miyagiya – bluespot 普段使いのやちむんにワクワクするTシャツ、カトラリーにインテリアも。日々変化するライフスタイル提案型エディトリアルショップ

miyagiya
 
田村窯、室生窯、工房十鶴……。
沖縄の名だたる工房で作られたやちむんの隣りには、ソウル発のシャツやデンマーク王室御用達のカトラリーが並ぶ。
 
miyagiya のオーナー・宮城博史さんは自身のショップ miyagiya – bluespot を「エディトリアルショップ」と位置づけている
 
「エディトリアル」とは「編集」の意。
雑誌を編集するように、独自の視点で衣類、雑貨、インテリア、カトラリーなどさまざまなジャンルからアイテムをセレクトする店のことだ。
 
「だから、特定のジャンルの専門店ではないし、その時々の『編集』によって雰囲気も変わる。常に変化のある店なんです」
 
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宮城さんは沖縄の高校を卒業後、東京の大学に進学した。
 
「その当時の僕は東京主義だったんです。
大学に進学したのも東京に出たかったから。
とは言っても、沖縄のことはいつも気にかかっていました。
沖縄と関係する何かをやりたいと思っていたんです」
 
その後アパレルの仕事に就き、充実した日々をすごしていたが、沖縄のことが心を離れることはなかった。
 
うつわやインテリアにも興味があった宮城さん、ある作家の作品との出会いが人生の転機となる。
 
「読谷の『工房十鶴(じっかく)』の柄溝康助(からみぞこうすけ)さんのうつわに触れて衝撃を受けたんです。
それまでやちむんというと、おばあが使っている大きなお皿のイメージでした。
実家の食器棚の上のほうに大事にしまわれているような。大きいし重いし、普段使いするものではないということもあって、僕はそれまで好きだとは思えなかったんです。
それが、柄溝さんのうつわに出会って、僕のやちむんに対する概念が覆されました。
柄溝さんの作品は、パッとみた雰囲気ではやちむんかどうか判別の難しいものもあるし、唐草のような伝統柄でもちゃんとオリジナリティがある。
不思議な魅力を持ったうつわに夢中になりました」
 
工房十鶴のうつわとの出会いをきっかけに、宮城さんはほかの作家やうつわにも興味を持つようになった。沖縄に帰省するたびに様々な窯へ通い、作品を買い求めた。
 
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趣味で作った自身のホームページでやちむんのことも紹介していたところ、少しずつ問い合わせが入るようになった。
 
「『購入できないんですか?』というメールを見て、こういううつわを求めている人が東京にもいるんだと少し驚きました。
でも、確かに東京で沖縄のやちむんを買えるところは当時まだ限られていたので、ホームページ上で少しずつ通信販売をやるようになったんです。
本職としてアパレルの仕事を続けていたので、気軽な気持ちでやっていました」
 
インターネットを通じて沖縄のうつわを販売しているうちに、実店舗を構えたいという気持ちが芽生え始めたが、最初は沖縄ではなく東京で物件を探していたという。
 
「購入するお客様も内地の方が多かったので、東京でオープンさせた方がいいと思っていたんです。
でも、なかなかいい物件に出会えなくて」
 
時を同じくして、宮城さんの友人の加藤さんは沖縄で物件を探していた。
加藤さんが代表を務める「bluespot(ブルースポット)」は、アジアを拠点に東京ではなくローカルから発信するというポリシーをもって活動しており、その第一号店はカフェ兼フォトスタジオとしてソウルですでにオープンしていた。
 
「僕が正月に沖縄に帰省していたとき、加藤から電話で『良さそうな外人住宅が賃貸に出てるから見てきてくれないか』と頼まれて。その時はまだ、彼も沖縄で始めるビジネスについて具体的な考えは決まっていなかったようなのですが、とりあえず物件を押さえてから考えようということだったので、『じゃあ、物件決まったらそのはじっこで俺にも店をやらせて』と気軽に言ってたんです」
 
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しかし、その物件は他に借り手が決まってしまい、契約することができなかった。
 
「それが逆に引き金となって、沖縄で店を開こう!というやる気に火がついてしまったんですね。
物件探しの場を東京から沖縄に完全にシフトさせたんです」
 
正月に物件の契約を逃したあと、仕事の合間をぬってほぼ毎週末東京から沖縄に通う生活が始まった。
bluespot ではなく、あくまでもmiyagiyaの店舗を探していた宮城さんだが、次第に提案型のエディトリアルショップにしたいという気持ちが生まれていた。
 
4月に見つけた物件で、コラボレートショップ miyagiya – bluespot はオープンした。
 
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「焼き物だけでも洋服だけでもない、空間全体を楽しんでいただけるショップにしたいと考えたんです。
普段は毎日がただ何気なく過ぎていくけれど、店内の空間の表現に刺激を受けて『たまにはおうちでゆっくり過ごしてみようかな』と思ってもえたら嬉しいな、と。
 
田村窯も室生窯もそうですが、内地から沖縄に出ていらして10何年と修業し、沖縄でご自分たちの窯を構えて活動していらっしゃる作家さんの作品が多いのですが、彼らのうつわを見ると新しい沖縄を発見した気持ちになるんです。沖縄の人もそうじゃない人も、ここで新しい沖縄を見つけてほしいと思い、エディトリアルショップという形態をとることに決めました」
 
店頭にはうつわだけでなく洋服も並んでいる。
あまりに奇抜なデザインはイヤだけど、おもしろみのない服はつまらない。
悪目立ちはしたくないけど少し冒険したい。
そんなささやかな遊び心を十分に満たしてくれる洋服ばかりだ。 
 
