感じる園舎『はなぞのこどもえん』子どもたちへの一番大切な贈りもの

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ここは自然豊かな沖縄本島から約310kmの南の島、宮古島市。

 

沖縄県で初の新築の幼保連携型認定こども園『はなぞのこどもえん』がこの4月、ついに完成しました。

 

 

僕の仕事はもちろん、お庭をつくることでした。

 

 

まずは『はなぞのこどもえん』のお庭、園庭をどんなふうにするのか、園長の新城久恵先生とお話をさせていただきました。最初から先生のコンセプトはゆるぎないもので、見栄えのいい、かっこいい整ったものじゃなくていい、子どもたちが感じる庭をつくってほしい。

 

先生の子どもたちへの思いはまさに海洋生物学者・作家レイチェル・カーソンの著書「The Sense of Wonder」でした。

 

子どもたちへの一番大切な贈りもの

 

美しいもの、未知なもの、神秘的なものに目を見はる感性「センス・オブ・ワンダー」を育むために、子供と一緒に自然を探検し、発見の喜びに胸をときめかせる

 

 

美しいものを美しいと感じる感覚、新しいものや未知なものにふれたときの感激、思いやり、憐れみ、賛嘆や愛情などのさまざまな形の感情がひとたびよびさまされると、次はその対象となるものについてもっとよく知りたいと思うようになります。

 

レイチェル・カーソン著 上遠恵子訳 新潮社『センス・オブ・ワンダー』より抜粋

 

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ただ運動をするためだけの園庭ではなく、自然界だけが創り出すことができる形、色、香り、感触・・・木の実や食べられる花を見つけたり、やわらかくて、やさしい緑色の新芽を見つけたり、ハーブの香りに気づいたり、花や果樹に集まる虫や鳥、それらからいろんな発見をし、喜び、胸をときめかせてほしい。

 

新城先生にはじめて会った時から、僕たちは新城先生が大好きになりました。おおらかで、明るくて、前向きで、元気で、溢れる笑顔には人柄の良さがにじみ出ていました。

 

お話をいただいた日比野設計+幼児の城は 全国でも例を見ない、幼児施設に特化した建築設計事務所で、子どもの環境をつくるプロフェッショナル集団です。これまでに関わった園舎数は350にもなり、日本全国に及びます。

 

この日比野設計+幼児の城の日比野拓さんも担当者の真栄城嘉敦さんも園庭をとても重要だと考えていて、皆同じ方向を見ながら進んでいきました。
担当者の真栄城嘉敦さんは沖縄県出身。沖縄の気候や風土、地域の特性もよくわかっていて神奈川県と沖縄県を毎週行き来しながらいろんな調整をしていただきました。

 

こんなすばらしい人たちに囲まれ、宮古島での庭づくりがはじまりました。

 

しかし天候のこと、建築の進行状況、宮古島でも植物を手配していたので、その植物の保管状況、本島から搬送する植物、搬送の仕方、重機の手配、はじめて一緒に仕事をさせていただく業者さんたち、離島ということで心配なことは山のようにありましたが、できるところから、一年をかけて準備を行ってきました。

 

その間少しづつ納得できる樹木を集めてきました。植物たちは僕のヤードで、元気に花を咲かせ、実をつけかわいい姿を見せてくれました。

 

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そんなこんなでついに宮古島入りの日がやってきました。
予定よりも建築が遅れてくれたことが幸いし、ずっと続いていた雨が、宮古島入りと同時にピタリと止んでくれ、暑すぎない曇り空の日が続きました。工事の一週間の間に雨は夜間にちょこっと降っただけ。芝生を張り終えたころまた雨の恵み。ほんとに天候に恵まれた現場でした。

 

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LITTAI space worksのイラストレーターの仲地静香さんに図面をもとに園庭のイメージを描いてもらったもの。

 

 

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完成した園庭。
ガジュマルにフクギにザクロにスターフルーツ、アセロラ、カニステルなど30種類ほどの植物を植えました。

 

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竣工式を迎えたこの日。芝も青々と茂り、植物たちもすくすくと育っているのを確認し、ほっと一安心。子どもたちも園庭で遊びたそにうずうずしていましたが、残念ながら園庭はこの日までは養生期間、子どもたちが遊べるのは明日からです!来月行くころには 子どもたちが走り回っている姿を見ることができるかな。

 

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ダダダダダー!走るのが楽しい廊下!

