「私の出身地、南大東島の大東寿司、この前みんなが『美味しい美味しい、作り方習いたい』って言ってくれたもんだから、今日は材料持ってきたよ。一緒に作りましょう。え、記事にするの? そんなの知らないから寿司飯作ってきちゃったよ。あ、顔は撮らんでよ、恥ずかしいから(笑)」
「難しいこと何もない。ああ、お米は上等選んでよ。コツらしいコツはそれくらい(笑)。前に店で大東寿司買ったら、美味しくなくてショック受けた。安いお米だったんでしょうね。私はコシヒカリ買う。寿司飯にするお酢も普通よ。マルコメのお酢って決めてるけどね」
「今日の魚はサワラ。前に鯛で作ったことあるけど、ダメだったね。高級だから良いだろうと思ったんだけど。サワラが一番。マグロでもいいかな」
「これは、南大東の。いとこが南大東に帰る時に、一緒に買ってきてもらうの。それか島に住んでる友人に頼んで、送ってもらう。市場行って、そこで捌いて薄切りにしてもらって。家で真空パックにして冷凍。使う分だけ解凍してね。そうしておけば1年くらい平気平気。真空パックにする機械は、息子が買ってくれたよ」
「南大東のお魚は美味しいよ。本島に来たばっかりの時は大変だった。スーパーで買ってみたら、ショック受けて。それ以来買ってない(笑)」
「サワラ、醤油に漬けて。醤油はいつもキッコーマンので普通の。だし醤油とかじゃなくていいよ。テリを出すのにみりん入れる人いるけど、私は醤油だけ。それで充分美味しいから、他に要らないの」
「2,3分浸けたら、ザルに取り出して、軽く醤油を切る感じね。マグロだったら、漬ける時間を短くしてね。すぐ色が黒くなるから。いい匂いする? サワラと醤油だけなのにね」
「じゃ、ご飯を握ろう。酢を水で割って、手に付けてから。水だけだったらベトってなるから。酢を入れると、殺菌にもなるしね」
「大東寿司って、長くもつのよ。祭りの朝は早く起きて、その日のお昼と夕飯分を作ってから祭りに行きよったから。お母さんと一緒に、これと海苔巻き作ってね。朝に家を出て、昼間は相撲の応援。子供の相撲やって、大人の江戸相撲やって。それからお芝居。すごかったよ、子供の頃の祭りは。帰るのは、夜中の1時とか2時。帰ってからまた食べる。9月で暑いのに、全然いたんでなかったよ」
「手にご飯粒がいっぱいついちゃう? 手に酢水を付ける加減があるのかしら」
「自分たちはテーゲーにするから、こうやって両手にご飯持って2つ同時に(笑)。型もあるんだけどね。手で握った方が美味しそうに見えるわよね。大丈夫よ。刺し身で隠せばみんな同じに見えるから(笑)」
「わさびは平気? チューブから直接ご飯に乗せちゃう(笑)。八丈では、わさびじゃなくて和辛子を使うところもあるって聞いたことあるよ。八丈島から伝わったお寿司だって、知ってるでしょ?」
「その上に刺し身を乗せて。ちょっと上から軽く押さえたらいいよ。そしたらクルッとまるまるから。はい、できあがり」
「味していいのよ。味するのが作る人の特権。食事の時にはもうお腹いっぱいですってこともあったあった。白い筋の入ってるのがハラゴー。お腹の脂身の多いところね。これは人によって好みが分かれるね。私は子供の頃から、ハラゴーじゃないところ。ハラゴーは食べきれん。いとこはハラゴーばっかり食べよったよね」
「誰かが亡くなった時とか、島の人で集まってよく作りよったよ。こっちに出てきてからは、息子の誕生日とかお正月とか、人が集まるっていったら作ってたね。今でも息子からリクエストされて、息子のお店の従業員の子たちに持たせたりしてる。みんな大好きだって、喜んでくれるよ」
写真・文 和氣えり