著 ケイ・マグワイア/文 ダニエル・クロル/絵 さいとうみわ/訳 アノニマ・スタジオ ¥2,800(税別)/OMAR BOOKS
2月に入ってまた寒さが戻って来た。先月は39年ぶりに観測されたというあられのニュースで持ちきり。その前後の数日は気温10℃を切っていて、暖かいといわれる沖縄でもこの冬は寒さを満喫している。庭に出ると木々もどこか寒々しくて、すぐ暖かな室内に引き上げてしまう。今手元で開いている絵本『自然のとびら』の冬の章「凍る水面」を眺めていて、家の裏に置かれた貯水池(のようなもの)でおたまじゃくしが浮いていたのを思い出した。
「冬のさむい数ヶ月のあいだ、池の底のどろのなかにはアマガエルとイモリがヒフで呼吸をして眠っています」(本文より)
今も裏の貯水池では春はまだ先、とカエルが眠っているかもしれない。普段は見落としていても、ちょっと気を付けて見渡してみると、小さな生物や植物たちもこの寒さの中でひっそりと息を潜めている。
今回ご紹介する『自然のとびら』をめくっていると、こういった生活の中のちょっとした発見があちこちに。この大判の絵本の著者は、イギリスの有名な「キュー王立植物園」で研究をしながら、ガーデニングや野生生物に関する書物やフィルムの制作を行っている作家兼園芸家のケイ・マグワイア。優しい自然色で描かれている絵は、イラストレーションから生地のデザインまで手がけるダニエル・クロルが担当している。
鳥たちの夜が明ける頃のコーラスから始まる本書では、庭・野菜畑・森・農場・畑・池・果樹園・街での四季の移ろいを、大きな紙面で見て、読んで、楽しむことができる。ひとつひとつのスケッチに目を凝らしてもいいし、文章を声に出して読むのもいい。寒さで堅くなった木の実や、家屋の隅に張る蜘蛛の巣、触るとすぐ崩れてしまいそうな落ち葉、次の種まきを待つ掘り起こされたままの畑の土、生け垣からのぞく名前も知らない葉の落ちた枝。私たちは自然の中のこんなにも多くのものに囲まれて生きている。それを思い出せてくれる入り口のような絵本。
寒さで縮こまった心と身体をほぐしてくれるような、大人も子どもも一緒に楽しめる一冊。プレゼントにもぜひ。
OMAR BOOKS 川端明美
OMAR BOOKS(オマーブックス)
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