『ぼくがつぼくにちぼくようび』子どもスイッチがオンになる絵日記。ほのぼのとして無邪気、でもどこか切ない…。

ぼくがつぼくにちぼくようび
荒井良二・著 平凡社 ¥1,260/OMAR BOOKS
 
―子どもスイッチ、オン―
  
 夏、真っ只中。
誰かに会えば、開口一番皆「暑いね」を口にする。
でも子どもはどんなに汗だくになっても「暑い」とはあまり言わない気がする。ま、それはさておいて。
 
先日、知り合いと話していて、子どもの頃の夏休みの宿題が話題になった。
「夏休みの友」というのがあった。
最初のうちは張り切って先の日の分までやり、途中から滞るようになり最後に焦って家族まで巻き込む、というのがよくあるパターン。
 
「自由研究」もまたどの子も大体苦労していたけれど、その知人は「絵日記」を描くのが楽しかったという。それも空に浮かぶ「雲」の絵だけを毎日描き続けたらしい。色のバリエーションはそんなにないけれど、同じ形の雲は一つとしてない。しかもその姿は刻一刻と移り変わる。
額にだらだら汗をかきながら空を見上げては、夢中で白い紙に流れる雲を黙々と写し取る小学生が目に浮かぶ。
  
そんな話を聞いた後、手にした今回紹介する単行本サイズの絵本『ぼくがつぼくにちぼくようび』。
国内外で大人気の絵本作家、荒井良二さん(代表作に『太陽オルガン』)の作品。
ページを捲っていたら最初の方に、子供の頃に雲の観察日記をつけていたことを思い出すぼくが出てきて、あ、ここにもいた、とうれしくなってしまった。
 
この絵本、毎回見開きごとに(ぼくがつぼくにちぼくようび)と打たれ、カラフルな絵日記が展開する。
内容から察するにこのぼくは大人。
でも五歳児のような絵。
子どもなのか大人なのか、そんなのはどっちでもいいと思える無邪気で優しい世界が広がっている。
 
荒井さんには大人のファンもとても多い。
誰の中にも「子どもスイッチ」みたいなものがあるとするなら荒井さんの作品(絵)は間違いなくそれをオンにしてくれる。そのスイッチを自由自在にオン・オフ出来る大人っていいなと思う。
  
またその絵に添えられた日記はほのぼのとしていてどこか切ない。
そっか、日記って基本切ないものなんだ。
書かれた時点ですでに楽しいこと、悲しいことは全て過去になってるんだものね。
  
大人に読んでほしい、読むとほっとするこの作品。
きっと子どもの頃の自分に出会えます。

OMAR BOOKS 川端明美




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