柴崎友香・著 河出書房新社 1,575円/OMAR BOOKS
― だんだんと難しくなっていく ―
「恋愛小説」今まで避けてきました。
嫌いじゃないけど、得意分野ではないので。
でも今回は久しぶりにどっぷりはまってしまった。
著者は若手の(もうベテランとも言ってもいいかもしれない)女性作家で期待されている一人。
主人公、朝子の22歳から31歳までの
大阪―東京の間の10年の恋の軌跡が描かれる。
読み終わってついついため息が出た。
こうなりますか、と。
でもこうなるよね、とも、
何ともたまらない気持ちになった。
人は人のどこを好きになるのだろう?
とはこの本の帯に書かれた言葉。
ほんと、どうなんでしょう。
誰かを好きになるのに理由なんてない、とはよく言ったもの。
写真を撮るのが好きな朝子は消えた恋人・麦の顔にこだわる。
そして同じ顔をした別人が彼女の前に現れて・・・というお話。
読んでいると、人は自分の見たいようにしか見ない、というのを思い出した。
理由がなくても錯覚していられれば、それはいつか本当になるんだろうか。
恋愛の渦中にいるときはタイトル通り起きていても夢の中にいるようなもの。
主人公の朝子はずっとそこから抜け出せず、ただ時間だけが過ぎていく。
「執着」。
恋愛の代名詞。
メロドラマを期待されるとちょっと違うけれど、ある意味ではそれより生々しい。
後半、朝子が起こす行動はまさに恋愛の残酷さを物語っている。
たたみかけるような場面が続いて息を詰めてページをめくった。
え、どうして!と思う人もいれば、納得する人、
読んで抱く感想は人それぞれだと思う。
朝子が心の中でつぶやく
―知らない人と話すのは簡単で、知っている人と話すのはだんだんと難しくなっていく。
恋人のことだけではなく、また友人たちもいろいろ抱えている。
相手のことを分かっていたようで実は何も分かっていない。
大切なことは何も話さず、ただ一緒にいるだけでただその周囲をぐるぐるまわっている幼い大人たち。
この小説の中には誰もが見たことのある風景が広がっている。
誰かがいなくなってしまった日の空の青さだとか、
寝不足の夜明けに佇む友人たちだとか、
そのとき流れていた音楽や匂いだとか。
目下恋愛中の人も、恋愛から遠ざかっている人も、
読むとすぐさまその時の気持ちが蘇ります、おそらく。
OMAR BOOKS 川端明美
OMAR BOOKS(オマーブックス)
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