写真 田原あゆみ 文 倉富麻紀
「マトリョーシカ・・・・」
「マトリョ・・・シュカ・・」
「マトリョーショカ!」
「マトリョーショカグラスー!!」
それは、たしか今年の3月頃。
そう、まさに季節は初夏。
Shoka: でオーナーのあゆみさんとガラス作家の小野田郁子さんの歓声があがりました。
あゆみさんは長いことオリジナルグラスを作りたいと思っていたようで、機会を待ってようやく今年それが実現したのです。
そのグラスが、こちら。
入れ子になった3つセットのグラスたち。
一番外側の大きいグラスは、片口にもなるしもちろんグラスとして利用してもいいのです。
深い青(右奥)を基調に、青灰色(左奥)、灰緑色(右手前)、そしてクリア(左前)の4色です。
当初はシンプルな青いグラスが欲しくて探していたのですが、なかなかいいものに巡り会えず、それなら自分でデザインをして誰か馬の合う人と一緒に作りたいそう思っていたのだそうです。
そのグラスを一緒に手掛けていただいたのが、読谷村在住の琉球ガラス作家 小野田郁子さん。
「誰かと一緒にものづくりをするのは楽しい作業。ただ、お互いが相手を尊重しながら自分の才能を提供し合う。見失ってはいけないのは自分の仕事や感覚の軸。それが確固としていて、ぶれない。そして大事なのは前向きでたくましい精神」
あゆみさんはそのことを念頭に、一緒にグラスを形にできる人を探したのだそう。
小野田さんと最初に会った時に、「あ、この人となら作れそう!」そう感じたと言います。
小野田さんは、明るく、たくましく、そしてまっすぐ。とても魅力的な方なのです。
ガラスに携わる作り手たちは、まず高温の中で手を止めることなく何時間も集中して作業をしなくてはいけません。ガラスの窯は13,00℃、室内の温度は40度以上は当たり前。その中で高い温度でとろけたガラスをドロップしないように短時間で整形してゆくので、力も根性も根気もいる仕事なのです。
薪を切る小野田さん。
作業は下準備から始まって、繁忙期は休む間もありません。
東京都出身の小野田さんが、沖縄へ来たのは1998年。
沖縄で何かものづくりの仕事がしたいと考えていた矢先、東京のとあるお店で名工・稲嶺盛吉氏の作品集を目にする機会があり、そのガラスの魅力に心惹かれ、すぐに弟子入り志願の手紙を出したのだそう。
それから、11年ほど氏の工房「宙吹きガラス工房虹」にて修行を経て、2009年「吹きガラス工房 彩砂(るり)」を設立。
小野田さんの太陽のような笑顔と、おおらかな人柄、それでいて芯の強さと明るさという人柄に触れたあゆみさんは持ち前の直感力で”この人なら一緒にいい仕事ができる”と感じてオリジナルグラスの製作がスタートしました。
この記事を書くにあり小野田さんの工房へお邪魔したときに、今回のグラス製作で大変だったことってありますか?
と質問したところ、要望の一つで一部グラスにモールという筋状の模様を付けたいという要望が出ていて、もともと小野田さんの工房にはその金型が無く、さてどうしようか・・と思っていたところ、もともと工房にあった鉄の資材を工夫してやっってみたところ、それがちょうどうまい具合にできたのだそう。
「大変だったというよりも、今後絶対に自分のためにもなるなぁ~!という気分でやったよー。」と笑顔の中に好奇心いっぱいの瞳で答えてくれたのです。
こういった持ち前の好奇心と創意工夫を楽しんでやってしまうところなどが、きっとあゆみさんの心にも届きそして、なにより自身が楽しもうとしている所が小野田さんの魅力なのです。
なんども試作品をShoka: に持ってきていただいては、みんなで、これがいい!もう少しこう。。などなど試行錯誤を繰り返しました。
作家さんというと、ご自分の作風を大きく離れていくことに抵抗を感じたりするものだと勝手に思っていた私は、その時の小野田さんのしなやかなで柔軟な対応が前向きで気持ち良く、とても印象に残っています。
「ふんふん。なるほど~。」「でもですね、これだとちょっと厳しいですけど、この方法ならいけそうです!」
などなど、相手の要望を聞きつつ技術的な方向から現実的なことを提案していく柔軟な姿勢がとても頼もしくってワクワクするような雰囲気で進んでいきました。
何度目かの試作で、ついにあゆみさんのGO!がでた時は、私たちも一緒に感動したのを覚えています。
そして、冒頭の歓声とともにネーミングが決まった瞬間も楽しく、印象的なものでした。
最初は重ねるつもりはなくて、どのサイズが一番手に収まるのか?ということを追求していた2人。
