chillma(チルマ) 眼下に広がる海のパノラマ。壮大な自然に溶け込み、一体となれるヴィラ。

chillma

写真提供:chillma

 

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古宇利島を見渡せる海辺に佇むヴィラ、chillma(チルマ)を最も象徴しているのは、建物に辿り着くまでのアプローチかもしれない。

 

車からカタカタと砂利を踏みしめる音がしたら、chillmaの敷地に入った合図。案内板に導かれて車を止めたところは、何にもない。見渡す限りの原っぱだ。

 

ここなの?と一瞬不安になる。chillmaと書かれたヒンプン(沖縄の古民家によく見られる、外部からの視線を遮る目隠し)の向こう側を覗くまでは…。

 

ブワっと突如目に飛び込んでくるのは、原っぱとのギャップが著しい景色。テラコッタの優しい色の階段を下った先には、こじんまりとかわいらしい建物が並び、その向こうには、セルリアンブルーのプール、そして、それらを包み込む紺碧の海。きっと誰もが声を上げずにいられない。

 

chillmaの主役は、この眺めだ。

 

「一番大事にしてるのは、ここにしかないこの眺めです。この景色をじゃましないよう、外壁の色は、ここの赤土を混ぜて風景に馴染むようにしました。建物が主張しないようにしたんです」

 

何度も塗り直してまでこだわった壁の色の理由を説明してくれたのは、オーナー夫妻の奥様、永田裕子さんだ。

 

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写真提供:chillma

 

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建物が主張しないヴィラ。

 

その言葉通り、レセプション棟や宿泊棟の屋根は芝が一面に張られていて、さながら小さな草原のよう。車窓からの風景が見渡す限りの原っぱだったのは、原野と屋根が一続きに見えたから。こんな工夫があったのだ。人工物である建物も自然の一部に見せてしまう。建物までのアプローチが、chillmaの象徴だと思う理由だ。

 

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chillmaの主役であるグラデーションの海の景色は、室内からも存分に楽しむことができる。

 

「ここのコンセプトは、滞在型。ここにいる間は、あちこちせわしなく出かけるんじゃなくて、ずっとここにいてのんびりしてほしいですね。日がな一日何もしない。そういうのが本当の旅だと思うんです。特に普段忙しい人は」

 

ずっと部屋にいても飽きはしないだろう。ソファに座っていても、ベッドに寝転んでいても、風呂に浸かっていても、鮮やかな海の景色を堪能できる造りだ。1日中、刻々と変わりゆく海の色、流れ行く雲を見ているだけで、心が静かに満たされていく。この景色があれば、他には何もいらない。持ってきた本を開くのもためらわれるほどだ。

 

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キッチンには冷蔵庫や調理器具、調味料、食器がひと通り揃っていて、自炊もできる。

 

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ヴィラの入り口は2つ。プールからあがったら、直接シャワールームへ。洗濯機は各部屋に完備。

 

この海を臨む部屋で、どこで食事をとろうか思わず想像が膨らむ。天気のいい日だったら、風を感じるバルコニーでのんびりとブランチを楽しみたい。

 

「朝の時間もゆっくりして頂きたいので、ブランチというスタイルで9時から11時の間にお部屋にお持ちしています。野菜中心のベジタリアンスタイルのプレートで、パンとドリンク、ホットドリンクをお付けしてます。ベジにしたのは、こちらには珍しいお野菜が多いので。それに外食してるとどうしてもお肉が多くなってしまうでしょう。この辺だと沖縄の銘柄豚あぐーを召し上がることが多かったり。だから朝食はなるべくヘルシーに。ご好評いただいてますよ」

 

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夏場であれば、プールを利用しない手はない。

 

chillmaの醍醐味は、なんといってもこのインフィニティプールだ。

 

インフィニティとは、無限の意味。枠の見えないプールは、海と一続きになって無限の広がりを見せる。プールに入っているのに、まるで大海にいるような開放感。プールサイドには、大人2名が入るにちょうどよい大きさの洞窟のような穴がある。そこにはデイベッドが用意されている。

 

ここで、冷たいドリンクを飲み、眠くなったら眠気にまかせてまどろむ。

 

写真提供:chillma

 

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裕子さん自身が、バリや東京、沖縄の店を回って集めた調度品の数々。3棟ある客室でそれぞれ異なる。

 

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「滞在型の宿だからこそ、居心地の良さにはすごく気を配りました。バリ風だとか南欧風だとか、とにかく何々風っていうのは避けたかったんです。こちらから、ここはこういうところですって主張するのではなくて、あくまでもお客様自身に感じて欲しい。その人なりの、今まで見てきたものや経験してきたものとリンクさせて、好きなように見ていただきたいんです。こっちのカラーが出過ぎると、お客様にとっては居心地が悪いかなって。実際、『南ヨーロッパのどこどこみたい』とか、『エジプトのなんちゃらっていうリゾートに行ったときとそっくり』とか、お客様によって色んな風に感じていらっしゃいますよ」

 

固定されたイメージを押し付けないのは、ここの唯一無二の景色を大切にしたいから、というのもある。

 

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写真提供:chillma
小規模なホテルには珍しい、chillmaのプライベートビーチ

 

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「どこどこ風じゃなくて、あくまでも『ここ』なんですよね。この場所は、東京に住んでいるときに、もっと環境のいい、ゆっくりしたところに越したいと思って見つけた場所なんです。バリ島とか、瀬戸内海の島とか色んな場所を見てたんですけどね。ここを見て、主人共々ひと目で気に入ったんです。全てが東京にないものばかり。海も空も、こういう原野も」

 

住むための土地を探して、この場所にいきついた永田夫妻。しかしこの土地には、インフィニティプールのある滞在型の宿が合っていると、ここの役割をすんなりと変更した。

 

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「旅行が好きで、バリやインド、モロッコなど、色んなところへ行きました。旅行してるうちに、住んでみたくなるんですよね。場所にとらわれることなく、自由に行き来できればいいなと思います。海外にいくぞ、とか、国内のどこどこにいくぞって肩肘張らずに、ただ移動するだけ、みたいな」

 

自由に世界を移動している友人も多く、永田夫妻もそのうちの1組。chillmaも、いずれは暮らすように過ごす場所にしたいと言う。chillmaは、裕子さんのライフスタイルを具現化する場所なのかもしれない。

 

「これからのchillmaの姿、うーん、なんだろ。たとえば、1年のうち、半分は東京、半分は沖縄に滞在して、沖縄にいる間は、ここでもの作りをするとかね。ただ住むんじゃなくて、この場所からインスピレーションをもらって、例えば野菜でもいいし、職業的に何かを作るのでもいい。そういう人が集まれる場所になったらいいですね。でもあくまでも私の思いつきですよ。本当のことを言うと、あんまり先のことは考えてないです(笑)」

 

chillmaは、ゆったりと心を開放して、この景色からインスピレーションをもらう場所。ヴィラやプールだけでない、そこに滞在する人、住まう人も、この自然に溶け込み、一体化していく場所だ。

 

文/和氣えり(編集部)

写真/青木 舞子(編集部)

 

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今帰仁の隠れ家ヴィラ chillma
国頭郡今帰仁村字運天506-1
http://chillma.jp