» 時代屋かなすけ今日のコーデはTシャツ?ワンピ?あ、着物にしよう。着物生活の素晴らしさを伝えたい


 
「お化粧にお金をかけてる?
スキンケアにも?
女性はみな、もっときれいになりたいと思うわよね。
でも、色々やったところで誰かが気がついてくれた?褒めてくれた?」
 
その問いに、着付けの生徒さんは

「誰も・・・」

と答える。

「そういうものなのよ。
でもね、着物着てごらん、
誰だって気付いて褒めてくれるわよ! 
お化粧がヘタでも、着物を着ればみんなが『素敵素敵』と褒めてくれる。
これは着物が持っている力。
その力をもっと多くの人に知って欲しいんです。」
 

 
小梅柄は、大人の女性が自分のやりかたでまとうときっと断然可愛い!
奥の青地のものは、なんとタイの生地で作られた浴衣。
 
「アンティークの銘仙(めいせん:大正から昭和にかけて作られた着物生地。先染め・平織りの絹織物)にすごくよく似ているんですよ。」
 
どことなくエスニックな雰囲気と、カラフルな幾何学模様が格好良い。
  
「洋服地で作っている『かなすけオリジナル着物』も人気です。
一つの柄で一枚しか作らない事が多いので、
出すと結構すぐ売れちゃいます。」 
 

 
好みでない柄を見つけるのが難しいほど、
魅力的な着物ばかり!
 
「そりゃそうです。素敵なものしか仕入れませんから。」
 
とは、なんとも心強いお言葉。
 

 
店を開いて6年経つ。
 
昔から着物に興味があり、大好きだったが、
子育てに追われてて滅多に着れなかった。
 
「娘が成人式を迎える時になって、
私が着付けてあげたいなと。
丁度40歳を過ぎた頃でしたね。」
 
着付けを習い始めてすぐ、
着物の魅力にどっぷりハマった。
 
「ほかの子もみんな可愛く着せてあげたいと思うようになって。
お母さんの感覚で。
私たちが小さい頃はおばあちゃんが着せてくれたりしていたけど、
今は家族に着付けができる人がいる家庭も少ないから。」
 
子達も成長し、自分で70歳まで働く事を考えた時、
大好きなアンティーク着物屋をやろうと一念発起。
50歳手前で長年の勤めを退職し、この店をオープンさせた。
 

 

 
店内には着物だけでなく、
時を経てなお魅力的な雑貨も多く並べられている。
 
昔から、和洋問わずアンティークが好きだったが
コレクターとまではいかなかった。
 
「子どもを育てるにはそれなりにお金がかかりますから。
アンティークの蒐集って、趣味だと贅沢と思われるかもしれませんが、
店で商品として集めるなら誰も文句言わないでしょう?
家族も私の気持ちを理解してくれて、
『しょうがないね』『覚悟してやりなさい』って(笑)」
 
取り扱っている着物も、その多くはアンティーク。

「現代の着物も好きだけど、
いわゆる大正ロマンと呼ばれる時代の着物が勢いがあって一番好き。
そういう着物を置くとなると、
モダンな感じよりもやっぱり古い時代が背景にあるような空間が似合うでしょう?」
 
店のドアを開けると目の前に広がるのは、
古き良き昭和初期の時代を思わせる、レトロな空間だ。
 
「沖縄の南国的でトロピカルな雰囲気に本土の方が惹かれるのと同じ。
歴史的な事もあって、沖縄は日本でありながらずっと純日本っぽくはないから、
純粋な和のものに私は憧れるんです。」
 

 
みんなから「かなすけさん」と呼ばれている店主は、
一年を通じてほぼ毎日着物で過ごす、「着物生活」をおくっている。
 
「店を始めるときに、
『今日は着物着るのしんどいわ、洋服にしよう』
という日も時々あるんだろうなと思っていたんですが、
6年間1度もないんですよ。
庭仕事をしたりキャンプに行ったりするときは洋服だけど、
それ以外なら焼き肉も映画もヤンバルも、どこでも着物で行きます。」
 
それだけ着物姿が定着していると、
逆に洋服を着ていたらみんなびっくりするのでは?
 
「洋服姿だと、着付けの生徒さんに外で会っても気付いてもらえないんですよ(笑)」
 

 
祝い事を盛大に行う習慣のある沖縄には、
高価な着物を一張羅として持っている人も多いという。
 
「でも、箪笥の肥やし、しまいこんでいる人が多くて、
普段から着ているひとはそうそういない。
だから、毎日着物を着ている私は
ちょっと変なおばさんだと思われてるみたいで(笑)
子ども達って素直だから、
『おばさん、なんで毎日着物着てる~?』
って言うんですよ(笑)
『これは衣装じゃなくて衣服だから、毎日着ても良いんだよ~』
って答えてます。
でも、スーパーまで走ってお買い物に行ってたら
『おばさん、着物で走ったらだめよ~』
と言われたり、
小雨時に傘をささずにいたら『え~濡れてるよ、大変大変!』
と傘を貸してくれたり
 
着物って特別視されてるんですよね。
華やかな場所に着ていくという認識が強い。
高級呉服だけが生き残って、
木綿の着物、洗える着物を薦めたり作ってくれたりする所がそんなにない。
 
