。
妊娠・出産を機に退職したケースだけでなく、
保育園に預けている間はフルタイムの仕事ができるけど、
沖縄の場合、幼稚園が小学校入学前のプレスクールみたいな感じなので、
その時に一旦仕事を辞める方も多い。
 
今は学童保育に預ける方が増えてきたけど、学童も定員がありますから。
 
キャリアを積み重ねることが難しいんです、一度中断しないといけないケースが多くて。
 
そうして一旦仕事を辞めたあとも、
小学校低学年の間は子供をみてあげたいという方もいますし、
そうなると、ブランクが10年以上空いてしまったり。
 
今はパソコンを使う職場が多いけれど、
「自分が働いていた時はパソコンが普及していなかった」
ということがネックになる方もいます。
看護師さんの場合は手書きだったカルテが電子カルテになっていたり、
採血や注射など、技術面でのブランクが心配だったり。
 
家にこもっている間に、自分自身への自信を失ってしまうケースが多いようです。
 
再就職したくて、面接をお願いしようと電話すると、
「小さいお子さんはいますか?」
と言われ、面接自体してもらえなかったりとか。
そうなると電話すること自体が怖くなってしまう。トラウマになっちゃうんですね。
 
面接までいけたとしても、
「子供が病気のときどうしますか?」
と訊かれてうまく答えられずに採用されなかったとか、
採用されたけど子供が保育園を休みがちで結局仕事を辞めざるをえなかったり。
というのも、仕事を始めたばかりでお母さんが緊張しているとそれが子供にも伝わるし、
初めての集団生活で感染症ももらいやすい。
お母さんと離れていると精神的にも不安定だし、
そういう諸々の状況が重なって熱発しやすくなるんです。
 
子供の熱発に合わせて休みがちになるのは最初はしょうがないこと。
でも、職場にはいづらくなってしまうし、
せっかく採用されたのにすぐに辞めざるを得ない場合が多いんですよね。
 
そういうことが重なると、悪循環で自信もなくなっていく。

そんな負のスパイラルを断ち切りたいという想いがありました。
子供に「ならし保育」があるように、お母さん達も「ならし仕事」が必要なんじゃないかな?って。
育児と仕事を両立するためには、最初はどうしても準備段階が必要。
それまで以上に早く起きないといけなかったり、
子供も新しい状況に慣れてないから、何をするにも予想以上に時間かかったりするので。
そこで、「エッグデリ」を立ち上げたんです。
 
半年間「ならし仕事」に携わるうちに、「働く感覚」を思い出すことができます。
その間に子供も保育園の生活に慣れ、お母さんも子供と離れて仕事をすることに慣れていく、いわゆるジョブトレーニングです。
子供が発熱したら遠慮なく休んで良い。
それでスタッフ全員が休むことになったら、お店自体をお休みにします。
頑張った分お給料をもらえるし、お金が貰えると自信に繋がるじゃないですか?
 
今、「産後弁当」というメニューもあって。
 
産後の始めのうちは、実家に帰って上げ膳据え膳で全部やってもらえるけれど、
自分の家に戻ると、初めての出産だと自分のご飯つくる時間がとれなかったり
上にお子さんがいるとさらに上の子の面倒もみないといけなかったりしますよね。
だから、お弁当を届けることでお母さん達にちょっと手抜きしてもらって自分の時間を作ったり、もっと育児に専念してもらいたいなって。
 
メニューは全部手づくり。
煮物を必ず入れたり添加物を使わないようにしたり、
お子さんと一緒に食べてもらえるための工夫もしています。
 
最近は、お母さん同士の集まりやサークルにまとめて届けることもあります。
 

 
– – – 良いことしてるひとがかっこいい車に乗ってもいいじゃないですか(笑)?
 
「相談」とか「カウンセリング」って敷居が高いと感じる方が多いみたい。
「私、悩んでます」って打ち明けにくいじゃないですか。
でも、エッグデリはお弁当を買いに来るふりをして相談に来れるんです。
「弁当屋」という看板があると敷居が低くなるでしょう?
買うついでに、働いている人もその活動も実際に見ることができるし。
「NPO」だけだとちょっと行きにくいですもんね(笑)。
 
NPOって実は沢山あって、沖縄県内の法人格のNPOだけでも480くらいある。
でも、どこにあって何をしているのかよくわからないところも多いし、
事務所も看板も出てなかったりするから、活動に興味があっても入って行きづらい。
 
だからもっと開かれた、体感できるNPOが必要なんじゃないかなって。
 
NPOって「何やってるかわからない」「怪しい」ってイメージがありますよね(笑)?
「非営利組織」なんて訳されますけど、別にお金儲けても良いんです。
株式会社みたいに分配をせず、余剰金を次の年の事業に回せば大丈夫なの。
非営利というと「お金もらっちゃいけない」とか「儲けちゃいけない」って思われちゃうんだけど、そうじゃないんです。
分配方法が違うだけで、株式会社や普通の会社と変わらない。
 
最近は「ソーシャルビジネス」という言葉も出てきて、
「良いことをする+事業を行う」という視点を持ったNPOも出て来ています。
だって、良いことしてるひとがかっこいい車に乗ってもいいじゃないですか(笑)?
 

 
– – – 育児には必ず終わりがある。一人の女性として輝いて欲しい。
 
よく、「子育て支援をしているところですか?」ってきかれるんですけどそうじゃなく、お母さん達の支援。
お母さん達が自立すると、結果として子ども達にもプラスになるという想いでやってます。
 
エッグデリで働く女性のご主人たち、共通の反応が出てるんですよ。
「働く前は化粧もせず、おしゃれもしなかったのに、
エッグデリで働くようになってから、急に奥さんが輝き始めた」って。
そういう変化を見て、また奥さんへの愛情が増したりすることもあるみたい。
 
専業主婦してるとつい自分を後回しにしがちですよね。
化粧品や洋服を買うのは最後になっちゃう。
でも、自分が頑張って働いてると、
自分へのご褒美でおしゃれしたり洋服買ったりできるようになるし、
そうするとお母さん達が綺麗になるし、表情もいきいきしてくる。
 
それを見た子供さんが
「お母さん頑張ってるの、カッコイイ」
って言ってくれたり、
子供との間にもだんだん程よい距離感ができてくるんですよね。
旦那さんとの間にも、新たな感謝の気持ちが生まれたり、
助け合いができてくるのですごく良いと思うんです。
 
色々な価値観があると思いますが、私はお母さん達はどんどん外に出て働いた方が良いと思っています。
一緒にいる時間の長さが愛情の深さじゃありません。
大事なのは濃さ。
働きに出て子供と過ごす時間が短くなっても、
その間にたっぷり愛情を注ぐことができたら問題無し。
 
「3歳児神話」とか言う人もいるでしょうし、
「子供が小さいうちに預けて働きに出るのは可哀想」というような、周りの意見に左右されることもあると思います。
 
でもね、育児って必ず終わりが来るんです。
終わってからやっと社会に出るよりも、一人の女性として働きながら育児をしてキャリアを積んで行ける人が増えたら良いなって。
そうすれば、子供が手を離れた時、お母さんが子離れに苦労せず、すぐに自分の世界を作る事ができるんじゃないかなって。
 
 
相談にいらっしゃる方と話していると、過去の私みたいな想いをしている方が多くて、重なる部分もあるんです。
上から目線で「支援をしますよ」じゃなく、
「一緒に頑張りましょうね!」という気持ちなので、
気負わずいらっしゃってください。
自分のペースでゆっくりで良いですから。
 

 
おきなわ共育(ともいく)ファンド
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Egg Deli(エッグ デリ)
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