珈琲屋台 ひばり屋/那覇市中心街にある秘密の花園。青空の下でほっと息をつく


手渡された瞬間、きめ細やかなクレマ(コーヒーに浮かぶ泡)にまず驚く。
口に含むとすーっと素直にのどを通っていくが、飲み込む寸前に奥からふわ〜っとコクと香りが立ち上って来る。
一口、そしてまた一口と、探るように味わうのが楽しいコーヒー。

 

「飲み始めは温度が高めなのでわかりづらいのですが、温度が落ち着いて来ると花のような香りがします。5種類ほどの豆をブレンドしています。香りの変化もどうぞゆっくりお楽しみ下さい。」

 

ひばり屋では、ぽとぽとと落としていくドリップ式ではなく、圧力をかけるエスプレッソ式でコーヒーを淹れる。

 

「圧力をかけることで強制的かつ短時間でうまみを押し出す淹れ方です。独特のとろみやクレマが出るのも特徴ですね。ドリップで淹れるとクリアでマイルドなコーヒーになり、エスプレッソだとドリップではろ過されるさまざまなエキスや『あく』も一緒に抽出されます。『あく』というと邪魔者みたいですが、それも個性の一つだと私は思っています。」

 

 

ここはにぎやかな国際通りの裏手。雑踏やざわめきはどこへやら、まるで秘密の花園のように隠れた憩いの場所だ。

 

「『疲れたよ〜』と、仕事の合間に休憩にいらっしゃる会社員のお客様も多いです。あ、高校生の常連さんもいますよ。」

 

屋台をするために、千葉から沖縄へ移住した辻さん。沖縄を選んだ理由は?

 

「沖縄の最大の魅力は風だと私は思うんです。その風を感じながら飲んだり食べたりできるお店をしたくて。」

 


「ひばりは朝を告げる鳥。夜ではなく、光のある時間に屋台をしたかった。」屋号にちなんで、店内いたるところに鳥の姿が。

 



木々に囲まれ手製の椅子があちこちに置かれる店内は、まるでおとなの秘密基地。

 

「本当は他の場所を交渉していたのですが、大家さんが『こちらにもうちの土地があるんだよ』と、ついでに話をしてくれた場所がここ。まさに一目惚れ、『ここだー!』って。即決しました」

 

お店を始める前の状態の写真が今手元にあって・・・とおっしゃるので見せて頂くと、

現状からは想像がつかないほどがらーんとした、本当に何もない空き地状態!オープンに際して大工仕事を手伝ってくれたお友達や、できあがったばかりの椅子の姿も。「ここはみんなで作り上げたお店なんです。」

 


ブラウニーにはアマレットリキュールで香り付けしたクリームチーズを合わせて。ピーカンナッツ、ドライクランベリー、チョコチップのにぎやかなトッピングも嬉しい。どっしり重みのあるブラウニーは、中身がぎゅっと詰まって歯応えはしっとり。大きめサイズにも関わらず、気付けばぺろり完食。

 


30歳まではコーヒーが苦手だったという辻さんが、コーヒーを飲めるようになったきっかけがこの赤いマシーン。「このマシーンで淹れたコーヒーが驚くほど美味しくて。今はもう生産されていないので、定期的にメンテナンスして大切に使っています。」替えのきかない大事な相棒だ。

 


狭いスージ(筋道)をくぐり抜けるように進んだ先が、辻さんが「秘密の花園」と名付けたひばり屋のありか。「本当にこの道であってるかしら?」とドキドキ、はやる心をおさえながら思わず駆け足に。入り口を目にすると同時に、普段の生活とは切り離された夢のような空間が目の前に広がり、息をのむと同時に心が踊る。秘密の花園を見つけた時のメアリーのように。

 

辻さんが見つけた秘密の花園に、今では多くの人が美味しいコーヒーと癒しを求めてやってきては、元気をチャージして街のざわめきへと戻って行く。

 

写真・文 中井 雅代

 

珈琲屋台 ひばり屋
那覇市牧志1-2-12(理容たかまつ裏)
090-8355-7883
open:11:30〜19:00
close:不定休
*雨の日は屋台営業は行っていません。
不安定なお天気の場合は電話にてお問い合わせ下さい