![satatenpura1](http://calend-okinawa.com/wp/wp-content/uploads/2011/06/satatenpura1.jpg)
「おばあちゃんのサーターてんぷらはみんな大好き。
親戚や友達がみんな送って〜って言うもんだから、
北海道や、アメリカにも。」
と、娘さん。
「そうよ、どこまででも行くよ、これ。」
と、誇らしげな清子さん。
宜野湾で沖縄料理の食堂「ちゃんぷる亭」を営む清子さんの
サーターてんぷら(=サーターアンダーギー)の美味しさは評判で、
小学校の父兄から作り方を教えて欲しいと頼まれ、
学校で教えた事も何度もあるという。
「おばあちゃんのが一番美味しい、
私の息子も大好き。」
と、ちゃんぷる亭を手伝うお孫さん。
![satatenpura31](http://calend-okinawa.com/wp/wp-content/uploads/2011/06/satatenpura31.jpg)
「あんたも今日、覚えてから帰りなさい。
まず、卵ね。
メリケン粉1kgに対して卵は10個。
数が決まっているわけさ。
そしてバニラエッセンスを入れる。
隠し味よ~。
メリケン粉は、ふるいにかけながら入れると良いよ。」
![satatenpura3](http://calend-okinawa.com/wp/wp-content/uploads/2011/06/satatenpura3-450x237.jpg)
「混ぜるのは泡立て器を使って、ちゃんと手で混ぜるんだよ。
ほら、今は混ぜる機械があるさ?
なんていったかね。
ミキサー?そうそう。
あれを使って混ぜたらダメよ。
この混ぜ方が、美味しく作るための一番大事なコツかもしれないね。
ミキサーで混ぜたら、フーなる。
固くなるわけ。もう切れないくらいによ。
して、砂糖を入れる、580g ね。
この間、誰かが580gは多いと言って少なくしてから作っていたけど、
美味しくなかったよ。
580gといっても決して多くはないから、
ちゃんと分量を守っていれた方がいいよ。
メリケン粉も、安いの使って作ったら味が全然違う、おいしくない。
だから、安売りしてるときに上等を沢山買っておくわけ。」
![satatenpura4](http://calend-okinawa.com/wp/wp-content/uploads/2011/06/satatenpura4-450x207.jpg)
「塩は本当に少々。小さじ4分の1くらいね、隠し味だから。
そして、ホットケーキミックスを大さじ3杯。
ベーキングパウダーを小さじ1杯。
そこに、溶かしたバターも。
一本の半分だから100gくらいかね。
バターは入れない人が多いかもしれないけど、
バター入れたら、てんぷらが油飲まないわけ。
油には油を、ということ。
よく油っぽいさーたーてんぷらがあるでしょう?
生地にまで油入れたら、余計油っぽくなるんじゃない?と思うけど、
ならないね。
そして、バターが入る分、メリケン粉も大さじ3杯余計に入れるのを
忘れないようにね。」
木べらで生地を混ぜる。
「この時、切るようにさっくり混ぜるんだよ。
じゃないと、ぎゅっと詰まった固いさーたーてんぷらになるからね。」
![satatenpura6](http://calend-okinawa.com/wp/wp-content/uploads/2011/06/satatenpura6.jpg)
油を熱する。
火はごく弱火。
ミシゲー(しゃもじ)を使って一個分を手に取り、
くるくるっと丸めて手早く油の中に入れる。
作り慣れているのがわかる、滑らかな一連の動作。
「この業務用のコンロは難しいわけ、火が強いから。
家庭用のコンロが良いよ。
弱火でじっくり揚げるんだよ。」
![satatenpura5](http://calend-okinawa.com/wp/wp-content/uploads/2011/06/satatenpura5.jpg)
「さーたーてんぷらは、わじわじーしてたら作れないよ。
なんでかって?
