『 仕事の小さな幸福 』いい仕事を続けさせるのは「小さな幸福」。仕事に対する想いを丁寧に掬い上げたインタビュー集。

 

木村俊介・著 日本経済新聞出版社 ¥1,500(税別)/OMAR BOOKS  

 

「仕事」や「働くこと」に対する関心はどんどん大きくなっている。それは自身の仕事(本屋)をしていても実際に感じることが多い。一生のうち多くの時間を費やすものだから、それは至極当然のことかもしれない。でも時々、巷にあふれる「仕事観」みたいなものに違和感を覚えることがあって、どこかポイントがずれていないだろうか(自分も含めて)とすっきりしないときがあった。
そんな気持ちに応えてくれるかのように最近出会ったのがこの本『仕事の小さな幸福』。人気インタビューア・木村俊介さんによる、18人の異分野の人たちの仕事に対する想いを丁寧に掬い上げたインタビュー集。

 

「いちばん正しい答えではなくても、今はそれでやっていく、でいいや」
(箭内道彦、18頁)
「たとえば、百やって(返ってくるのは)五十くらいかな、と。百やって千返ってくるのは嫌なんです。〔中略〕百やったのになあと思わないのがいい仕事だと思っていて。」(角田光代、23頁)

 

登場するのは、作家、起業家、イラストレーター、写真家、生物学者、陸上選手など。
一般にその道で名の知られた人たちの「素」の言葉が散りばめられている。それを読んでいくと、私たちがよく知っているのは表の華やかな部分だけで、その裏には日々悩み、もがき、小さなことを少しずつ積み上げていく作業があってこそ、ということがよく分かる。まるで話し手それぞれがインタビューアの木村さんに、ぼそぼそと静かに語りかける声が聞こえてきそうだ。一人一人の意外な一面を覗けたり、仕事へのひたむきな姿勢を比べて読む事が出来るのも面白い。

 

木村さんはインタビューを続けるうちに、仕事をする中での恵みや、実り、納得、充実などの“小さな幸福”と呼べるような実感こそがその人にいい仕事を続けさせるのでは、という考えを次第に深めていく。成功や勝ち負けや利益追求だけではない。
働くことの喜びは、楽ではない、地道な仕事の継続に支えられている。そこをすっとばして美味しいところだけ、というのはちょっと違う。そういった日々の業務の大切さがしみじみと伝わってくる良書。

 

読み終えると、明日からまた自分の仕事をまずは出来ることから頑張ってみようかな、と元気が湧いてくる本。働くすべての人に読んで頂きたい一冊です。

OMAR BOOKS 川端明美




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