ヘルマン・ヘッセ 著 V・ミヒェルス 編 岡田朝雄 訳 草思社 ¥1,900(税別)/OMAR BOOKS
秋もそろそろ終わりに近づき、冬の気配をそこかしこに感じる。降る雨ももう次の季節の匂いを含んでいて、こちらも冬支度を始めないとなあという気にさせられる。仕舞い込んだ厚手のカーディガンに毛糸のセーター、フェルトの履物にブランケット。
沖縄の冬にはまだ気が早いようなものでも出さずにいられない。
季節感というのにも人それぞれあるだろうけれど、例えばヘッセのこの『庭仕事の愉しみ』を読むと、草花の小さな変化にも何か大きな自然の営みの謎が隠れていて、その調和の上に保たれている世界の深淵を垣間見るようだ。
「土と植物を相手にする仕事は、瞑想するのと同じように、魂を解放させてくれるのです」人生の後半、多くの時間を庭に費やしその間執筆した彼の作品や言葉には、その庭仕事を通して紡がれた思索の跡が、耕した畑の畝のようにくっきりとした線となって浮かび上がる。
種は芽を出し、葉をつけ花や実となり、盛りを過ぎ、実は熟しまた土に帰り、また次のサイクルへの準備を始める。四季の中で繰り返される生と死の循環。終わりがない。ただ続いていく。だからこそそこに希望を見出すことはできないだろうか。
ヘッセの自筆による、草木や花々を描いたカラー水彩画20点と庭での生活の様子を伝える写真を収めた本書。自然と人生を深く見つめる作家の眼差しは過去、現在、未来を超えて普遍であり続けるだろう。
巡る季節の中で、その視線の先にはもちろん私たち、もいる。
OMAR BOOKS 川端明美
OMAR BOOKS(オマーブックス)
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