海の青、砂浜の白、泥のグレイ。
沖縄の海塩を使用し、引き締め効果のあるソープ『LOVE IN OCEAN』と、地中海や死海の粘土と同じ性質を持ち、美容効果の高い沖縄特有の泥『クチャ』のソープ。
東京で慢性的にストレスを抱える生活を送っていたみち代さんは、沖縄に移住し、自然に救われて新たな人生観を得た。現在は沖縄で自然由来の石けんを手づくりし、県内外で人気となっている。
しかし移住直後は、移住が原因で逆に精神的に追いつめられていたという。
– – – 人生で一番辛い時期を救ってくれた『自然』
「沖縄に移住して9年少しになります。以前は東京で設計の仕事をしていました。エコ住宅に関する仕事で、自分なりにその仕事にやりがいも感じていたので、主人の仕事の都合で沖縄に移住が決まった当初は、正直に言うと戸惑いました。沖縄で同様の仕事に就くのは難しいですし、友達もいませんから。
移住後、精神的に不安定な時期が1年くらい続きました。今思えば人生の中で一番辛かった時期かもしれません。自分の存在価値がわからなくなっていたんですね。鬱のような状態になり、寝込む日もありました。まわりに目を向ける余裕はなく、気持ちは常に後ろ向き、仕事もなく、何をしていいのかわからなかったんです。そんなある日、真栄田岬で見た景色に大きな影響を受けました。
まだ暗いうちに行ったのですが、ほの暗い空に朝日が昇ってきて、空がぜんぶマゼンダ色に染まったんです。美しさに息を飲み、後ろを見たら大きな虹がかかっていて。鳥肌がたつくらい感動しました。こんなにすごい景色があるんだって。その景色が私の人生観を変えたんです」
「何でも『こうしなきゃいけない』とそれまで生きてきたのが、『まあいいや』って思えるようになりました。もっとラクに生きても良いんだなって。
思えば東京にいたときは、時代もそうでしたが、どれだけお給料をもらうか、どれだけキャリアを身につけ、良い家に住むか、そういうステイタスのようなもので人と自分を比べたり競争したりしていた気がします。それがどれだけプレッシャーになっていたかということに、沖縄に来てから気づいたんです。自分が救われたことで感謝の気持ちが生まれ、私が沖縄の自然から受けた感動を県外に住む人々にも感じて欲しいと思うようになりました」
– – – 沖縄素材の化粧品会社へ
「移住して1年を過ぎた頃、心に元気が戻ってきました。そこで職業訓練校に通い、『バイオ技術者養成講座』という講座を受講しました。実は、建築をやる前はライオンで商品開発にも携わっていたんです。
その講座に講師として来ていた化粧品会社の社員の方が『ちょうど人が足りず募集している』とおっしゃっていたので、受講後に応募してみたら合格して。商品開発職で就職し、月桃やクチャといった沖縄独自の素材と初めて出逢いました。どの素材からも強い生命力を感じ、『面白いな』と思ったことを覚えています」
「会社で働きながら、さらに沖縄らしい商品を作りたいと思うようになりました。家でリラックスしながら自分でお手入れができるよう、そして心も元気になれるような化粧品を。
それまで趣味で石けんを作っていたのですが、沖縄の素材を入れたら目で見ても楽しい、香りも良い、素材感のある素敵な石けんができるのではと思い、離職してビジネスを始めようと思ったのですが、離職理由を話したら当時の社長が強く共感してくださって。社内ベンチャーという新たな制度を作ってくださり、在職しながら立ち上げました。2年近くは社内ベンチャーの形で事業を行ったのですが、とてもありがたかったです。
会社には6年間勤めて2年前に離職し、今の店舗を構えましたが、品質管理のために今も月に何度かお手伝いに伺っています」
店舗内にあるラボ。『この中では白衣を着て作業しています。これまでの仕事で身に付いたクセのようなもの、白衣を着ると落ち着くんです(笑)』
長い角柱型の石けんを手作業でカットする。
整然と並べられた石けん。こうして乾燥させる。
– – – 自分に合ったアイテムでホームスパを
「原材料に使っているのは 久米島産黒みつ、ウコン、ハイビスカス、海塩、よもぎ、久米島産レモングラス、月桃、伊江島産はちみつなど。最初に作ったのは 久米島産黒みつとあずきの組み合わせの石けん、その名も『ZENZAI(ぜんざい)』。おいしそうでしょう?(笑)。黒みつは保湿力があるし、あずきは奈良時代から古い角質を落とすスクラブ化粧品として使われていたそうです。古来からの化粧品素材ですね。
FROMO では沖縄の自然観を5つのエレメント『太陽、海、風、月、地』に分類し、お肌や心の状態に合った製品をお選びいただけますが、もちろんご相談も承ります。お客様がご自分でホームスパ的なお手入れができるよう、石けんだけでなくローション、モイスチャーやマッサージとして使えるオイル、バスソルトもご用意し、いずれも防腐剤無添加で作っています」
個包装も手作業で。
切れ端は試供品などに用いる。
– – – 溶けづらくハイグレード、可愛さも重視して
「手づくり石けんは水を吸うと溶け崩れしやすいという特長があるのですが、私はそれがいやなので崩れにくく作っています。お客様にもその点を評価頂くことが多いですね。
石けんはフェイシャル用とボディ用に分けているのですが、フェイシャル用は特に原料を厳選し、化粧品グレートのものを使っています。例えば、食用としても用いられるオリーブオイルでも皮膚疾患が出る方はいますので、肌に触れるのに適した良質なグレードの植物オイルを使用しています。
固形石けんは弱アルカリ性なので、古い角質を柔らかくする効果があります。温泉と同じ。アルカリ性温泉ってありますよね、同じ原理です。古くなって必要なくなった角質だけを落とし、つるつるにする作用があるんです。
また、固形石けんは見た目を楽しめるのもいい。女性にとっては特に、どんなものでも可愛さって大事じゃないですか? 成分や効果はもちろん重要、その上見た目も可愛いものを作り続けていきたいですね」
美しいひとだ。
顔のつくりやスタイル、肌といった見た目はもちろん、物腰、心遣い、言葉の選び方、どれをとっても美しいのだが、気取ったところはなく、気さくだ。
沖縄移住は人生でもっとも落ち込むきっかけになったが、自分の人生を振り返り、生き方を変えるきっかけにもなった。
挫折や傷心は人を強く、そして優しくする。
みち代さんは沖縄で見つけた新たな世界で強さと優しさを手に入れ、背負っていた荷を降ろし、力を抜いて、美しく輝き続けている。
これからやりたいことを伺うと、
「生活をトータルで楽しむお手伝いができたらな、と。例えばお茶。口から入るものも大事だと思うので。最近はパティスリーnaruru(ナルル)さんとコラボでギフト商品を作ったりもしているのですが、地元で沖縄の素材にこだわった商品を作っている方と一緒に何かできたらいいなと思っています」
FROMO の名前には「FROM Okinawa (沖縄)/ Ocean(海) / Organic(オーガニック)」などの意味をこめた。みち代さんの挑戦は今後もさまざまな形で『沖縄から』発信し続けられるだろう。
FROMO(フローモ)
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