『 立体で見る [ 星の本 ] 』思わず手を伸ばして触れたくなる美しさ。紙面に現れる星座たち。

星の本
杉浦康平、北村正利・著 福音館書店 ¥2,200                   

 

夏が近づいて来た。またあの暑さを思うと今から辟易してしまう。
そんなときたくさんの絵本にまぎれて店にやってきた今回紹介する

 

『 立体で見る [ 星の本 ] 』。
だいぶ年季が入っていて、奥付を見ると1986年に出て以来、何度も再版を重ねている。

 

福音館書店から出ている「かがくのほん」として大人から子どもまで楽しめるこの本。
開いてみてすぐ懐かしい気持ちが湧いてきた。 

 

紙でできた星座盤は誰でも目にしたことがあるはず。
初めて手にしたのは小学生の夏。確か理科の授業で使い方を教わった。
とにかく早く試してみたくて夜になるのを待った。
庭に出て妹弟と一緒によく星座盤を覗き込んでああでもない、こうでもないと照らし合わせながら夜空を見上げていたのを思い出す。

 

ベガ、アルタイル、デネブの名前の響きに引かれた夏の大三角。
遠い小さな光る点と点を結んで図が浮かび上がる北斗七星を楽しんでいたあの頃。

 

この本を捲っているとそのときの幸福な時間に包まれる気がしてくる。
紙面のむらさき色の空に、大小様々な星が散りばめられいくつもの星座がかたどられている。
気の遠くなりそうな圧倒的な数の星々。
それらを付属の赤と青のセロファンの立体めがねで覗くと・・・・・・。
しばらくコツがつかめず焦点をずらしたり、じっとめがねを通して
たくさんの粒を見つめていると、わっと思わず声が出た。
これは実際見てみないと分からない美しさ。
紙面に突然現れる深い空間に吸い込まれそうになる。

 

思わず手を伸ばして触れたくなる繊細な線で出来た、おおぐまや、きりん、うしかいやかんむり。
それが遠くなったり近くなったり、いつのまにか自分自身もその星座の一部になったような錯覚に落ちる。

 

毎年変わることなく季節が巡る。同じように夜空の星座たちも回り続ける。
それはすごいことなんだということを大人になると忘れそうになる。

 

そんなときはこの本を開いて、目を凝らしながら空を見上げることにしよう。

 

OMAR BOOKS 川端明美

 


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