NO BORDER , GOOD SENSE仕事場を訪ねてⅠ「静けさに耳を澄ます」 陶作家 安藤雅信

文 田原あゆみ

 
 
 

 
 
 
 
「NO BORDER , GOOD SENSE」
 
5月11日(金)から10日間の企画展のタイトル。
陶作家の安藤雅信氏・木工作家の三谷龍二氏・minä perhonenチーフデザイナーの皆川明氏の3人のコラボレーションによる初めての企画展。
 
 
 
「SENSE-感覚」というものは私たちが生きていく上でとても大切な道しるべだ。
それぞれが個性的な表現の世界を確立しているこの3氏には、実は共通していることがある。
それは、自分の本質的な感覚に耳を傾けてもの作りをして来た結果、とても磨かれた感覚を持っているという事。
そして人は本質に近づけば近づくほど、自由になるのだろう。
そんな人同士が出会うと、時間、住んでいる場所、仕事のジャンル、年齢、それらの制限性が失効してしまうようだ。
 
 
磨かれた感覚を持つ人同士は相手に向かってドアが開かれている。
一見制限に見える事柄を創造の種にしながら、共同創造が生まれでる。
 
 
 
どんなものが生まれてくるのか。
とても、とても楽しみだ。
 
 
 
 
 
 
 
 
 
底冷えのする1月の半ば、
「NO BORDER , GOOD SENSE」の打ち合わせのため、岐阜の多治見にある安藤雅信さんの工房を訪ねた。
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
仕事という字は「仕える」と「事」から成っている。
様々な視点があるだろうが、「自分自身の本質的な声に仕える事を通して社会に関わる事」だと私は捉えている。
 
 
 
内面の声に耳を傾けながらそこに在る美しい形を彫り出してゆく。
安藤さんの仕事場は、必然的に静けさで充ちている。
 

 
 
 
安藤さんの仕事場は、その作品とよく似ている。
道具のひとつひとつ、その並べ方、張り紙の文字、照明の明るさや細部に到るまで一貫するものを感じた。
すべてが安藤雅信というひとつの絵のようだ。
 
 
 
 
 
どこをみても簡素で美しい。
本来仕事場というところは、神聖な場所なのだとしみじみと感じた。
 

 
 
 
 

 
 
 
 
 
「一番しあわせな場所」
 
と、安藤さんが語った場所は、作品の設計とデザインをするための小さな部屋。
 
必要なものだけが、あるべき場所に収まっている。
 
 
 
そっと感覚に耳を傾けて自分の中の形を彫り出してゆく。
聴こえてくるものを捉えるための静かな場所だ。
 
 
 
 

 
 
 
 
 
型を起こした後に、さらにその中に潜んでいる美しいラインを見いだす事は、安藤さんにとって至福の作業。
 
 
 
 
 

 
 
 
子供の頃、町の外れにあった工場の景色。
その工場にアートが注がれるとこんな景色に成るんだなと感じる。
 
 
 
 
 
無機質なようでいて、とてもやさしく懐が深い。
有機的なもの、人や、料理や、その表情がより生き生きと映える様に引き立ててくれる
 
 
 
 

 
 
 
 

 
 
 
 

 
 
 
 
無駄なラインが削ぎ落とされた美しさ。
この神聖さが漂ううつわに、皆川さんが絵付けをするという。
 
 
正直、よほどでなければ筆がいれられないように思う。
普段情熱的な分だけ、文章を書く時には押さえ気味で書くのだが、どんなものが生まれているのかを想像すると胸が躍る。
 
 
 
 
 
 
 
 
 

 
 
 
仕事場の景色はまさしく安藤さんそのもの。
自分に問いかけ、その答えに耳を澄ます。
静けさの中で感覚が冴え渡ってくるような、そんな空気感で充ちている仕事場でした。
 
 
 
先週末には皆川さんがこの仕事場を訪れて、絵付けをされたそうです。
私たちがその作品に会えるのは、初夏の風が吹く頃。
 
今からとても楽しみです。
 
 
 
 
 
 
 
 
「NO BORDER , GOOD SENSE」
 
5月11日(金)~5月20日(日)
3氏によるトークイベントも開催予定。
詳細は4月に掲載いたします。