NIWA CAFE(ニワカフェ) 定番クロックムッシュもリッチに変貌。リストランテのクオリティを、カフェで気取らず

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ふんわり溶ける、クロックムッシュ。チーズやベシャメルソースのかかっていない部分までも風味豊かで、ついぞ食べ飽きることがない。ブランチを手早く済ませたくて選ぶような、そしてそれなりの出来で出てくるようなクロックムッシュとは違う。この贅沢な味わいはどこから? 答えは、ニワカフェオーナーの庭野真さんが教えてくれる。

 

「このクロックムッシュは、ブリオッシュを使って作ってるんです。普通なら食パンとかイギリスパンを使うんですけど、僕はブリオッシュの方が絶対美味しいと思ったので。ブリオッシュは水の代わりに牛乳を加えて、バターと卵、砂糖をふんだんに使うパンです。お菓子に近い味のパンなんですが、これにすることで濃厚でリッチになるんですよ。先日、東京からいらっしゃった方にも『ブリオッシュのクロックムッシュは初めてだよ』って驚かれました。自宅ではちょっと食べられないような、満足感のある料理を出したいというのがあって」

 

家ではもちろんだが、一見ロケーション勝ちに思える海近くのカフェで、こんなにしっかり作りこまれた料理に出会えるのも予想外。それに、バターたっぷりのブリオッシュとベシャメルソース、チーズの組み合わせは、ややもすればくどくなりがちだが、全てがうまく調和している。贅沢だが重くはなく、優しさを保った一皿。これは相当な腕を要すること。真さんのアイデアを形にする、料理担当の庭野ゆかりさんが言う。

 

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「シンプルなことですけど、できる限り自分で作るようにしています。ブリオッシュもここで一から焼いていますし、クロックムッシュは沖縄県産のハム以外は全て自家製です。キッチンは私ひとりですけど、化学調味料や添加物に頼らないで、出汁だったら、時間をかけて初めからとったり、ドレッシングも作ったりですね。タルトも、フルーツに合わせて生地を少しずつ変えていて、ひとつひとつは細かなことなんですけど、そういうことで味が変わってくるんじゃないかと思っています」

 

真さんの冒険心に富んだアイデアと、ゆかりさんの手間を惜しまない丁寧な姿勢が、定番メニューをカフェごはん以上のものに高めていく。その一皿には驚きが載る。

 

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「お客さんが『珍しいね』『初めて食べるかも!』って喜んでるのを見ると嬉しいです。日替わりでは鹿肉のハンバーグとかカツレツをチキンで作ったこともあるんです。アイデアは真さんから、『こういうの、喜ばれないかな?』ってもらうことが多いですね。彼もいろんな飲食店で長いこと働いてきたので、面白いアイデアが出てくるんですよ。今は、生姜焼きに洋風のエッセンスを入れたものを研究中です。私も、お客さんに野菜をたくさん摂ってほしいっていうのがあるので、大きなちんぬく(里芋)を見つけたらポタージュにしたりとか、付け合わせを考えたりはしますね。私は料理さえできれば、もうなんでもいいので、どの料理も楽しいんですよ。今までイタリアンにいたので、どうしてもイタリアンベースが多くなるんですけど、お客さんから『和食も食べてみたい』って声があれば取り入れていきたいですね。ヴィーガンの方の料理もB級グルメも中華も全部美味しいし、全部作ってみたい。いろんな料理を出していきたいですね」

 

食に関することなら、なんでも好き。偏らず、肩に力も入れず、さまざまな料理に挑む。そんな旺盛なゆかりさんは、ずっと料理とともに在るのが自然な暮らしを送ってきた。

 

「実家は和歌山で、農家をしていたのもあって、小さい頃から食に密な生活でした。自分たちで食材を調達するのも当たり前というか…。春は山にタケノコを掘りに行ったり、秋はキノコ狩りに行ったり、夏だと川に潜って鮎も刺して獲ってました。食べるのももちろん、食べるまでの過程からすごく楽しんでましたね。料理やお菓子作りが大好きでしたし、中学生の頃にはもう、料理人になるって決めてました」

 

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早い時期での一大決心。そしてゆかりさんが選んだのは、世界三大料理学校と称される専門学校への進学だった。

 

「それから大阪にある、辻調理専門学校にいったんです。あの学校は、日本全国から最高級の食材が集められて、日本のトップシェフと言われる人を呼んで料理してもらって、それをみんなで味見して勉強するんですよ。授業後や休日は自分のお小遣いはたいて、またいろんなレストランを食べ歩いて。なので、この時期に舌がすごく鍛えられたと思います」

 

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幼い頃から親しんだ、採れたての新鮮な食材。専門学校時代に出会ったハイレベルな料理。それらがゆかりさんの味覚を鋭く、腕を確かなものにした。そんなゆかりさんが作る、一皿は敷居の高いイタリアンやホテルで出てきてもおかしくないもの。しかし、それらを気取らずに満喫できるのがニワカフェの良さだ。その柔らかい空気は、ロケーションやインテリアからくるものだけでなく、真さんの空間づくりによるところが大きい。ゆかりさんは料理に専念し、真さんはカウンターに立ちながら、お客さんひとりひとりに合う距離感を見極める。そして、おしゃべりも楽しみたい人、静かに食事を楽しみたい人…それぞれに居心地の良い空間を作り出すのだ。真さんが言う。

 

「自分がお客になりたいお店っていうのをコンセプトにしていますが、それって美味しい料理が食べられるということだけじゃなくて、雰囲気も大きいと思うんですよ。いくら料理が美味しいお店でも、接客が悪かったら二度と行きたくないですよね。僕も今までイタリアンやフレンチの、いわゆる名店といわれるお店で働いてきたんですけど、中にはずっとガミガミ怒鳴ってるシェフもいたんです。そういう空気って伝わるし、どれだけ良い食材を使って、料理は上手だったとしても美味しく感じられないだろうなあと思ったんですよ。もっとさかのぼると、僕は親が新潟で喫茶店をやっていたんです。カウンターに父がいて、お客さんと世間話とかしてる空気が温かくて、コーヒー飲む以上にそういうやりとりを楽しみに来ているお客さんもたくさんいたから、ここも、料理だけじゃなく、雰囲気も良いなあって思ってもらえる空間にしたいんですよ」

 

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ゆかりさんの料理、真さんの作る心地良さ。そのふたつを楽しみにして、うるま市にある店に、県内外からお客さんが通いつめる。”もし自分がお客さんの立場なら” 常にそう考える真さんから出てくるアイデアは、メニューだけに留まらない。

 

「お客さんから『ここのタルト、自分でも作ってみたいんだけど…』って声をいただいたのをきっかけに、毎月ここで料理教室も開いてるんです。旬のフルーツのタルト作りや、失敗しないホワイトソースの作り方とか、毎回テーマは変わりますけど好評で嬉しいです。最近では、畑も始めました。仕入れ先の野菜屋元さんの野菜がすごく良いものなので、自分たちでも無農薬で作って、それを料理に使ってってしていこうと思って。今後は、この畑でこどもたち向けのワークショップも開きたいですね。野菜嫌いの子も多いですけど、自分で収穫した野菜なら『美味しい!』って食べてくれるんじゃないかな。やってみたいことは色々あります。料理や空間、イベントなどいろんなことでお客さんに喜んでもらえるように考えていきます」

 

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NIWACAFE(ニワカフェ)
うるま市石川曙1-8-13 HN131
TEL:098-927-8607
OPEN:11:00〜17:00
(金.土のみディナー営業あり18:00〜22:00)
定休日:日曜、月曜
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