» LE GUMBO(ル・ガンボ)エキゾチック風味の本格欧州料理の数々を、音楽とお酒とともに。

LE GUMBO

 

若鶏とたっぷりの野菜からだしの出た香ばしいスープは、世界最小のパスタとも呼ばれる粒状のクスクスによく合う。

 

添えられた青いパッケージのチューブはチリソース。
唐辛子やニンニク、クミン、コリアンダーなどを原料とした辛味のあるソースをお好みで。

 

「缶詰のホールトマトではなく、フレッシュトマトを使って作っています。うちの看板メニューとも言えるんじゃないかな。お客様の多くがオーダーなさいます」
と、オーナーの佐藤勉さん。

 

「もとは北アフリカや中東の料理ですが、そこからフランスやイタリアなどのヨーロッパにも伝わり、世界の様々な国で食べられている料理です。
僕はフランス料理も学びましたが、まさにフランス料理!という雰囲気のメニューよりも、クレオール(中南米やカリブ海の植民地に生まれたヨーロッパ人)の間で食べられるような、少しエキゾチックな香りのする料理が好きなんです」

 

店内に掲げられたメニューボードには確かに、「フランス料理」「イタリア料理」といった枠にはめることのできないメニューが並んでいる。

 

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あめ色玉ねぎのタルト(サラダ付き)¥600

 

まったりとコクのある甘みが、はっとするほどおいしいタルト。
手作りのさくさくとした生地との相性も抜群だ。
その料理名から、玉ねぎを使っていることはわかるのだが、玉ねぎがこれほどまでに甘くなるものなのだろうか?

 

 
「あめ色になるまで3時間ほどかけてゆっくり炒めるんです。そこにベーコンと少量の卵を加えます。
でも、甘みの元になっているのは玉ねぎだけですね。
甘すぎるとくどくなっちゃうから、赤ワインビネガーを入れて少し味を引きしめます。
そうやって、70%くらいまで甘みを押さえているくらいです」

 

素材のもつ味わいを生かすだけでなく、その魅力を最大限に引き出す佐藤さんの料理は、知らず知らずお酒が飲みたくなってしまうものが多い。

 

「レシピを考案するときは、必ずそれに合わせるお酒もセットで考えます」

 

ワインを中心として、泡盛やビールなどのアルコールメニューも豊富だ。

 

「自分の店を持つときは料理だけでなくお酒もと、以前から決めていたんです。
同じ料理でもお酒と合わせることでよりおいしくなるし、何より楽しいじゃないですか。
ワインと合わせることを念頭にメニューを作ってはいますが、もちろんお食事だけしに来られる方もいらっしゃいますし、それで全然かまわないんです。
一番大切にしたいのは、お客様が心から楽しんでくださることですから」

 

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ル・ピュイ産レンズ豆のサラダ ¥400

 

その見た目に派手さはないレンズ豆のサラダ。しかし、一口食べてまた驚かされた。
豆のサラダといえばヘルシーであっさりとした、どちらかというと地味な料理だろうと想像していた。
しかし、レンズ豆そのものもふっくらとして味わい深く、甘酸っぱい味付けも格別。ついおかわりをお願いしたくなるほど、後をひくおいしさなのだ。

 

「この豆、いいでしょう?
レンズ豆ってアメリカ産やイタリア産など色々あるんですが、フランスのル・トゥイという産地で穫れるものが抜群においしいんですよ。他の産地のものとは、豆の味わいが全く違うんですね。
このメニューは、赤ワインをコップかなんかで飲みながらつまむイメージで作りました。
また、他の料理を楽しみつつときどきこちらをつまむという、箸休め的メニューとしてもいいですね」

 

豆のサラダと聞いてもっとあっさりした味わいを想像していたと伝えると、佐藤さんは笑った。

 

「僕ね、基本的にあっさりした料理が作れないんですよ(笑)」

 

どのメニューにも佐藤さんならではの粋な「クセ」を感じる。
そのクセが病み付きになるひとは多いようで、グルメな人々がイチオシの店として紹介するのを、これまで何度も耳にしてきた。

 

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卵、ハム、チーズ、季節の野菜のそば粉ガレット ¥950

 

カリカリに焼けた生地が香ばしいガレット。
今が旬の野菜、いんげんとビーツは、ホクホクとした食感がたまらない。

 

「野菜は沖縄産のものだけを使っています。
糸満の道の駅なんかに買い出しに行くんですよ」

 

素材にこだわり、化学調味料は使用しない。

 

「それは当たり前のことだから、こだわりとも言えない」

 

と、佐藤さんは言う。

 