 

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ダイニングルーム

 

どこからでも料理を一生懸命つくってくれているおじさん、おばさんが、子どもたちからよく見える調理室になるように設計されています。2階にいたってのぞけばこの調理室の様子がちゃんと見えます。「そろそろごはんのじかんかな。今日のおかずはなんだろう。なんだかおなかがへってきた。」こどもたちはつくるところが見えるこのダイニングルームになってからごはんをたべる量が15%も増えたそうです!すごい。

 

配膳カウンターは内側が一段低くなっていて、配膳する先生の目の高さと子どもの目線が同じようになるよう工夫されていました。

 

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ダイニングテーブルは那覇市のロボッツの國吉さん製作のもの

 

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開放的なダイニングルームにはデッキテラスがあり屋外とゆるやかにつながっていて、心地よい風が抜けていきます。テラスの前に植えたオリーブの樹には小さな実がたくさんなっていました。

 

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自然光や風がふんだんに入る清潔感があるトイレ。
カラフルでワクワク、子どもたちもトイレに行くのが楽しそう!

 

 

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こじんまりと落ち着ける図書ルーム。
小さな窓からはお友達のようすが見られます。

 

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ロフトがあるアナグラ!? 基地!? のようなお部屋。床にはめ込まれたガラスの窓を覗いてみると1階のお友達が手をふっています。

 

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子どもサイズのカウンターも、中にはこども用のキッチン(おもちゃ)がありました!

 

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宮古島の強い風から守られるように配置された中庭は大きな庇が強い日差しを遮ぎり、少々の雨でもへっちゃら。

 

園庭、アトリエ、スタジオ、中庭、ダイニングと繋がることができ、最大長で80mの大空間が生まれ、思いっきりかけまわる子どもたちの姿がありました。

 

静かに過ごせる場所、思いきり走りまわれる大空間、本をゆっくり読める部屋、基地のような小部屋。裸足でかけ回れる芝生、食べれる果樹がなる樹々、花に集まってくる虫や鳥たち。おいしそうな料理ができあがっていく厨房、先生たちの様子が外からよく見えるガラスの壁の園長室。強い日差しを適度に遮り風が抜ける花ブロック。スコールが少々降っても外で遊べる大きな庇、開放的で心地よい風が抜け子どもたちのいきいきとした笑顔あふれる『はなぞのこどもえん』。

 

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トン!カチ!カチ!トン!“やすりがけワークショップ”

 

浜松より建築家、403architecture [ dajiba]のみなさんが講師として招かれアトリエとスタジオを使ったイベントを開催されました。旧園舎で使われていた捨てる予定だった子ども椅子を使って遊具を創る試みです。こどもたちや大人も参加して、物の大切さや、古い物から新しい物を生み出す楽しさなどを学び、感じてもらうというワークショップです。

 

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たのしいワークショップのつづきはまた週末ということで、第一回目はここまでです。403architecture [dajiba]のお兄ちゃんお姉ちゃんが今度はどんな魔法をかけてくれるのかな楽しみです!
こんなワークショップは子どもの創造性を育むことを大切にした創作活動で、これから継続して続けられる予定です。南の島の「はなぞのこどもえん」からさまざまなシーンが全国へ、世界へと発信されていきます!

 

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ダイニングルーム、中庭、アトリエのむこうには園庭が見渡せます。広々した空間。

 

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ちょうど園庭のアプローチに沿って植えたミッキーマウスツリーの花が咲いていました。黒い目が2つにかわいいお鼻、こっちを見てにっこりしているように見えませんか?

 

 

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園長の新城先生、日比野設計の真栄城さんと

 

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「はなぞのこどもえん」の園舎のロゴマークや先生や園児が着ているTシャツ、クラスのサイン、ファブリックパネルなど、園長の新城先生の息子である、大学でデザインを学んでいた新城大地郎さんのデザインが採用されています。ロゴはファザードや外周の壁で使われている花ブロックからイメージして沖縄らしさを表現していて、島の豊かな自然をやさしく中へ取り込み外へ誘うというデザインコンゼプトです。

 

 

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LITTAI metal worksの仲地研二さん製作の門扉&サイン

 

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日比野設計+幼児の城の日比野拓さん、真栄城嘉敦さん、403architectureの皆さんと小さな子どもたちのダイニングテーブルと椅子をお借りして、僕たちも自然の風を感じながらおいしい食事をみんなでいただきました。
この後、日比野拓さんはオランダの保育所のデザインの仕事のため、オランダへ飛び立ちました。

 

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園長、新城先生ご夫妻、根間先生、日比野設計の日比野さん、真栄城さん403architectureの皆さんと一緒に記念撮影。

 

みなさんありがとうございました!

 

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年月を重ねるうちに、木々は大地に根付き枝葉をのばし、木陰をつくり、心地よい風を園舎に運ぶでしょう。花を咲かせ実をつけ鳥たちをよび、きっと子どもたちに神秘さや不思議さに目を見はる感性を授けてくれるでしょう。
子どもたちをいつまでもこの場所で見守りながら。

 

 

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文・写真 葉棚達也・由真

 

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園舎設計日比野設計+youji no shiro
http://hibinosekkei.com/

 

 

403architecture [dajiba]
http://www.403architecture.com/