『 おぱらばん 』フランス留学中の真珠のようなエピソードが丁寧に綴られたエッセイ。


 
堀江敏幸・著  新潮社 ¥438(税別)/OMAR BOOKS
 
― ささやかな偶然と読書のすすめ―
 
「本はどうやって選ぶんですか?」とお店でよく聞かれる。
その時によって答えはまちまち。
 
でもまずは、好きな作家の本、好きな作家についての本、好きな作家の好きな作家の本、といった感じで芋づる式に手に取ってきた。
それに加えてテレビやネット、雑誌での書評や、友達の感想、表紙や帯(本に巻いてある腹巻みたいなもの)の言葉、またはそのときの気分、とけっこういいかげん。
 
あとは、本を開いた時のぱっと目に入るページの印象。
「あ、これ、読も!」とすんなり決まる時がある。
たまに採用するのがこの方法。
ページの顔とでも言えばいいだろうか。
開いた紙上には文字がただ並んでいるわけだけれど、
何となく見ていて気持ちいいものとそうじゃないものがある。
ひらがなと漢字のバランスだったり、句読点の数だったり微妙な違いがあって、
それは人の表情に似ている(まさに字面)。
人と同じでガツガツと前に出るようなものもあれば、
間が抜けたようなかわいい感じのものもある。
  
今回紹介するのは冷静沈着で、でもどことなくユーモアも漂う品のいい紳士といった表情を持つ本です。
 
「おぱらばん」って一体何だろう?
と思わせる面白い響きの表題作を始め、
著者がフランス郊外に暮らしていた頃の日々を綴ったエッセイが収められている。
 
堀江作品はいつも人と人が出会って重なっていく時間を大事に掬い取るように描く。
次から次にエピソードが真珠の首飾りのように繋がっていき
小さな物語のラストはいつも意外なところに落ち着くところが魅力。
 
もう一つの魅力は「偶然」がキーワード。
 
例えばたまたま普段は見ないテレビを点けたら知り合いが出ていたといったような、淡々と地味に過ぎていく毎日の中に偶然がたくさん潜んでいる。
他人に言うほどではないちょっとしたことだけれど、
自分の胸の内にしまっておきたいささやかな偶然。
でもそれに気付くのはその人次第。
そういう偶然に気付けたら毎日が楽しくなるはず。
 
自分にぴったりの本に出会うのもまた偶然。
いい本に出会うためにはとにかく読むこと。
数をこなしていくと鼻が利くようになるのです。
というわけで皆さん本を読みましょう。

OMAR BOOKS 川端明美




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