» NAHA ART MAP那覇の街歩きを楽しもう! 高感度なショップにスージぐゎーの散策スポットなど、こだわり満載の地図

那覇アートマップ

 

オーナーのこだわりが詰まった、個性的なショップだけを記した地図があったら…。そんな要望に100%応えるマップがある。

 

発行から4年目を迎える「NAHA ART MAP」は、国際通りを挟むように伸びるニューパラダイス通りと浮島通りを中心に、街に点在する高感度な店を網羅したオリジナリティ溢れる地図だ。

 

国際通りから一歩裏道へと入ると、NAHA ART MAP を片手に、目当ての店を探しながら散策する人々とよくすれ違う。

 

「マップを持って店に入って来られる方がすごく多いんですよ!」

 

マップの掲載店舗、「 anshare project (アンシェアプロジェクト)」のオーナー・上原さんは語る。

 

「掲載して頂くようになってからお客様の数も増えていますし、ありがたいですね。
ほとんどのお客様が、うちにいらっしゃる前に他の掲載店舗に寄っていて、次々と店をはしごしているみたいなんですよ」

 

そんな街歩きの仕方が楽しめるのが、NAHA ART MAPの醍醐味だ。

 

掲載店舗の声からも分かるように、すでに那覇の散策になくてはならない存在となりつつあるこのマップは、「陶・よかりよ」(関連記事:うつわは人間と同じ、面白そうなヤツだけ連れて来る)を営む八谷(やたがい)明彦さんら数名が中心となって企画・製作を行なっている。

 


手のひらサイズのマップを広げると、掲載店舗の紹介が。

 

 

オレンジ色のルートで囲まれたマップの主要部分は、その他の区域と比べると明らかに道の様子が違う。道路が碁盤の目状に整えられていないのだ。

 

「この一帯は区画整理が進んでおらず、車が通れないスージぐゎー(すじ道)もたくさん残っています。その、ごちゃごちゃっとしたところが魅力的なんです。
観光客の方にも沖縄県民にも、ぜひ車を降りて歩いてもらいたい。そんな気持ちが発端となって作りました」

 

那覇アートマップ
伝統工芸品である琉球張り子を使った人形や雑貨が人気の「玩具ロードワークス」も掲載店舗の1つ。

 

那覇アートマップ
琉球張り子作家・豊永盛人さんが作る、茶目っ気たっぷりの張り子目当てに、全国各地からファンが訪れる。

 

那覇アートマップ

 

また、厳選された掲載店舗の面々もユニークだ。

 

「 ART MAP と銘打ってはいますが、あくまでもアートは軸。花屋、コーヒーショップ、雑貨店など、アートと結びつきづらい店も紹介しています。
芸術とひとくちに言っても、広い意味で捉えているんです。
例えば、作家もののうつわを厳選して使っている喫茶店や、アーティストを呼んで店内でイベントを行う花屋、店の空間づくりにこだわっている雑貨店など、そういう店が行っている活動もアートと呼んでいいと思っているんです」

 

4年前から毎年新バージョンが発行されているが、掲載店舗は毎年入念に検討する。
また、掲載を願い出たすべての店舗が掲載に至るわけではない。

 

「オーナーの『好きだからやってます!』という気持ちが溢れていることは必須条件ですね。掲載させていただくからには、店の運営が継続可能でないと困ってしまうわけですが、お店って本当に好きじゃないとお続けられませんから。
逆に商売っ気が濃厚すぎるお店は、このマップの趣旨からは少し外れているかなと思います。
ジャンルに関しては色々あっていいかなと。『アートだからこうじゃなきゃ!』っていうこだわりはありませんね」

 

那覇アートマップ
「お客様にお勧めの店を訊かれたら、『待ってました!』とばかりにこのマップをお渡しします(笑)。素敵なお店ばかりだし、地図としても見やすくて上等!」と、玩具ロードワークスのスタッフ・奥山さん。

 

那覇アートマップ
玩具ロードワークスがあるのも、やはりすじ道。

 

マップ製作のきっかけとなったのは、「GARB DOMINGO(ガーブドミンゴ)」オーナー・藤田俊次さんとの会話だったと言う。(関連記事:GARB DOMINGO 今まで無かった上質の沖縄土産が見つかる店

 

「僕らは二人とも本土出身者という共通点があるのですが、ある日酒を飲みながら、『那覇の街を楽しく歩ける地図ってないかなー』という話になったんです。一般的な地図だと、国際通りの情報はビシーっと載っているけれど、『ここがお勧めだよ!』という作り手の意向がわかりづらい。観光客も県民も、那覇の街を楽しく歩ける地図があればいいのになーと。そこで『じゃあ、自分たちで作っちゃうか!』と盛り上がったんです。
僕ら2人は、昔からあまり変わっていないこの辺りの街並みがとにかく好きなんですよ」

 

那覇アートマップ

 

那覇アートマップ
ハンドメイドの革製品が人気の『 anshare project (アンシェアプロジェクト)』のオーナー・上原さん。「殆どの方がマップを片手に入店されます」

 

那覇アートマップ

 

那覇アートマップ

 

