(洋書・ハードカバー)
Matteo Pericoli・著 Simon & Schuster社 1,793円(参考価格)/OMAR BOOKS
― 窓で切り取られた風景のコレクション ―
日に日に深まっていく秋。
憧れるのは赤や橙色や黄色の鮮やかな落ち葉が折り重なった上を、
カサカサと音を立てて踏みしめながら歩くこと。
でも沖縄に住んでいる身としては想像で楽しむしか術がない。
例えば、ニューヨークの秋。なんて、もう代名詞のようだけど、
きっと今の季節はきれいなんだろうなあ、と思いを巡らす。
そのニューヨークの街を面白い視点で描いた本があるので、今回はそれをご紹介します。
『The City Out My Window』は画家のマッテオ・ペリコリがニューヨークに住む様々な人たち(職種、人種、年齢はばらばら)に、
あなたのお気に入りの窓から見える景色を教えて下さい、
というリクエストから出来上がった本。
そしてマッテオがそれぞれの部屋から見える彼らのお気に入りの景色を
窓のフレームごと切り取り、緻密なモノクロのスケッチによって再現している。
大きさも形も異なる窓から見える、さながら風景のコレクション。
その窓のスケッチの下には
部屋の住人がなぜこの窓が好きなのか、
毎日どんなものを見て、聞いて、感じて、生活しているのか
といった説明がついていてそれを読むのも面白い。
窓の中に登場するのは、
ニューヨークらしい、きらきら反射する高層ビルや排気管、
映画のワンシーンのような赤レンガの壁に備え付けられた外梯子、
屋上のウォータータンク(ニューヨーク名物だそうだ)、
はるか遠くに見えるセントラルパークのこんもりした緑や通りに並ぶ車の長い列、など。
気付くと読者もその部屋の住人になって窓の外を眺めているような気分に。
その一つ一つの風景に寄せた文章がまたバラエティに富んでこの本を面白くしている。
―ニューヨークで一番美しい景色だけど、夜見るのがもっといい。女性みたいにね。
ていうちょっとキザっぽいのや、
―夜明け、鳥のさえずり、朝、トラック、昼、テレビ、午後、子供たちの声、夕暮れ、車、夜、サイレン、静寂。
と単語だけを並べてその窓から見える一日を連想させるものだったり。
何度も飽きずにページを捲っているうちに不思議な安堵感に包まれる。
それは自分もまたいくつものストーリーの登場人物だと思えてくるから。
風景も人も変わり続ける。
だからこそ日々の営み、くり返しのかけがえのなさ、そのすごさが伝わってくる。
窓の外に目を凝らし、耳を澄ませば、豊かな時間は私たちのすぐ目の前にあるんだなあ、と。
あなたの部屋の窓からは今、何が見えますか?
OMAR BOOKS 川端明美
OMAR BOOKS(オマーブックス)
北中城村島袋309 1F tel.098-933-2585
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駐車場有り
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