MIREI(ミレイ)平面だけでなく、周りの空気までも温めるイラストを




少しだけデザインの違う水色のワンピースに同じ色のリボンでおめかしした姉妹。
パーティーにお呼ばれしてうきうきしている2人の気持ちや、仲の良い姉妹の雰囲気が伝わってくるような、
温かい、そしてなぜか少し懐かしい気持ちになる絵。
色々なしがらみや日常の慌ただしさからふっと心をすくいあげてくれるような、
優しさに満ちた絵。


「見ていると気持ちが明るくなったり、優しくなったりする絵が好きなんです。
力が抜けるというか、素直になれるような。
『私はこうなんだ!』と強く押し出したいイメージはなくて、
見ていて気持ちが良くなる絵を描きたいといつも思っています。」



カラフルな、ナチュラルな、静かな、いろいろな「鳥」 


TV・CMのキャラクターや広告、パッケージなどのデザインを手がけ、
県外や海外で個展を開いたりと、世界を股にかけて活躍しているMIREI(ミレイ)さんだが、


「4歳から高校2年まではバレエ一筋の人生でした。
ずっと絵は好きでしたが、その道に進むことは考えていなくて、ただ楽しんで描いているだけ、一番はバレエでした。」


高校2年。受験を控えた時に初めて、将来をどうするかについて具体的に考えた。


「普通の大学に行っても何をやったら良いのかわからないし…と迷っていた時に母が、
『絵が昔から好きだし得意な方じゃない?芸大に進んでみたら?』
とアドバイスしてくれて。
私はそれまで美術部に入ったこともないし、
いきなり芸大?デッサンも描けないのに…とびっくりしたけど、
好きなことを活かせる道に進めたら良いかも、と思って。」


それから芸大受験のために美術の予備校に通い始めたが、
周りはみな、美術経験豊かな人ばかりだった。


「自分はデッサンの基礎もできていなかったので、すぐに打ちのめされました。
でも、それで逆に『みんなと同じくらいのレベルになりたい!』と火がついたというか。
バレエにだけ向けられていた情熱が絵の方向に向いたんですね。」


もともと、情熱的な性格だったのかもしれない。
大学受験合格を目的に始めた美術の勉強だったが、
学んでいくうちにのめり込んでいった。
勉強の甲斐あって県立芸大に無事合格、本格的な絵の勉強が始まった。


「その頃イラストレーターという職業を知り、素敵だなと。」


在学中から、夢は固まっていった。
 

女の子のスカートをめくるというアイディアも可愛いカレンダーとポストカード
 

イラストレーターは、なりたいと思ってもすぐになれる職業ではない。
大学卒業後、夢を持ち続けながら上京、
広告制作会社に就職してデザインの仕事を始めた。
 
「イラストはデザインの中に入ってくるものなので、
『3年間だけ勤めよう』って決めて就職しました。まずは修業だ、という気持ちで。
実際、3年経った頃にはイラストレーターになりたい気持ちがマックスになっていたので、予定通りぱっと辞めて。」
 
活動拠点は沖縄と決めていた。
 
「インターネットもあるし、どこに住んでいても発信はできます。
それに、制作環境として自分には一番合った場所ですし。
沖縄から発信したいという気持ちはかなり前から抱いていました。」
 
自分の目標や夢から目をそらさず、まっすぐに歩み続けたMIREIさん、
その才能が開花するまでそう時間はかからなかった。
神戸、大阪、東京、パリ・・・各地で個展を開いて精力的に活動を行い、
県内外から舞い込むデザインの仕事をこなし、
沖縄でもMIREIさんデザインのキャラクターや作品は到るところで活躍し、
そのけれんみの無い素朴な可愛らしさで人気を博している。
 

