『 花言葉をさがして 』花にだけ心を許せる主人公に隠された過去とは? 自分の花を開かせるのに必要なのは、愛情。巻末の花言葉事典も素晴らしい!

 
ヴァネッサ・ディフェンバー 著  ポプラ社 ¥1,680/OMAR BOOKS 
 
― かたい蕾が花開くとき ―
 
ラナンキュラス。
最近憶えたばかりの花の名前。
開きかけのきゅっと丸まった姿がかわいらしい。
花言葉は「そのままのあなたが素敵」。
今回紹介するのは物語を彩る花言葉がたくさん出てくる小説です。
 
主人公のヴィクトリアは生まれてすぐに母親に捨てられて
里親のもとを転々として育つ。
人に少しでも触れられるのが怖い彼女が、唯一心を許せるのは「花」。
 
グループホームを出て住む場所も、仕事も、頼る人もない彼女は
ふとしたきっかけで小さな花屋「ブルーム」で働くことになる。
店を訪れる客たちはみな何かしら悩みを抱え、
そんな客たちにヴィクトリアは花言葉を添えて花束を渡していく。
 
ようやく平穏な生活を手に入れたヴィクトリアと周りの人々にも変化が訪れるが、後半に進むにつれて彼女の過去の秘密が明らかになっていく、といったストーリー。
 
この本の魅力はミステリアスな、
ぐいぐいと引き込む展開のストーリーはもちろんのこと、
主人公が花屋で働く様子や
出入りする市場や花農園に並ぶ色とりどりの花々を想像するのが楽しい!
 
子どもの頃くり返し読んだ
バーネットの『秘密の花園』を思い出して懐かしくなった。
花には秘密が似合う。
 
この物語に出てくる人たちは皆孤独であるがゆえ花を愛している。
そしてそんな彼女(彼ら)たちを結ぶのは花言葉。
 
ローズマリーは「記憶」、
白いカモミールは「逆境を乗り越える力」、
さくらは「はかなさ」など、
ヴィクトリア朝の時代から続くと言われる言葉たちが
物語の中に散りばめられ静かな輝きを放っていた。
 
かたい蕾のようなヴィクトリアの心が
次第に外の世界に向かって開いていく様子はまさに花そのもの。
 
その人がその人自身の花を開かせることが出来るには
太陽の光や水に代わるものが必要だ。
それは「愛情」でしかない。
 
与えて与えられて開く花々はどんな色でも、どんな形でも美しい、
そう伝えてくれるような小説。
 
巻末にはヴィクトリアの花言葉事典が付いているのもうれしい。
読み終えたら憶えたての花言葉を誰かに贈ってみたくなるはず。
 
最後に太宰治の言葉を。
「人間も、本当によいところがある。花の美しさを見つけたのは人間だし、花を愛するのも人間だもの。」/「女生徒」より。

OMAR BOOKS 川端明美

 
 
blooming at home -the scene of flowers- 暮らしに花を

期間:3/24(土)から 4/1(日)
open:14:00~20:00
close:月
場所:OMAR BOOKS
 
美味しいものや本や音楽。
私たちの生活には欠かせないもの。
お花もそうであってほしい。
あなたの毎日のワンシーンに、
お花を飾ってみませんか。
この期間だけ本屋がお花のある生活の場になります。
花と本の出会いをお楽しみ下さい。

 
ミニブーケ+本の限定セットもご用意してお待ちしています。

OMAR BOOKS 川端明美

 

OMAR BOOKS(オマーブックス)
北中城村島袋309 1F tel.098-933-2585
open:14:00~20:00/close:月
駐車場有り
blog:http://omar.exblog.jp