サイズが違うものを、いろいろ触ったり、手のひらに収まるカーブを模索しているうちに、入れ子にするということが閃き、あゆみさんが「これ重ねたら面白いんじゃない??ほら、収納しやすいし。なんだかロシアのあの人形みたいだね」と、目をキラキラさせて提案しました。
それを聞いた小野田さん、
「あ!マトリョーシカ!」
「あああ!マトリョーShoka:で、マトリョーショカグラスだね!」
と。
改めて、マトリョーショカグラスをご紹介します。
一番の特徴は、3つセットで入れ子になっているところ。
参考にしたのは、ロシアの民芸品「マトリョーシカ」
いつの間にかちょっとずつ増えていく器が食器棚の中で場所をとっていくのをスタッキングで収納の事も少し考えてあります。
なにより、3つの色の重なりが綺麗なので見ているだけでも楽しい器です。
外側の大きめな片口グラス、ぽってりした底の中グラスと、すっきり細めのグラス。
例えば、よく冷えた日本酒を片口に入れて、中サイズのグラスと小サイズのグラスをお二人分で晩酌セットにしたり。
3つともグラスとして家族で使ってもいいですね。
暑い日は、一番大きい片口グラスに麦茶やソーダ水をたっぷり入れてゴクゴク飲んでも美味しそう。
一番ほっそりしたグラスは、ビールを上品に飲めそうだし・・・一輪挿しにしても可愛いな。
あ!片口グラスに小さな植物を入れてみても可愛らしいかもしれません。
と、こんな風にぐんぐん想像が膨らみます。
小野田さんも、器はなるべく使い手に委ねたいともおっしゃっていました。
グラスだけれど、飲み物を入れるだけではなく花器としても活躍させても楽しいですよね。
もう一つの特徴は、何と言っても再生ガラスの独特の綺麗な色合いです。
青は、「青いグラスでお水を飲むと美味しいんだよ」と日頃からよく言っているあゆみさんの当初からの希望の色でもあるのです。沖縄の海の青よりも深い深い色。
見ていると心がしんと静まって、この色の中に引き込まれてゆく感じが好きなのだそう。
この色のグラスで飲む水が一番美味しいとあゆみさんは言っていました。
青灰色
青い色のガラスと、茶色のガラスを混ぜてこの色が出来ました。
クールな色で、青と茶色の色がほんのりと出ているのが特徴です。
このグラスで赤ワインや、コーデュアルを飲むと落ち着いた、くつろぎの時間を感じるのだそう。
灰緑色
青灰色と灰緑色は、ブルーボトルに別の黒っぽい泡盛のボトルを混ぜ合わせそれぞれの色の調合具合を調整して独特な大人っぽい色を表現しています。
私は、この2色はウィスキーを入れて飲んでみたいと初めて見たいときからこっそり企んでもいます。
癖が無くて、グラスの透明感も生きていて、フアンの多い色です。
それから、クリア。
グラスに入れた飲み物の色が楽しめるは、クリアならでは。
ジンジャーエールの金色や、シロップの綺麗な色を目で楽しみながらいただけますね。
ミントの葉を飾ると、やはりクリアが一番映えるのです。
夏はガラスを使う機会が一番多い季節。
明るい太陽の光をグラスに反射させて、きらめきも一緒に楽しんで下さい。
小野田郁子
1975年東京生まれ
1998年から11年間琉球ガラスの名工である稲嶺盛吉氏のもとに師事した後、2009年に吹きガラス工房彩砂を設立現在に至る。
おおらかで柔軟な感性と太陽のような笑顔の小野田さんとShoka: の、ちょうどいい真ん中が出逢ってできた楽しいストーリーが
たっぷりと詰まったShoka: オリジナル・マトリョーショカグラスでまだまだ暑い沖縄の夏を楽しんでみてはいかがでしょうか。
開催中の夏のお出かけ展でも、Shoka: に並んでいます。ぜひ、店頭で手にとって触れてみてくださいね。
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タツノオトシゴ通信 vol.2
「夏のお出かけ展」
8月7日(金)~8月30日(日)
12:30 ~ 19:00
彫金 喜舎場智子 平澤尚子
ジュエリー turtle forest
琉球藍染ストール 比嘉英子
ガラス マトリョーショカグラス
光と影のはっきりしている夏だからこそ、身につけたくなるものが揃っています。
夏を楽しむいろいろを、ぜひShoka:に見つけにきてくださいね。
暮らしを楽しむものとこと
Shoka:
http//www.shoka-wind.com
12:30~19:00
沖縄市比屋根6-13-6
098-932-0791