「僕が心がけているのは、おもしろみがあるものを作ること。
あまのじゃくだから、よくあるメニューってあまり作りたいと思えないんです(笑)。
そして、できるだけ楽しくやりたい!
一人で作っているので、『わーっ!』とてんやわんやにならないように気をつけています」

 

小さな厨房の2穴しかないガスコンロで、佐藤さんはすべての料理を作っている。

 

「以前はパスタも作っていてご好評いただいていたのですが、茹であげるのに時間がかかるのでやめたんです。
それに、パスタなら他のお店でも食べられますから」

 

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LE GUMBO を語るときに外せないのが「音楽」だ。
佐藤さんは、料理を作るのが一段落するとギターを手に取る。
自身で弾き語りをすることもあれば、リクエストに応えて客が歌う曲の伴奏を奏でたりもする。

 

「7歳上の兄の影響を受けて小学生の頃から弾いていました。音楽はそれからずっとやっています。
でも、大学を中退して最初に入ったのはデザインの世界でした。しばらくそこで働いていましたが、25歳で離婚したのを機に自分の人生について色々と考えるようになって。
レストランでアルバイトしたこともあり、料理はずっと好きだったので、本格的にやってみようと思ったんです。
それに、二番目に好きなことを仕事にしたほうがいいって言いますよね(笑)?
一番は音楽。だったら料理を仕事にしたらどうかな? と。

 

仙台においしいフランス料理のレストランがあって、そこで5年働きました。
その後他の店を任され、1年働いてから30歳のときにイタリアへ渡りました。本場の味を勉強したいと思ったんです」

 

クスクスに出会ったのもイタリアだった。

 

「イタリアのレストランで働いているときは、まかないで毎日のようにパスタを食べていました。
それに飽き始めたころに、アフリカのコートジボアール出身のコックがクスクスを作ってくれたんです。それがすごくおいしくてハマっちゃって」

 

イタリア滞在中はフランスなど近隣諸国にも足を伸ばし、各国の料理を味わった。
2年経って帰国した時、佐藤さんに思わぬ転機が訪れた。

 

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ババ・オ・ラム ¥400 ブリオッシュを焼いてからラム酒シロップに漬け込んだ大人のデザート。

 

知り合いから、沖縄の店を任せたいという話が舞い込んだのだ。

 

「実は、沖縄にはずっと興味があったんです。
イタリアに行く前から、いずれは沖縄に住んでみたいとも思っていました。
そのきっかけは音楽。
琉球音階って哀しい音がひとつもないんですよね。
東北の民謡や演歌とは真逆の雰囲気で、『いいなー』と思っていたんです」

 

沖縄に移り住み、レストランバーに勤めた。
9年間そこで働いた後、独立して LE GUMBO をオープンさせた。

 

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佐藤さんが目指すのは、料理とお酒と音楽を楽しめる店。
店には常に音楽がかかり、ミュージシャンの友人が訪れたらその場でセッションが始まることも。

 

「僕はバンドも組んでいるのでちゃんとしたライブをやることもありますが、その時の雰囲気でなんとなく演奏するっていうノリも好きなんですよ。
お客さんが『ボサノヴァ歌いたいんだけど、ちょっと弾いてくれる?』とかね。楽しいじゃないですか」

 

佐藤さんのギターの腕はかなりのもので、イタリアでの修業時代には思わぬ効力を発揮した。

 

「厨房で働いていると、ライブハウスのお兄さんが『もうすぐライブやるから、来て』と呼びに来るんですよ。
レストランのオーナーも、『サトウ、行っていいよ』って(笑)
そういう場に行くと、レストランというかしこまった場所以外でのイタリア人の生活がよくわかるんですよね。普段はどういうものを食べたり飲んだりしているのかっていう、ベーシックな暮らしが。
それはすごく貴重な体験だったと思います」

 

沖縄で9年間勤めたレストランバーを辞めたのも、「もう少しラフな店をやりたい」と思ったことがきっかけの一つだった。

 

LE GUMBO は、ここでしか味わえないような一風変わった、しかもとても手の込んだ本場の味が楽しめる店だが、気軽に訪れられる雰囲気に満ちている。

 

とてもおいしいワインがある。でも、お酒が苦手なら飲まなくたっていい。
楽しい音楽が溢れている。でも、ただ聴いているだけでもいい。
ひとりひとりが楽しいのが一番!

 

そんな気楽なムードの中、佐藤さんがつくり出す本格的な各国の料理を、心ゆくまで堪能したい。

 

写真・文 中井 雅代

 

LE GUMBO
LE GUMBO(ルガンボ)
那覇市久茂地3-6-11 メゾン久茂地 1F
098-863-1262
open 19:00~翌1:00頃(L.O.翌0:30)
(7月からは18時〜)
close 火、第1・3月