  
MIREIさんはイラストを描く時、同じモチーフを何度も描くという。
 
「例えば女の子を描くとすると、その子が生き生きしてないといやなので、
イメージ通りにいくまで同じような子を何度も描いて、一番生き生きした子を選ぶんです。
ばーっと沢山描いて、消さずに残しておいて。
何回描いても絵が生き生きしないという日もあります。『全然のらないな』って。
そういう時は少し時間を置いて、また次の日に描いてみたり。
一発でかける日もありますが、それでも何度か描きます。
でも『やっぱり最初の子が良かった〜』となるんですね。
生き生きした絵を描いてる時は自分も楽しいので、その気持ちが作品にものりうつるみたい、
線も生き生きしてくるのがわかります。」
 
描くモチーフが決められておらず、純粋に自分が描きたいものを描く時は、
想いを表現することに気持ちを集中して描くMIREIさん、
最近はその「想い」にも変化が出てきたという。
 
「去年子どもが生まれて。それ以来、漠然とですがとっても優しい絵が描きたくなりました。
そのぼんやりとした自分の想いを描くのが難しいところですね。
『柔らかい感じ』とか『ふわふわした感じ』みたいな、空気のようなイメージを絵にしたいので
描けなくて苦しくなることもありますが、やっていくうちに徐々に形ができて来て、
『これだー』って楽しくなります。」
 
絵に対する想いにも広がりが出てきた。
 
「絵は自分の子どもと同じ存在なので、これまでも愛情を持って描いてきましたが、出産を経験してその愛情が広がった気がします。
絵という平面だけじゃなく、その絵の周りにある空気までも温めたいというか・・・
それくらい愛があふれでてきちゃってます(笑)」
 

ふとんが大好きな「とんちゃん」が主人公のオリジナルの絵本も描いた



引き出しの中には直筆の作品が。購入可能。








先日、初めてのワークショップを開催した。
MIREIさん手づくりの消しゴムスタンプを好きなように押し、オリジナルのノートを作るというもの。


「初めて消しゴムスタンプを作ったんですが、すっかりハマっちゃって(笑)
子どもが寝ている間に作って、気がついたら60個くらいできちゃって。」


ワークショップ当日、スタンプを押すのが大好きな子ども達だけでなく、大人も沢山集まった。


「スタンプさえ押せれば誰でもできるので、2歳くらいの子から参加してくれました。
自分が作ったスタンプなんですけど、皆さんが押したものを見ると表現が様々ですごく面白かった。
意外に大人の方が『どこに押そうか~』ってお子さんより真剣な顔で悩んでいらしたり(笑)
小ちゃい子たちはもう夢中になって押していて。
そういう姿を見たら、またやりたいな~って思いました。」



陶芸作家 金城有美子さんとコラボレーションした花ピアスは人気商品の一つ





「絵はもちろんだけど、ものづくりが好き。」
というMIREIさん。
沖縄の工芸作家による作品を展示販売している「tituti(ティトゥティ)」との共同プロジェクトで、
他分野の作家さんとのコラボレーションにも取り組み始めた。


「あれもやりたい、これもやりたいって、もう大変なんです(笑)
でも、その道の作家さんから実際に教えて頂きながら作業をするのもすごく楽しいですね。
新しい表現ができるので、わくわくしています。」


ご自身の絵のようにふんわりと優しい雰囲気のMIREIさん、
家族が増えたことで活動にブレーキがかかるどころか、楽しそうにアクセルを踏んでいるように見えた。


「だって、イラストレーターになりたいと思った理由の一つは、
子どもを育てながらできる仕事だから、なんです。」


絵からあふれんばかりの愛情と、
見た目からは想像できない持ち前のバイタリティーで
MIREIさんの世界はどんどん広がっている。

写真・文 中井 雅代

 

LE PETIT ATELIER de MIREI
那覇市牧志1-2-6 MAP
098-862-8184
open:13:00〜19:00
close:水
最寄り駅/美栄橋(徒歩15分)
HP:http://www.mirei.net
ブログ:http://lpam.ti-da.net