高度な技術を駆使してつくられた上質な着物が高価なのは、
それはそれで良いと思うんです。
でも、着物はローン組んで買うのが普通、という風潮になっているのが寂しい。
だって、普段洋服を着ているみなさんだって、
いつも高級なドレスを着ているわけじゃないですよね。
ジーンズ履いたり、コットンのTシャツ着てカジュアルを楽しんでますでしょう?
着物も同じ。そういうカジュアルランクの着物があるんですよ。」
 
古着の着物、洗える木綿製の着物、洗える帯もある。
汚すことや汗をかくことを心配しながら、びくびくして着る必要がなく、
洋服を着るのとなんら変わらない気軽な気持ちで楽しめる着物があるのだ。
 

 
「着物だけでなく、夏は浴衣を楽しむのも良いですね。
最近はカラフルなデザインのものが沢山あって、
着物と浴衣の境目がなくなってるので、
お祭りに着ていく浴衣じゃなく、街着の浴衣として着ることもできます。」
 
見た目の華やかさ、「きちんと感」だけでなく、
機能的にも着物生活は心地よいという。 

「夏はどこに行ってもクーラーがガンガン効いているので、
着物は便利です。
昔から祖母が、
『女性はお腹を冷やしちゃだめ』
といつも言っていました。
クーラーが無い時代でもそうなのですから、今はなおさら。
着物や帯でお腹を保護したほうが、からだにも良いんです。」
 
取材で伺った日は天気が良く、気温も高かった。
私はノースリーブを着ていたが、
いつものように上から羽織るカーディガンを持ち歩いていることに気が付いた。
本土以上にクーラーの設定温度が低い沖縄。
夏になると、冬以上に冷えに敏感になる女性も少なくないだろう。
 
「着物は、袖が開いていて風を通すので、意外と涼しいし、
寒い時には腕を縮めて袖の中に入れれば良い。
カーディガンを持ち歩かなくても、うまく体温調節ができます。
裾も、長さはありますが風はよく通りますので、蒸れることもありません。」
 
かといって、意地をはって着物生活を押し通しているわけではないと、
かなすけさんは微笑む。
 
「庭仕事をするときはジーパンを履いたりもしますよ。」 
 

 
京都、神戸、大阪、東京と、
本土の様々な場所で買いつけているという着物は、
どれも唯一無二の魅力があり、柄を見ているだけでワクワクする。
 
「買い付けるときは、着付けの生徒さん達の顔を一人一人思い浮かべて、
その人に似合うものを探すようにしています。
その人の為に購入する、というわけではなく、
そうやって選ぶとバラエティに富んだ着物が揃うから。
自分では着ないような柄でも、彼女に似合いそうだな、という感じで。」
 
着付けを習い始めたきっかけは娘さんのため、
今は生徒さんやお客さんのことを想像しながら着物を選ぶかなすけさん。
 
「自分だけ着て満足だったら、お店は開かなかったでしょうね。
他の子が着て可愛くなるのがすごく嬉しいんです。
お洋服を着ているときのイメージとはまた違った、新しい魅力が出てきます。
洋服だと選ばない色が、着物だと似合ったり。
鏡を見て
『あら、違う自分がいる』
と、驚いたり喜んでもらえると、私もすごく嬉しいんです。」
 


 
私たちが着物から遠ざかっている理由は何だろう?
高価で汚しちゃいけないものだから、という懸念は
安価で洗える着物でクリアーできることがわかったが、
自分じゃ着られない、難しそう、という
技術面はどうしたらいいだろう?
 
「例えば、大正末期、昭和初期あたりになると
西洋から洋服がどんどん入って来て、
洋服を着る人も増えてきました。
その中で、結構めちゃくちゃでぐだぐだな着方で
着物を着て生活している人たちの写真も残っています。
それぐらい崩して着るのだってアリ。
穴の開いたジーパン履くのと一緒でしょう?
みなさんが思っているほど難しくないんですよ。
意外と自分で着られるものなんです。」
 
取材を通じて着物生活を謳歌している女性数名に会う機会を得た。
彼女達の
「15分もあれば着られます。」
「結構安いんですよ、洋服買うより安く済むことが多い。」
「どこにいくにも着物ですね。ラクなんです。」
というような台詞に目を丸くしつつ、
心の底から羨ましく思った。
 
このまま、着物を着ない生活を死ぬまで続けたとしても
きっと、なんら不便は感じないだろう。
でも、彼女達の凛とした背中や、たおやかな所作を目にし、
そして何より、楽しくてたまらない!というような口ぶりを聞くと
 
「私もやってみたい・・・着物の魅力を体感してみたい・・・」

と、純粋な好奇心が頭をもたげる。

「着物が好き、というのがベースだけど、
これは民族衣装でもあるわけですから。
それなのに、学校では着付けすら教えません。
インド人はサリーを着られるのに、
日本人が着物を着られないというのは、なんか違うなと。
 
日本人なら、初詣用の着物と浴衣くらいは持っていてほしいです。

年にたった二回着るだけでも、
着物を着るという所作によって、
今までの自分とは違う、新たな自分がきっと見つかりますから。」 
 

写真・文 中井 雅代


時代屋かなすけ
宜野湾市大山6-5-5 MAP
098-899-1550
open:12:00ー20:00
close:月・火(公休日は営業)
 
ブログ:http://jidaiyakanasuke.ti-da.net 
 
*着付け教室だけでなく、和裁塾、英語塾など
大人の寺子屋「かなすけ塾」も開いています。

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