『 木に持ちあげられた家 』さあっと優しい風が通るような音がする。心地のよい絵本。


作 テッド・クーザー 絵 ジョン・クラッセン 訳 柴田元幸 スイッチ・パブリッシング ¥1,900(税別)/OMAR BOOKS  

 

3月は芽吹きの季節のせいか、なんだか気持ちがわさわさとする。
4月の新しいスタートに向けて忙しくしている人も多いはず。
それでもちょっと珈琲を入れて、お気に入りの椅子に腰を下ろし絵本を開いてみるとすっと落ち着きを取り戻す。今回ご紹介する絵本もそんな作用があるよう。

 

刊行されてまだ新しい絵本『木に持ちあげられた家』は、今絵本作家として世界中で人気のあるジョン・クラッセン。ストーリーはアメリカの詩人でもあるテッド・クーザー。翻訳はポール・オースター、スチュアート・ダイベックなどアメリカ文学の魅力を伝え続けている柴田元幸さん、と豪華な顔ぶれの揃った一冊。

 

表紙を開くと、画面の中央にぽつんとある一軒の家。物語の主人公はこの家だ。
ゆっくりとページをめくっていくと、淡い色合いと繊細な線がとても優しい。
見開きには空が大きく広がり、さあっと一陣の風が通る音が聞こえてくるような気がする。心地のよい絵本だ。

 

 

不思議とこの物語の中に出て来る人たちの顔は描かれていない。
父親も子どもたちも後ろ姿や、足元だけ。
でもそれだけ読む人が自身を重ねやすいのかもしれない。

 

自然に囲まれた一軒の家が変わっていく様、つまり描かれているのは「時間」。
ただ流れて過ぎていく時間の不思議さや儚さ。同じ時間は二度とない。
読んでいるとその時間が愛おしく思えてくる。

 

せかせかした日常に優しい風を送ってくれる。
贈り物にもおすすめしたい一冊です。

OMAR BOOKS 川端明美




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