時間かかるからさ。
弱火でゆっくり揚げないといけないのに、
なかなか揚がらんからとわじわじーして火を強くしたらすぐ焦がしてしまうよ。」
![satatenpura7](http://calend-okinawa.com/wp/wp-content/uploads/2011/06/satatenpura7.jpg)
「あい、一個焦がしているさ。
家のコンロだったら焦がさないけどね。
できるだけ触らないように、放っておくのも大事よ。
あんまり触ると、てんぷらの花が咲かない。
ぱかっと割れない、ただの丸いてんぷらになってしまう。」
![satatenpura8](http://calend-okinawa.com/wp/wp-content/uploads/2011/06/satatenpura8.jpg)
「ほら、割れてきたでしょ。
ミキサーで混ぜたらこんなふうに割れないからね。」
香ばしい、甘い香りが漂い始める。
「良い匂いでしょ。
これ、バニラエッセンスの匂いだはずよ。」
![satatenpura9](http://calend-okinawa.com/wp/wp-content/uploads/2011/06/satatenpura9.jpg)
次第にきつね色に。
「割れたところにもこんがり色がついたら、出来上がり。」
![satatenpura10](http://calend-okinawa.com/wp/wp-content/uploads/2011/06/satatenpura10.jpg)
「孫がハンドボールしてたから、大会の時とか、
エイサーの練習とかにもよく作って持って行きよったよ。
そういう時は食べやすいように最初は小さく作るんだけど、
途中から難儀なって、マギー(=大きく)なってくるわけさ(笑)
今日の材料の分量だと、
普通の大きさで大体43個作れるよ。」
![satatenpura11](http://calend-okinawa.com/wp/wp-content/uploads/2011/06/satatenpura11.jpg)
「はい、出来上がり。あちこーこー食べなさい。」
![satatenpura12](http://calend-okinawa.com/wp/wp-content/uploads/2011/06/satatenpura12.jpg)
適度に空気を含んだ生地で、ふんわり膨らんだサーターアンダーギー。
手で割ると、バニラエッセンスとバターの香りが鼻腔をくすぐる。
「いただきま〜す!」
一口食べると、そのやわらかさにまず驚く。
こんなにしっとりふかふかなサーターアンダーギーは初めて!
そして、
味わいのなんと上品なこと!
サーターアンダーギーと言えば、沖縄家庭のおやつの代表格だけれど、
ここまで品のある味に仕上がるなんて。
小麦粉、砂糖、卵にバターと、
珍しい材料は一切使っていないのに、
不思議、なんで?
「さ〜、なんでかね?
学校なんかで教えても、
みんなうちに帰ってから作ってみたら
こんなに美味しくは作れなかったと言うわけさ。
火加減と混ぜ方さえ気をつけていれば
大丈夫だと思うけどね。
もう、おばあは味見もしないよ。
だって、美味しいとわかっているんだのに。」
「ちゃんぷる亭」の常連さんたちは、
清子さんのサーターアンダーギーの美味しさを知っている。
最近店を移転したのだが、移転記念にと作って配ったからだ。
「よく、
『さーたーてんぷらもメニューにのせて!』
と言われるけど、出していない。
注文が来た時だけ作る。
週2回くらいは注文が来るからね、
それだけ作っているさ。」
大人気の清子さんのサーターアンダーギーのレシピは、
家族がしっかり受け継いでくれそうだ。
「子どもや孫たちがいるからね、今、わが家では助手がいっぱいよ。
みんな作り方も覚えている。
幼稚園生のひ孫も、私が何か忘れてたら
『おばあちゃん、塩いれた~?』
と、教えてくれるよ。」
揚げ物お菓子ということで、
手づくりハードルの高そうなサーターアンダーギーも、
清子さんの手にかかると、いとも簡単に作れるように見える。
「子どもには、自分で作って食べさせるのが一番良いよ。
みんな嬉しいでしょう、お母さんが作ってくれたら。」
はい。
わじわじーせず、
よーんなよーんな揚げてみます。
写真・文 中井 雅代