戦後、那覇市内はその全域を米軍に接収されていたが、復興に必要な資材を作るために真っ先に接収を解かれたのが壺屋だった。やがて壺屋を中心に人々が集まってくるようになり、牧志公設市場が開設された。壺屋のやちむん通りと開南を結ぶ商店街「新栄通り」の名は、戦後復興を目指して付けられたのだ。

 

「この辺りは昔からある道を整備したり、すじ道を塞いだりする前に街が栄え、新たな家が建った。そうやって大規模な再開発が行われぬまま、今に至っているんですよ。
戦前の通りがほぼそのまま残っている地域は、特に那覇ではあまり見ることができません。
僕も藤田くんも店を営んでいますから、買物を楽しんでほしいという気持ちもあります。でも一番の願いは、マップを活用してまち歩きを満喫してもらうことなんですよ。車では通れない道沿いにある古民家、石造りで趣きのある階段、路地裏にある蛍の出没スポット…。そういう小さなわくわくが、この一帯には溢れていますからね」

 

県外出身者だけで作ると、観光客目線に偏ってしまうのではないかと危惧した2人は、那覇出身者である「琉球ぴらす」のオーナー・翁長優子さんにも参加協力を呼びかけ、地元眼線でのコアな情報収集にもチカラを注いだ。
そうして2010年に那覇アートマップの製作が開始された。
毎年1冊、2013年時点で計4冊を生み出しているが、発行の度に様々な改変を加えている。

 

 

那覇アートマップ

 

那覇アートマップ
シルバーやサンゴ、天然石を使ったハンドメイドのアクセサリーショップ「churaumi -ukishima accessory lab.-」

 

那覇アートマップ

 

那覇アートマップ
「掲載してもらってから色々な方に来てもらえるようになりました。那覇を歩く人の流れが、マップがきっかけに変わっているように感じますね」

 

「最初は白地図のようなものを目指していたんです。
というのも、僕らが作ったものが完成形ではなく、手にした人が自分で発見したスポットを書き込める地図にしたくて。
なので、1冊目は本当にあっさりとしたデザインでした。

 

でも、散策を楽しむ地図にするには、目印となる信号やスポットなどは書き入れたほうが良いと気づきました。なんせ区画整理されていない地域ですから、角を一つ曲がり間違うだけで道に迷いかねない。
しかも信号って、毎年必ず増えたり減ったりしているんですよ。ですから、普段から自転車で通勤して街並みの変化に気を配ったり、参加店舗の方々にお願いして変更箇所がないかチェックしてもらうなど、細かいところも見逃さないよう努力しています」

 


木のマークは「立派な木(ガジュマルなど)」。コップマークは「歩くのに疲れたら休めるカフェ」。

 


雨の日でも歩きやすいアーケイドはピンク色に。

 

他にも、街歩きを楽しんでもらうための様々な工夫が地図上にちりばめられている。

 

「最初は参加店舗だけを記していましたが、散策中に喉が乾いたときに休めるよう、カフェ等の飲食店をマークで記しています。
また、沖縄の強い日差しを避けて歩けるように、木陰の道やアーケードがある場所も分かりやすくしました。
すじ道には思わぬ変化がつきものなので、ベビーカーを押して歩く人や車いすの方が困らないよう、階段がある場所も明記しています。
駐車場マークを記したのは、『車を停めて歩きませんか?』という僕らからのメッセージです」

 

使いやすくておもしろい。八谷さんらが作った地図の評判は徐々にが広がり、今では国際通りの裏手を歩く人の多くが、その地図を手にしている。

 

そして地図が生み出す効果は、参加店舗のオーナーたちも強く実感している。

 

 


「白いブーゲンビリア必見!」「鳳凰木の並木道」「立派な亀甲墓群」など、一般的な地図には特筆されない情報も。

 

「この地図が、那覇を歩く人々の流れを変えたと言えるんじゃないでしょうか」

 

浮島通りのアクセサリーショップ「churaumi -ukishima accessory lab.-」の小池夫妻は語る。

 

「当店は浮島通りの中でも市場に近い場所にあり、市場帰りの年配の方がふらりと訪れることはありました。
マップに掲載されてからは、若いお客様がマップを見て『近いから』と、当店を出たあとに市場にも立ち寄られるようになったんです。
そうやってマップをきっかけに、様々な年齢層の方が市場と裏通りを行き来する動きが出てきたように感じます」

 

那覇アートマップ

 

たたむと手のひらサイズになるこのマップの持つ力は、そのサイズに反してとても大きい。

 

「古くからあるものって、無駄にも思えるけれどすごく面白いし、土地の持っている力も感じさせてくれるんです。
そういうものをこれからも大切にしていくべきだと思うんですよね。
このマップが、街の素晴らしさや面白さに気づくきっかけになったら、僕らとしては大変嬉しいですね。
でも、マップにはまだまだ満足していない部分があるんですよ。目指しているところはもっと高いところにあります」

 

毎年進化を続けているが、これからもパワーアップし続けるようだ。

 

 

沖縄に住んでいる私にも、このマップは沢山の新鮮な驚きをくれる。
踏み入れたことのなかった路地へと、背中を押してくれることもある。

 

さぁ、車を降りて。
NAHA ART MAP 片手に那覇の街歩きを楽しもう。

 

写真・文 中井 雅代

 

NAHA ART MAP(那覇アートマップ)
http://www.artokinawa.com