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「奇抜じゃないけどデザインがカッコイイ。ありそうだけど、ない。そういう服をそろえました。
一見Tシャツだけど、よく見るとボタンがついていてシャツになってたりと細部が面白い。こういうさりげない遊び心が好きなんです。
洋服はソウル発のメンズものが中心ですが、ユニセックスのアイテムも多くて。
Tシャツもてろてろとした素材だったりサイズが小さめだったりと、女性が着ても素敵なものが多いんです」
 
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「このジャケットはジム通いするときに着たいと女性が購入。『人と同じのがイヤなのよ!』とおっしゃって(笑)」
 
実際、訪れる客はカップル率が高いと言う。
 
「『Tシャツかわいいじゃん』と言っていた彼氏さんが食器を、『うつわも素敵だよ』と言っていた彼女さんが逆にTシャツを3枚まとめ買いしたことも(笑)」
 
また、アパレル業界で長年活動してきた宮城さんも納得の質と値段も嬉しい。
 
「やわらかくて質の良いコットンを使っていたりするのに、アイテムのほとんどが5,000〜6,000円代。無地のTシャツは2,000円台が主と値ごろ感も良いんです」
 
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miyagiya のやちむんは、幅広い世代が楽しめるものばかりだ。
カフェオレボウルに、パスタ皿に、こちらはガトーショコラが合うかも? と、次から次に用途が浮かんでくる。
 
「毎日のように気軽に使えるやちむんをご紹介いしたいんです。
そういうやちむんを作る作家さんをクローズアップすることで、これまでやちむんに興味がなかった人にも来ていただけたら嬉しいですね。
 
うつわも洋服も、若い人にも興味を持ってもらえるようにしっかり提案して、定期的に『編集』していこうと思っています」
 
店頭にはさらに、雑誌、CD、アロマキャンドルにカトラリーなども並ぶ。アイテムのジャンルは実に多岐にわたっている。
 
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デンマークのデザイナーKAY BOJESEN(カイ・ボイスン)のカトラリー。「シンプルで美しく、デンマーク王室御用達。デザイナーも参考にするフォルムと言われているのですが、実は日本で作られているんですよ」
 
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日本でも扱っている店の少ないスペインのライフスタイル・カルチャーマガジン「apartamento」。「この雑誌が店づくりにも少なからず影響を与えていると思います。抽象的なアートな感じじゃなく、わかりやすい誌面が好み。ラフでカジュアル、わかりやすいのに新鮮。店でもこういう表現ができるんじゃないかな?と考えています」
 
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様々なジャンルのアイテムが、カテゴリーにしばられず自由に展示された 店内の雰囲気は独特だが、宮城さんと話をしていると次第に合点がいく。店の輪郭が明確に浮き出てくる。
 
ここはまさに、宮城さんの「部屋」なのだ。
 
いつも使っているお気に入りを、大きなスーツケースにありったけ詰め込んで持ってきて並べた、そんな空間。
デザインが利いていて使い勝手のいいうつわ、オリジナリティあふれる服、繊細なカトラリー、毎日聴いても飽きないCD、肌触りの良いタオル。
どれも実際に宮城さんが愛用しているものばかり。
だから、どのアイテムにも語るべきストーリーがたくさん詰まっていて、水を向けると宮城さんは嬉しそうにその物語を語る。
 
でも、生活していれば、家主の好みや興味も変わる。
そうすると店のアイテムにも変化が生まれる。あるときには新しい作家のうつわが加わり、あるときには新たなジャンルのCDが置かれる。
私たちにはその変化が楽しい。店に変化が生まれる度に、私たちは新しい世界を発見できる。
 
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今後は様々な作家の企画展も予定していると言う。
 
「東京で活動なさっている木工職人の嘉手納重広さんの作品を秋頃に展示できたらと考えています。
何かの種のような形が特長的なこちらの作品は小さな入れ物。民芸調というよりデザイン的な要素が大きくて素敵なんです。
ただ展示するんじゃなくて、どう『編集』するかが僕の宿題。嘉手納さんの作品に何かをからめていきたいんです。
ガラスと組み合わせてみたりして、ナチュラルとは逆の雰囲気で展示してみたら、今まで興味がなかったひとも面白いと感じていただけるんじゃないかな? というふうに、今一生懸命考えている最中なんです」
 
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「将来的にはやりたいことが沢山! ギャラリーもしたいしカフェも開きたい、老後には図書館という壮大な夢もあるんです(笑)。
海外に旅行したとき、図書館を併設しているカフェがあったんです。カフェの奥に書棚があって、写真集やアート関連の本も豊富にそろっていました。5ユーロほどのデポジットを先に支払えば貸し出し自体は無料。アートやデザインの本って結構な値段しますから、買わずに借りられるようにしたらどうかな?って。……これ、楽しそうでしょ?(笑)
また、miyagiya の壁が白いのは展示スペースとして使うため。店の雰囲気に合うような作品を募集中です。
店のアイテムだけでなく展示も定期的に変え、毎週来ても楽しんでいただけるように」
 
 
センスの良い友人の部屋を訪ねるような楽しさがあるから、また足を向けてしまう。
 
「あれ? 宮城さんってこういうのも好きなんだ?」
「そう、最近ハマっちゃって。カッコ良いでしょ?」
 
なんておしゃべりしながら、宮城さんが加え続ける「編集」を楽しみたい。
 

写真・文 中井 雅代

 
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miyagiya – bluespot
那覇市松尾2-12-22
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