日髙敏隆・著 集英社 ¥1,300 (税別)/OMAR BOOKS
ああ、この人今「近眼」になっているな、と思うときがある。
また自分が今、「近眼」になっているな、というときも。視野がとても狭くなって、目の前のことしか見えていない、という意味で。
何かに夢中になっていると、それが集中力をあげてくれるいい面もあるけれど、そういうときはどうしても心も狭くなる。
一人で思い詰めたりする。そんな、気持ちが偏りがちなときに、この本『世界を、こんなふうに見てごらん』をおすすめしたい。
著者の日髙さんは、動物行動学者。私たちに耳慣れないかもしれない、「動物行動学」の専門家という立場から、世界を見たらこんな風に見えるというエッセイ集。
一般の人に向けて連載していたのをまとめたものなので、まずとても読みやすい。分かりやすい文章で、普段私たちが何気なく見ている世界の本質をさりげなく語っている。
文章の軽やかさがとてもいい。押し付けがましいところが全然ない。
このエッセイの中で著者は「つきつめないほうがいい」とよく言う。
ある種のいいかげんさは必要だと。生物学者がそういうのだから、と読者は気が楽になると思う。特に頑張りすぎている人などは。
彼は、自身の中にいくつもの視点を持つことを私たち読者に勧める。
引き出しが多いとはこういうことを指すのだろう。
例えば、目の前にあるルールだけが全てではない、ということやこういう考え方もあるのでは、という柔軟さが私たち自身を自由にしてくれる、ということを教えてくれる。
読んでいて、きっとこの日髙先生は「面白がるのが上手な人」だったんだろうなと想像する。得てしてそういう人の周りには人が集まりやすい。現に日髙先生の周囲はとても賑やかだったようだ。
読み終わる頃には気持ちの「近眼」もいつのまにか治っている。
生き方の柔らかさ、を反映したようなこのエッセイ集。
いろいろあっていいんだな、と私たちを優しく肯定する良書です。
OMAR BOOKS 川端明美
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