『ほしいものはなんですか?』アラサー、アラフォー女子のほしいもの。「保証」「存在感」・・・それって誰かがくれるもの?

益田ミリ・著  ミシマ社  1260円/OMAR BOOKS

― 張り合う必要はないのです ―
 
特別不幸でもないのに、もやもやした漠然とした不安を抱くとき、ふと気持ちを軽くしてくれるのが益田ミリさんの本。
たくさん出ている彼女の漫画作品の中で今回紹介するのは『ほしいものはなんですか?』というすぐには答えが出てこないようなタイトル。

妙齢の女性の心理を描くことにかけてはダントツの彼女。
この本では専業主婦のミナ子と独身一人暮らしのタエ子という悩める二人の女性とミナ子の娘リナちゃんを軸に話が進んでいく。

リナちゃんは立場の違う二人の女性を見ながらつぶやいたりする。

「大人って歳を取りたくない話が好きだなあ。人間にちょうどいい歳があるんだとしたらそれって何歳?」

というような鋭いことばだったり、

「何になりたかったの?」

という無邪気な問いに、平凡に生きる彼女たちはこれで良かったの?と考え始める。

主婦のミナ子はまわりから「幸せ」と言われながらも、人生をマシなものにしたいと口をついて出た自分の言葉に驚く。

タエ子と姪にあたるリナちゃんが交わす会話がまた秀逸。
ほしいものはなに?と聞かれて「保証」と答える独身のタエ子。
それ誰かにもらうものなの?とさらに聞かれ、誰かひとりの人にもらうものではないのかもね、とタエ子はリナちゃんに答える。

この本を読むと専業主婦には専業主婦の、独身の働く女性には独身女性のそれぞれの大変さや悩みが素直に伝わってくる。

ミナ子もタエ子もあるとき気付く。どちらが幸せなのか、知らないうちに張り合わされている、と。そんな必要もないのに。
世間や他人の言う幸せを自分にあてはめるんじゃなくて、大事なのは自分はどうありたいかなんだということ。

そして物語の後半、魔法のような言葉をリナちゃんが言ってくれる。そうそう、と大きくうなずいてしまう。

読んでいくうちに、ちょっと待てよ、と立ち止まって考えてしまうエピソードの数々。
そしてシンプルでのほほんとしているような絵でありながら、実はけっこう毒のあるセリフを登場人物たちが言ったりするのも益田ミリさんの作品の魅力。

アラサー、アラフォー女性の心の琴線に触れる肯定に満ちた優しい物語。
最後についつい「ほしいものはなんですか?」と自分自身に問いかけたくなる一冊です。



OMAR BOOKS 川端明美



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